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異世界ゆうしゃA ~亡国の残響~  作者: 小城乃ひかり
第四章 戦士の国

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開戦 (2)

異世界ゆうしゃA ~亡国の残響~ 第四章

前線が崩れた。

ヴァルガン軍が後退し始めた。

維持しようとした指揮官がいた。でも砲撃が続く中では無理だった。


レグルスの魔導兵が結界を張ろうとした。

一枚張った。

砲撃が来た。

結界は割れた。


「何だあれは」ライディスが言った。声が静かだった。感情がなかった。でも目が変わっていた。

「アルテフェインクラスの術師が百人以上同時に撃っている」

「止められるか」エルクが言った。

「難しい」ライディスが言った。珍しかった。ライディスが難しいと言った。


ユウが孤立していた。

砲撃で分断された場所にいた。味方と切り離されていた。周囲に魔族の歩兵が来ていた。

「こっちだ」と誰かが叫んだ。ユウが走った。


走りながら魔族の間を抜けた。体が小さかった。隙間を抜けられた。追いつかれなかった。

でも一体が爪を出した。


「ユウ左」エルクが叫んだ。

ユウが左へ跳んだ。爪が空を切った。

「走り続けろ。右前方に抜け道がある」

ユウが走った。

攻撃を抜けた。

「よかった…」ユウは息を切らした。


ケンが負傷兵を引いていた。砲撃の隙間を縫って走っていた。

一人引いて、また戻って、また一人引いた。


前線が完全に崩れた。


そこへ、ルシラが動いた。


今まで円盤の上から砲撃を指揮していた。でも降りてきた。

地面に立った。

杖を持った。

「せっかく来たんだから。少し近くで見たいわ」ルシラが言った。

一人で前に出た。


魔術兵たちは後方に残っていた。

ルシラだけが前に来た。

リアが前に出た。

「来るな」


ルシラが指を鳴らした。

地面から光の鎖が伸びた。リアの脚に絡みついた。リアが止まった。

引いた。切ろうとした。大剣を入れた。鎖は切れなかった。

「その剣で切れる鎖ではないわ」ルシラが言った。


杖を向けた。

氷の槍が来た。

三本同時だった。


リアが大剣で一本弾いた。もう一本が肩を掠めた。

三本目が腹部に来た。鎧が砕けた。リアが後退した。

「リア!」エルクが叫んだ。

「まだ大丈夫だ」リアが言った。でも膝がわずかに揺れていた。


レイオンが横から来た。剣を振った。

ルシラが振り返りもせずに結界を展開した。剣が止まった。

「ちゃんと見ているわよ」ルシラが言った。


レイオンが押した。結界が揺れた。割れなかった。

「押しても無駄よぉ」


ルシラが左手を動かした。

重力魔法だった。


レイオンが地面に押さえつけられた。

「っ」レイオンが唸った。剣を地面につきながら立とうとした。立てなかった。片膝がついた。


「レイオン」ライディスが動いた。

風魔法を放った。

ルシラへ向けた。

ルシラが振り返った。風の刃が来た。杖で受けた。弾いた。


「レグルスも来るのね。忙しいわねぇ」ルシラが言った。

ライディスが追撃した。風の連続攻撃だった。


ルシラが一歩後退した。一歩だけだった。


杖を横に振った。


ライディスの魔導兵三人が横に吹き飛んだ。一発で三人だった。

「強い」ライディスが言った。声が低かった。感情ではなかった。事実の確認だった。


エルクが《残響》を使った。

ルシラの動きを読もうとした。

読めなかった。


流れ込んでくる情報がなかった。

ルシラと戦った者の記録がなかった。

記録が残っていない。

「まずい」エルクが呟いた。

「わかっているわよ」ルシラが言った。こちらを見ていた。


「残響は過去の記録が必要なんでしょう。記録なら全て封じたわ。もう使えない」

エルクが止まった。

「あなたの力は理解したわ」ルシラが言った。


杖を向けた。

エルクへ向けた。

精神魔法の気配があった。


「エルク!」リアが叫んだ。

リアが鎖を無理やり引いた。鎧の一部が剥がれた。でも動いた。

ルシラとエルクの間に入った。

大剣を構えた。


「私が相手をする」リアが言った。

「その傷で?」ルシラが言った。

「関係ない」リアが言った。


ルシラが笑った。杖を降った。

炎の竜巻が起こった。リアは大剣を振った。防げなかった。

防ぎきれなかった。リアは崩れ落ちた。


ルシラは笑いながら上空へ舞い上がった。



ヴァルガン軍が後退した。


レグルス軍も後退した。


ゼルガドが笑った。

「これが戦争だ」

戦場全体に届く声だった。

「力でも策でも届かない。これが戦争だ」


その時。

一人が動いた。


後退していなかった。

前進していた。


ガルゴン王だった。

砲撃が続く戦場を、前に進んでいた。


ゼルガドへ向かっていた。

振り返らなかった。

「余が道を開く」

ガルゴン王が言った。


砲撃が来た。戦斧で弾いた。

また来た。体でぶつかった。鎧が焦げた。それでも止まらなかった。

ゼルガドへ向かっていた。


「馬鹿なの?」

ルシラが言った。浮遊円盤の上から見ていた。


「馬鹿ではない」ガルゴン王が言った。振り返らずに言った。

「王だからだ」

ルシラが少し止まった。

「王だから?」

「民が怯えている。なら王が前に立つ。それだけだ」

ルシラが少し笑った。「そう」


ゼルガドが前に来た。

「逃げぬのか、王」

「そうだ」ガルゴン王が戦斧を構えた。「最後まで余が相手をする」

「最後か」ゼルガドが言った。

「まだわからないぞ」


砲撃が止んだ。

ルシラが止めた。

「ゼルガド」ルシラが言った。

「こいつは任せるわよ」

「こっちはこっちでやる」ゼルガドが言った。


戦場が止まった。


二人が再び向き合った。

その背中を、兵士たちが見ていた。


後退していた者が足を止めた。

伏せていた者が顔を上げた。

誰かが言った。

「王がまだ前にいる」誰かが言った。

ケンが立ち上がった。

ジェイドが拳を握った。

ユウが前を向いた。

レイオンが剣を持ち直した。


「行くぞ」エルクが言った。

リアが頷いた。

全員が動いた。


ヴァルガン軍が止まった。

止まって、前を向いた。

また前へ出た。


レグルス軍も動いた。

ライディスが魔導兵へ命令した。

「展開しろ。今度こそ結界を張る」

「しかし先ほど破られました」

「張り続けろ」ライディスが言った。

「一枚破られたら二枚張れ。二枚破られたら三枚張れ」


ルシラが上空から戦場を見ていた。

浮遊円盤の上から、全体を見ていた。


第二軍の魔術師たちが動いていた。


人類軍が再集結していた。


ガルゴン王がゼルガドと戦っていた。


全部が見えていた。

でも、本当に見ていたのは一点だった。

エルクだった。


戦場全体に指示を出しながら走っていた。《残響》を使いながら戦っていた。

痛みが出ているはずだった。それでも止まっていなかった。

「やっぱり貴方なのね」

ルシラが小さく言った。


風が持っていった。

杖を掲げた。

第二軍が動いた。

砲撃が再開した。


戦場が揺れ続けた。

爆発が続いた。

炎が走った。

雷が地面を焼いた。


それでもヴァルガン軍は止まらなかった。

倒れた者がいた。

起き上がった者がいた。

また倒れた者がいた。

また起き上がった者がいた。


ガルゴン王が戦っていた。

ゼルガドと打ち合い続けていた。鎧が焦げていた。頬に傷があった。それでも笑っていた。


「戦士たちよ!」

ガルゴン王が叫んだ。

戦いながら叫んだ。振り返らずに叫んだ。

「まだ生きているだろう!」

声が届いた。

全部の声が届いた。

「ならば立て!」

ヴァルガン軍が咆哮した。

レグルス軍が動いた。


戦争が続いた。


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