表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ゆうしゃA ~亡国の残響~  作者: 小城乃ひかり
第四章 戦士の国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
73/147

魔獣の森 (2)

異世界ゆうしゃA ~亡国の残響~ 第四章

轟音がした。


エルクは地面にいた。

横に転がっていた。


衝撃が右側から来ていた。

何かに押された感触があった。


顔を上げた。

シュウがいた。

岩壁に叩きつけられていた。

背中から岩壁に当たって、そのまま地面に落ちていた。動いていなかった。


「シュウ!」

エルクが立ち上がった。

走った。

シュウが血だらけだった。腕が変な方向に曲がっていた。顔に傷があった。胸の鎧が割れていた。

でもシュウは目を開けた。

「へへ…、貸し一つな」と言った。

「何を言っている」

「本気で言ってる…」シュウが言った。「…あと、痛い。…すごく痛い」

「黙れ、動くな」

「う、動けないって…」

シュウが目を閉じた。

意識を失った。

エルクはシュウの呼吸を確認した。あった。弱かったが、あった。


立ち上がった。

振り返った。


ゴルゴンナックがいた。


赤い目が、エルクを見ていた。

頭の中で何かが変わった。


《残響》が広がった。

制御していたものが、広がった。


声が来た。


勇者の声が来た。何百人分かわからない声が来た。怒りがあった。絶望があった。帰りたいという叫びがあった。名前を覚えてくれという声があった。死ぬことへの恐怖があった。

全部来た。


「まずい」リアが言った。

エルクを見た。


エルクの目が変わっていた。《残響》が暴走しかけていた。

「エルク!」リアが言った。

エルクには聞こえていた。でも体が動かなかった。情報が多すぎた。声が多すぎた。

その時だった。


ゴルゴンナックは辺りを粉砕しエルクへ向かって突進してきた。

レイオンとフレイナが前に出ようと剣を構えた。踏み込んだ。

ゴルゴンナックの勢いを止めようとした。

ゴルゴンナックは咆哮を上げ、両手を広げ前へ押し出した。

ものすごい風圧が襲った。


レイオンが固まった。「くっ…」

ゴルゴンナックが向きを変えた。

レイオンへ向いた。

レイオンへ攻撃目標を定めた。

爪が来た。

大きかった。

速かった。


「動け!」フレイナが言った。

でもレイオンが動けなかった。一瞬だけ動けなかった。

フレイナが前に出た。

爪が来た。


フレイナがそこにいた。

肩から胸へ、深い傷が走った。

血が飛んだ。

「フレイナ!」レイオンが言った。

フレイナが膝をついた。地面に手をついた。


「王子様なんだから」フレイナが言った。

笑っていた。血を吐きながら笑っていた。

「ちゃんと生き残りなさいよ」

倒れた。


レイオンが震えた。

剣を持つ手が、震えていた。

「フレイナ!」もう一度言った。


今度は別の声だった。

戦士の声ではなかった。

若い男の声だった。


レイオンが前に出た。

「エルク!」レイオンが叫んだ。

「今すぐ戻れ」

エルクが我に返った。


声が引いていった。

リアの目があった。

「戻れ!」リアが言った。

「戻った」エルクが言った。

「行くぞ」

リアが走った。

エルクも走った。

レイオンも走った。


バルゼディスが後方から叫んだ。「援護する。三人で行け」

杖から光が走った。ゴルゴンナックの目を焼いた。一瞬だけ動きが鈍った。

「今だ」リアが言った。

三人が同時に踏み込んだ。


エルクは《残響》を絞った。

核の位置が見えた。

胸の奥だった。甲殻の中心の継ぎ目を抜けた先だった。


「継ぎ目を狙え。真ん中の一番大きい継ぎ目だ」

リアが大剣を継ぎ目に叩き込んだ。

亀裂が入った。

レイオンが剣を差し込んだ。

広がった。

「今だ」

エルクが短剣を継ぎ目の奥へ突き立てた。


光があった。

青白い光があった。


核に触れた感触があった。


ゴルゴンナックが咆哮した。

今まで聞いたことのない音だった。山が震えた。地面が揺れた。

エルクは手を離さなかった。

押し込んだ。

核が割れた。

光が爆発した。


三人が吹き飛んだ。

雪の上に落ちた。転がった。

轟音が来た。


ゴルゴンナックが崩れていった。


黒い甲殻が落ちた。赤い目が消えた。骨の棘が折れた。巨体が崩れた。

山が揺れた。

雪崩れが来た。


バルゼディスが魔法を張った。雪崩れが止まった。

静かになった。

吹雪だけが残った。


誰も動かなかった。

しばらく、その場に転がっていた。

体が痛かった。

全部が痛かった。

「勝ったか」シュウの声がした。

エルクが顔を上げた。


シュウがまだ岩壁の下にいた。目を開けていた。血だらけのまま、目を開けていた。

「起きていたのか」

「ずっと起きてた。動けなかっただけ」

「嘘だろ」

「本当だって…最後の咆哮はさすがに聞こえた。勝ったのか」シュウが言った。

「勝った」

「よかった」

シュウが目を閉じた。今度は本当に意識を失った。


レイオンがフレイナのそばにいた。

フレイナは倒れていた。

息があった。でも傷が深かった。鎧の胸部が割れていた。血が雪を染めていた。

「フレイナ」レイオンが言った。

「……生きてるわよ」フレイナが言った。目を閉じたまま言った。

「うるさいわね」

「うるさくて悪かった」

「少しは静かにしなさい。王子でしょう」

「そうだな」

レイオンが笑った。泣いているような笑い方だった。


リアがエルクの隣に来た。二人でその光景を見ていた。

「勝ったのに」エルクが言った。

「そうだ」リアが言った。

「こういうものか」

「戦争はそういうものだ」

エルクは手を見た。


手が震えていた。


核を砕いた感触が残っていた。

シュウが飛び込んだ瞬間が残っていた。

フレイナが前に出た瞬間が残っていた。


ケンが言っていた言葉を思い出した。

勝った感じしない。

戦争ってそういうもんだ。

その意味が、今初めてわかった気がした。


バルゼディスが二人のそばに来た。

「傷の手当てをする。リブラ、物資を」

リブラが動いた。荷物から医療用の魔導具を出した。


エルクは立ち上がった。

体が重かった。

でも動けた。

北の方向を見た。

《残響》が動いた。

遠かった。でも確かに来た。


光があった。

山の向こうに光があった。

青白い光だった。柱のように上へ伸びていた。

門だった。

「見える」エルクが言った。


「北の山の向こうに門がある」

バルゼディスが顔を上げた。「確かか」


「確かだ。すでに起動している」

全員が北を見た。

光の柱が、吹雪の中でもはっきりと見えた。

「行かなければならない」バルゼディスが言った。

「シュウとフレイナは」

「私が残る。お前たちは先に行け」リブラが言った。

エルクはシュウを見た。

眠っていた。血まみれだったが、呼吸が安定していた。

「ケンに連絡できるか」エルクが言った。

「ヴァルガンへ魔導報を打つ」リブラが言った。「ケンたちが来る前に、まず私が動く」

「頼む」

エルクはシュウを見た。

「貸し一つ、か」エルクが言った。小さく言った。

シュウは眠っていた。

「後で返す」エルクが言った。

立ち上がった。


北へ向いた。

光の柱が見えた。

リアが隣に来た。レイオンが来た。

三人で歩き始めた。

吹雪の中を進んだ。

光に向かって進んだ。



山を越えた先に、広い雪原があった。

その奥に、岩壁があった。

岩壁の表面に古代の紋様が刻まれていた。

紋様が光っていた。

青白く、強く光っていた。

門だった。

でかかった。

これまで見た中で一番大きかった。

その前に、一人が立っていた。

軍服を着た男だった。長剣を腰に差していた。銀に近い短い髪だった。


ライディスだった。


男が振り返った。


エルクたちを見た。

「遅かったな」

静かに言った。

「もう始まっている」

門が鳴った。


低い音だった。地の底から来るような音だった。

光が強くなった。

空へ伸びた。


青白い柱が夜空を貫いた。

吹雪が止んだ。

光だけがあった。

便利アイテム

魔導報

・2つペアになった石、一つを叩くともう一つが光る

・有効距離:半径10km

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ