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異世界ゆうしゃA ~亡国の残響~  作者: 小城乃ひかり
第四章 戦士の国

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戦火 (1)

異世界ゆうしゃA ~亡国の残響~ 第四章


門が鳴っていた。


低い音だった。石の奥から来るような音だった。地面を伝って足の裏に届いた。

光が強かった。


青白い光が空へ伸びていた。吹雪の中でも消えなかった。むしろ吹雪を押しのけるように上へ伸びていた。

その前に、ライディスが立っていた。


振り返っていた。

エルクたちを見ていた。

「久しぶりだな」

静かな声だった。


リアが大剣に手をかけた。「ライディス」

「リア」ライディスが言った。

「ここで何をしている」リアが言った。

「見ての通りだ」

ライディスの背後に、レグルスの魔導兵が十数人いた。

門の周囲に魔法陣を展開していた。封印を試みていた。

門の光が揺れるたびに、魔導兵たちが体を張って抑えていた。


エルクはその光景を見た。

ライディスが守る側に回っている。


追ってくる男だった。戦場で対峙した男だった。でも今は門に背を向けて、封印を続けていた。

「封印を試みているのか」エルクが言った。

「試みている」ライディスが言った。

「遅すぎたがな。お前たちも遅かった」

「第三軍と戦っていた」

「知っている」

「シュウとフレイナが重傷だ」

ライディスが少し間を置いた。「そうか」

感情がなかった。でも聞いていた。


「この門は完全に起動しているのか?」エルクが言った。

「バルゼディスに聞け」ライディスが言った。「あの老賢者の方が詳しいだろ」

リアがエルクに言った。「信用できるか」

「今は、目的が同じだ」エルクが言った。

リアが手を離した。大剣の柄から手を離した。

ライディスはそれを見ていなかった。

また門へ向き直っていた。


バルゼディスが門を調査した。

杖を門に向けた。目を閉じた。魔法陣が展開した。門の光と干渉した。何かを読み取っていた。

長かった。

全員が待った。

ライディスも待っていた。腕を組んで、門を見ていた。

「わかった」バルゼディスが目を開けた。

「今すぐ開くわけではない。完全起動まで、まだ時間がある」

「どのくらいだ?」レイオンが言った。

「わからん。だが数時間ではない。数日か、数週間か」

「それは良かった」レイオンが言った。

「だが問題は別にある」バルゼディスが続けた。

「活性化は加速している。何かが——外から押している」

「外から?」

バルゼディスが地図を広げた。北部の地形図だった。

「封印施設の残りが全て破壊されれば、加速が止まらなくなる。今は残り二か所が踏ん張っている」

「守れるか」

「守れれば。だが——」


そこへヴァルガンの伝令が来た。

走ってきた。息が切れていた。

「報告します」伝令が叫んだ。

「魔王軍第一軍、北部平原へ侵攻開始しました」

全員が静まった。

「さらに」伝令が続けた。

「第二軍も確認されました。北東方面から接近中です」

「第三軍の残党は?」レイオンが言った。

「合流が確認されています」

ヴァルガンの伝令が続けた。

「戦になります。レイオン王子、至急ヴァルガンへ戻ってください」

レイオンが息をついた。「総攻撃か」

「そうなるな」ライディスが言った。

「三軍同時に動いている。目的は一つだ。門を奪取するか、封印施設を全て壊すか。どちらかだ」

「封印施設が残り二か所なら…」レイオンが言った。

「そこを守れば時間を稼げるな」エルクが言った。

「そうだ。そして——」ライディスがエルクを見た。

「お前が残響で何かできるなら、それも必要になる」

エルクはライディスを見た。


かつて追われていた男だった。

残響を兵器として欲しがっていた男だった。

でも今この瞬間は、同じ方向を向いていた。




ヴァルガンの城内に、戦鐘が鳴り響いた。

ガルゴン王が玉座にいなかった。


城の外に出ていた。

兵士たちの前に立っていた。

巨大な体だった。王冠をつけていたが、その下に戦の顔があった。手に戦斧を持っていた。王が持つものではなかった。戦士が持つものだった。

「戦だ」

ガルゴン王が言った。

それだけだった。

でも兵士たちから声が上がった。一人が吼えた。隣が吼えた。連鎖した。数千の声が城壁を揺らした。


「すごいな」ケンが横で言った。

「たった二文字だぞ。俺だったら十文字は使うぜ」ジェイドが言った。

「お前が王になる気か」ユウが言った。

「なりたくはないが、演説くらいはうまくやれると思う」

「絶対無理だ」ケンが言った。

三人が出陣の列に加わった。


ケンが兵士たちの動きを見ていた。怪我をしているのに無理に動こうとしている者がいた。

近づいた。「後ろで待機しろ。前線は俺たちに任せろ」と言った。消防士の顔だった。現場の顔だった。

ジェイドが拳を鳴らした。

ユウが武器を確認していた。走りながら戦う想定で、軽い装備を選んでいた。

街の外に、巨大な軍勢が整列し始めていた。


医療施設は城の中にあった。

レイオンがフレイナの部屋に入った。

フレイナは寝台に横になっていた。胸に包帯が巻かれていた。顔が青白かった。でも目を開けていた。

「来たか」フレイナが言った。

「見舞いだ」

「戦の前に来るな。縁起が悪い」

「縁起は気にしない」レイオンが椅子を引いて座った。「どうだ、痛みは」

「ある。だがそれだけだ」

沈黙があった。


「俺が弱かった」レイオンが言った。

フレイナが首を振った。「違う」

「あの場面で動けなかった。お前が出なければ俺が——」

「違う」フレイナが繰り返した。

「仲間を守れたんだから。私は私の仕事をした。それだけだ」


「お前の仕事は俺の護衛じゃない」

「そうよ」フレイナが言った。

「でも、仲間を守ることならどんな仕事にも含まれるでしょ」

レイオンが黙った。

窓の外で戦鐘が聞こえていた。

「行って。戦が始まる」フレイナが言った。

「ああ」

「勝って来い」

「負ける気はない」

「そういう問題じゃない。生きて帰ってきなさいよ。それが勝ちの条件」フレイナが言った。

レイオンが立ち上がった。

「条件か」

「条件」

「承った」

レイオンが出ていった。

フレイナは天井を見た。

窓の外で、兵士たちの声が続いていた。


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