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異世界ゆうしゃA ~亡国の残響~  作者: 小城乃ひかり
第四章 戦士の国

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深淵魔導軍 (2)

異世界ゆうしゃA ~亡国の残響~ 第四章


目が開いた。


雪原だった。

吹雪だった。


リアが目の前にいた。肩を掴んでいた。強く掴んでいた。

「戻れ」リアが言った。

エルクは顔を上げた。


レイオンが魔法陣の一角に剣を打ち込んでいた。亀裂が入った。

シュウが《レプリカ》で複製した鉄杭を投げ続けていた。魔術兵の詠唱を邪魔していた。

フレイナが槍を構えて、結界の外周を走りながら弱点を探していた。


「術の中に入れられた」エルクが言った。

「わかっている。でも戻ってきた」リアが言った。

「お前が呼んだから」


「そうだ」リアが言った。「一人なら戻れなかったかもしれない」

エルクはそれを聞きながら、立ち上がった。


仲間がいたから戻れた。

それだけだった。それだけだが、それが全てだった。

《残響》を開いた。


痛かった。

でも続けた。


魔術兵たちの術式が見えた。魔力の流れが見えた。どこからどこへ向かっているか。どこが核になっているか。結界の構造が見えた。

複雑だった。何層にも重なっていた。

でも必ず核がある。

探した。


「リア」エルクが言った。

「聞こえている」

「右側の魔法陣だ。地面から一メートルの高さに核がある。そこを叩け」

リアが走った。

「見えない場所だがいいか」

「いい。俺が言う。右の岩の根元から三歩前、高さ一メートル。今だ」

リアが大剣を振った。


何もない空間を叩いた。

金属的な音がした。

結界が揺れた。


「もう一度、同じ場所」


リアが叩いた。

結界が崩れた。

音を立てて消えた。


「フレイナ」エルクが叫んだ。

フレイナがすでに動いていた。槍を構えて突破口へ走り込んでいた。


「左の魔術兵から三人倒せ。呪文の連鎖が切れる」

フレイナが三人を連続で倒した。

光の鎖が消えた。


「レイオン、中央だ」

レイオンが走り込んだ。

剣が中央の魔術師に入った。


第二軍の陣形が崩れた。

後方の魔術兵が動揺した。呪文の詠唱が乱れた。魔法陣が不安定になった。


ルシラが初めて動いた。

今まで後方で余裕の顔をしていた。その余裕が崩れた。

「待って」ルシラが言った。

でも遅かった。


フレイナが槍を連続で突いた。魔術兵の防衛ラインを抜けた。ルシラへ届く距離まで来た。

槍が来た。

ルシラが翼で受けた。


黒い翼に穴が開いた。血が出た。白い雪に赤が散った。

ルシラが後退した。


レイオンが横から来た。剣を振った。術式が張られたローブの裾が切れた。魔法陣が一つ消えた。


リアが正面から来た。

大剣を振り上げた。

ルシラが転移魔法を展開しかけた。

間に合わなかった。

大剣がルシラの右肩を叩いた。

完全には当たらなかった。でも衝撃があった。ルシラが地面に膝をついた。


初めてだった。

余裕を持って戦場に立っていたルシラが、膝をついた。


しばらく、動かなかった。

雪に赤が落ちていた。


エルクは息を整えながら、ルシラを見た。

ルシラが顔を上げた。

笑っていた。


負けていたのに、笑っていた。

「なるほど。思った以上ね」ルシラが言った。

一拍置いた。

「今日は私の負け」


ルシラが立ち上がった。


傷ついていた。翼が裂けていた。でも立った。

転移魔法陣が展開し始めた。


「待て」レイオンが言った。

「嫌よ」ルシラが言った。笑っていた。「また来るわ。その時に続きをしましょう」

消えかけながら、エルクを見た。


「残響は危険よ。あなたが思っている以上に」ルシラが言った。

「どういう意味だ」

「門が開けば分かるわ」

ルシラが消えた。


魔術兵たちも消えた。


紫の魔法陣が消えた。


吹雪だけが残った。


誰も動かなかった。

しばらく誰も何も言わなかった。


「勝ったのか」シュウが言った。

「追い払った」エルクが言った。「それは確かだ」

「十分だろ」

「そうだな」

レイオンが剣を収めた。「初めてだ。魔王軍の幹部を直接退けたのは」

「ゼルガドは退けていないのか」シュウが言った。

「あれは引き分けだ。ルシラは負傷して撤退した。違う」


フレイナが槍を収めた。「次は本気で来る。今日は様子見の要素もあった」

「わかっている」バルゼディスが言った。老人は戦闘中、後方で結界の迎撃を行っていた。「だが今日は勝った。それが重要だ」


エルクはルシラが消えた方向を見た。

残響は危険よ。あなたが思っている以上に。


意味がわからなかった。

でも嫌な感触が残った。

精神魔法の中で言われた言葉が頭に残っていた。


本当にあなたはエルクなの?

残響が見せる記憶——それは本当にあなたのもの?


答えが出なかった。

「エルク」リアが隣に来た。

「ああ」

「考え込むな。今は次だ」


エルクは頷いた。

「そうだな」

その時だった。


大地が揺れた。

爆発ではなかった。

足音だった。


一歩一歩が地震になるほどの足音だった。

遠くの森で木が倒れる音がした。


一本ではなかった。

次々と倒れていた。


何かが来ていた。

巨大な何かが来ていた。


咆哮が来た。

山が震えた。

全員が同じ方向を見た。


バルゼディスの顔色が変わった。

「まずい」老人が言った。「あれは第三軍だ」

木々が倒れ続けていた。

こちらへ近づいてきていた。


その時、遠くの空に小さな影があった。

消えていくルシラの影だった。


雪の向こうで、笑い声が聞こえた気がした。

「もう来たのね」

風に乗って届いた。

「あの子は加減を知らないから」

吹雪の中から、赤い目が見えた。


複数あった。

牙が光った。

何かが、こちらを見ていた。

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