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異世界ゆうしゃA ~亡国の残響~  作者: 小城乃ひかり
第四章 戦士の国

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戦火 (2)

異世界ゆうしゃA ~亡国の残響~ 第四章


別の部屋で、シュウが寝ていた。

腕に包帯が巻かれていた。胸にも巻かれていた。顔の傷に薬が塗られていた。

エルクが入ってきた。


シュウが目を開けた。「来たか」

「来た」

「座れよ、立ってると疲れる」

椅子がなかった。エルクは床に座った。

「痛いか」

「痛い。めちゃくちゃ痛い。異世界来てから一番痛い」

「そうか」

「でも生きてる。それでいい」シュウが言った。

「ゴルゴンナックを倒した。俺の貸しは無駄にならなかった。」

エルクは黙った。

「よかった」

シュウが少し笑った。

「お前さ」シュウが言った。

「何だ」

「死ぬなよ」

エルクが少し間を置いた。


「そっちもな」

「しばらく戦えそうにない」シュウが包帯を見ながら言った。

「骨が折れてる。二本くらい。腕と肋骨」

「動くな」

「動けないって。エルクが言わなくても動けない」

「ケンに任せる。治るまで大人しくしていろ」

シュウが天井を見た。

「一人か、お前」

「リアがいる」

「俺がいない一人って意味だ」

エルクは少し黙った。

「初めてだな」エルクが言った。

「お前がいない戦場は」

「嫌だろ」

「嫌だ」

「正直に言うじゃないか」シュウが笑った。笑うと痛そうだった。

「でも頼むぞ。俺が動けない間も、世界は止まってくれないから」

「止まらない」

「ならちゃんとやれ」

「やる」

シュウが目を閉じた。

「貸しは返せよ」

「返す」エルクが言った。


シュウが眠った。

エルクは少しの間、そこに座っていた。


最初からずっと一緒だった。


荷馬車の中で最初に話しかけてきた。白布の並ぶ部屋を一緒に逃げた。火石で灰喰いを焼いた。赤ゴーレムを一緒に倒した。


ずっとそこにいた。

当たり前にそこにいた。


立ち上がった。

「待っていろ」エルクが言った。

部屋を出た。



夜になった。

門の近くに、簡単な天幕が設営されていた。

軍議の場所だった。


ガルゴン王がいた。レイオンがいた。バルゼディスがいた。リブラがいた。エルクとリアがいた。

そしてライディスがいた。


机を挟んで、両側に分かれていた。レグルスとヴァルガンが同じ机についていた。それだけで異常な光景だった。

「奇妙な会合だ」ガルゴン王が言った。

「必要なことだ」ライディスが言った。

「貴様がそれを言うか」ガルゴン王が言った。

「レグルスが封印施設を破っていた可能性があると聞いたが」

「可能性だ。断定ではない」ライディスが言った。

「私もその点は調査中だ。だが今は関係ない。門を守ることが先だ」

「関係ないとは言えんが」ガルゴン王が続けた。

「まあいい。今は話を聞く」


リアが黙って座っていた。

ライディスを見ていた。

ライディスも一度だけリアを見た。視線が合った。

どちらも何も言わなかった。


「状況を整理する」バルゼディスが地図を広げた。

「魔王軍三軍が北部平原に集結している。目標は二つ。一つは門の奪取。もう一つは残りの封印施設の破壊だ」

「封印施設を守れるか」レイオンが言った。

「人手が必要だ。今の戦力では難しい」

「では正面で魔王軍を止める必要がある」ライディスが言った。

「封印施設へ向かわせない。そのためには戦線を保たなければならない」

「兵力は」ガルゴン王が言った。

「ヴァルガン軍が主力になる」ライディスが言った。

「レグルス軍は封印施設の守りに回す。人数は少ないが魔導兵の質がある」


「レグルスの魔導兵を信用しろということか」

「信用しなくていい。同じ方向を向けばいい」

ガルゴン王がライディスを見た。しばらく見た。


「言い方が気に入らないが、言ってる内容は正しい」ガルゴン王が言った。

「わかった。乗る」


リアが口を開いた。「残響はどう使う」

全員がエルクを見た。


「戦場の情報を読む」エルクが言った。

「敵の動きを把握して味方に伝える。あとは門の状態を感知できる。残響が門と繋がっている感触がある」

「使えるか」ライディスが言った。

「使える。ただし長くは続かない。使えばダメージがある」

「制限があるということか」

「そうだ」

「正直に言ったな」ライディスが言った。

「嘘をついても意味がない」

ライディスが少し間を置いた。

「そうだな」

軍議が続いた。

夜が深くなった。



会議が終わった後、エルクは一人で門の前に立った。

光が続いていた。

《残響》が動いた。

遠くを拾った。

黒い影があった。

門の向こうではなかった。

門の側面だった。岩壁の影だった。

人が立っていた。


黒い外套だった。


ノクトだった。

見えた、と思った瞬間に消えた。

でも声だけが残った。

「来るぞ」

それだけだった。


誰に言ったのか。

自分へ言ったのか。

別の誰かへ言ったのか。

わからなかった。


でもノクトがここにいた。

警告のように聞こえた。



翌朝、夜明け前に全員が動いた。

北部平原に、連合軍が整列した。

ヴァルガン軍が中央にいた。ガルゴン王が前線にいた。

王が前に出る国だった。

将軍の後ろに王がいるのではなかった。王が一番前にいた。


レグルス軍が右翼についた。ライディスが指揮していた。

レグルス軍は半数以上封印施設の守りについた。戦場は少数だった。


エルクとリアとレイオンが中央に入った。

「三人か」レイオンが言った。

「三人だ」エルクが言った。

「心細いな」

「そうだな」

「でも悪くない」

リアが大剣を握り直した。


対する魔王軍が地平線を埋めていた。

第一軍が前にいた。黒い鎧が並んでいた。第二軍が右手に展開していた。黒衣の術師たちがいた。第三軍の残党が散らばっていた。


その前に、一人が立っていた。

巨大だった。


赤黒い鎧だった。

炎の大剣を肩に担いでいた。

ゼルガドだった。


「ようやく本番だ」

ゼルガドが言った。


声が届いた。それだけ大きかった。

炎が大剣から溢れた。空を染めた。


ガルゴン王が戦斧を掲げた。

「ヴァルガンの戦士たちよ」

ガルゴン王が叫んだ。

「我らの国を守れ」

兵士たちが吼えた。


数千の声が北部平原を揺らした。


対する魔王軍が動いた。

ゼルガドが前へ出た。炎が地面を焼いた。第一軍が続いた。黒い軍勢が動き始めた。

戦鐘が鳴った。

両軍が動いた。

距離が縮まった。

矢が飛んだ。

最初の矢が、戦争の始まりだった。

ーー現在分かっている情報ーー

<魔王軍>

概要

・魔王軍は単一の思想で統一された軍隊ではなく、各軍団が独立した文化、戦闘思想、目的を持つ集合体である

・軍団同士の連携は薄い

・魔王本体は、軍団のさらに上位に位置する存在


第一軍

・魔王軍最大勢力

・武力至上主義、正面戦争の鬼、純粋な戦闘力・破壊

・騎士型、兵士型の魔族が多い、戦争で多くの国を壊滅させている

軍団長:ゼルガド(紅蓮のゼルガド)

・武力至上主義。「強者が勝つ」という単純な思想

・感情の起伏が少なく、戦いに対してのみ素直な反応を見せる

・赤黒い鎧、または黒鉄の鎧、表面に炎のような紋様が走っている、鎧の隙間から炎が漏れている、兜をかぶっていない、短い黒髪

・右手に大剣を持つ、刃が赤く光り、燃えている

幹部:魔騎士ガース、紅蓮騎士バググ


第二軍

・妖艶、魔術

・情報収集、研究を行なっている、全面的に戦争に参加することは少ない

・魔術師、魔法使い、悪魔型の魔族が多く、魔法による攻撃が得意

軍団長:ルシラ

・高位魔族(女型悪魔)。長い黒髪、紫の瞳、白い肌、小さな黒い角、黒い翼、漆黒の法衣

・見る角度によって天使にも悪魔にも見える

・妖艶で知的、多くの魔術を使いこなす

・転移魔法・結界術・精神干渉・幻覚・広域殲滅魔法・呪術を得意とする

・派手に壊すのではなく、言葉や知略で相手を追い詰める


第三軍

・魔獣軍、物理破壊

・複数の魔獣を融合した怪物の軍団、慈悲がない、目の前の物を破壊する

・獣型の魔族が多く、物理攻撃に長けている、多くの町や村を壊滅させた

・殺戮や破壊を目的とする

軍団長:ゴルゴンナック

・身長十メートルを超える巨大な怪物。獅子の頭、竜の牙、熊の腕、黒い甲殻、背中から伸びる骨の棘、複数の赤い眼

・ただ前進するだけで災害のような脅威を持つ


第四軍

・情報戦、知略、門の探求

・亡霊、ゴースト系、ゾンビ、死霊系の魔族が多い

・魔術や知略を得意とする

・魔族の世界を取り戻すことを目的としている、人間を殺戮することが目的ではない

軍団長:ノクト

・長い裾の黒い衣服、肩から胸元へ流れる長髪、金色の瞳

・整った目鼻立ちだが、感情がほとんど乗らない

・静かで理知的、情報戦・知略型

・魔王軍の中では明確な異端者であり、門の真実を探っている

・魔法主体で戦う、黒い炎や電撃を用いる、剣を抜くことは稀


第五軍

現在は不明



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