表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ゆうしゃA ~亡国の残響~  作者: 小城乃ひかり
第四章 戦士の国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
66/143

鋼の炎 (1)

異世界ゆうしゃA ~亡国の残響~ 第四章

夜明け前に、地面が鳴った。


ドォォォォォォォォォ…ン


最初は遠雷だと思った。でも空に雲はなかった。星が出ていた。

エルクは野営地から外へ出た。


北の方向が、赤かった。

星空の下が、赤く染まっていた。

「来る」エルクが言った。


野営地が動き始めた。


防衛線の再構築は夜通し続いていた。

倒れた杭を立て直した。崩れた土塁を盛り直した。傷ついた兵士を後方へ下げた。代わりに予備の兵士を前線へ送った。

指揮官たちが地図を見ながら怒鳴り続けていた。

夜明けと同時に、敵が見えた。


昨日とは違った。

昨日の第一軍は人間の軍勢に見えた。黒い鎧を着た兵士たちが並んでいた。人間型魔族の軍だった。

今日は違った。

先頭に、炎を纏った騎士がいた。甲冑の隙間から火が漏れていた。人間の体ではない動き方をしていた。

その後ろに、溶岩のような皮膚の者たちが列を作っていた。四本の腕があった。二本しかない者もいたが、その二本が人間の倍の長さがあった。地面を四足で走る甲冑獣がいた。兜から頭部ではなく炎が噴き出している者がいた。

「完全にモンスター軍団じゃないか」シュウが言った。

「あれ全部知性がある、魔王軍第一軍の本隊だ」ケンが言った。

「奴ら命令に従って動いている。本能で動いているのとは違う」

「それの方が怖い」シュウは震えた。

怖い、という言葉がこれほど正確に当てはまることも珍しかった。


エルクは《残響》を絞った。

流れ込んできた。

恐怖があった。これほど濃い恐怖の記録は初めてだった。

過去にここで戦った者たちの恐怖が、そのまま流れ込んできた。

熱さがあった。炎の熱さが肌の記憶として来た。逃げる足音があった。追いつかれる感触があった。


「こいつらと過去にも戦った人間がいる」エルクが言った。

「生き残ったのか」シュウが聞いた。

「……わからない」

それが答えだった。


警鐘が鳴った。

魔王軍第一軍が動いた。


最初に来たのは、炎槍だった。

空が暗くなった。

数百本の炎の槍が空を埋めていた。弧を描いて、降り注いできた。

「散れ」レイオンが叫んだ。

爆発が連続した。地面が抉れた。防衛線の一角が吹き飛んだ。炎が広がった。

兵士たちが叫んだ。消そうとしたが消えなかった。魔炎だった。水では消えなかった。

「盾を前に!次が来る」フレイナが叫んだ。


また空が暗くなった。

また降り注いだ。

また爆発した。


「エルク!」リアが言った。

「見ている」

《残響》を使った。

どこへ落ちるか、次の瞬間が流れ込んだ。完全ではなかった。でも少し先がわかった。

「右前方、集中する。右前方の部隊は伏せろ」

伝令が走った。


右前方の部隊が伏せた。

炎槍が降った。その場所の後方に落ちた。被害が少なかった。

「前線突撃、来る」エルクが叫んだ。


異形騎士団が動いた。

巨大な魔獣に騎乗していた。地面を揺らしながら走ってきた。速かった。大きかった。城壁に激突した。石が砕けた。城壁の一部が崩れた。

「前へ」レイオンが叫んだ。

騎兵隊が動いた。


レイオンが敵将に向かった。「化け物め」

炎色の鎧を着た騎士だった。昨日と違う相手だった。昨日の魔騎士ガースより大きかった。剣が二本あった。両手に一本ずつ持っていた。

馬が激突した。


レイオンの剣が一本の剣を弾いた。もう一本が来た。レイオンが体を傾けて躱した。

剣が肩口を掠めた。鎧が削れた。

「まだだ」レイオンが言った。

もう一度踏み込んだ。

敵将の懐に入った。接近戦は剣が長い方が不利だった。

レイオンが短く振った。連続した。

敵将が後退した。

フレイナが右から来た。槍が敵将の右腕を貫いた。剣の一本が落ちた。

レイオンが踏み込んだ。

剣が敵将の胸を貫いた。


敵将は倒れた。


ヴァルガン兵たちから声が上がった。

でも戦場は広かった。一人倒れても別の敵が来た。次が来た。また次が来た。


「前を向け!喜ぶのは後だ」フレイナが叫んだ。


その時だった。

倒れたはずの敵将が、動いた。

起き上がった。

傷口から炎が漏れていた。目が光っていた。

「おいおいおい」シュウが言った。


後方に魔術師型の魔族がいた。細身だった。杖を持っていた。

死体に向かって魔炎を注いでいた。倒れた者たちが次々と起き上がっていた。

「死んで終わりじゃないのか」ジェイドが言った。驚いていた。これだけ驚かせる相手を、ジェイドは初めて見た顔をしていた。


「あの魔術師を止めないと際限なく増える」エルクが言った。

「《残響》で位置は見える。でも遠い」

「俺が行く」ユウが言った。

「危険だ」

「速さなら負けない」

ユウが走り始めた。


戦場の中を走った。敵をすり抜けた。右に躱した。左に曲がった。

跳んだ。くぐった。

真っすぐ走らなかった。でも確実に前へ進んでいた。


魔術師型の魔族がユウに気づいた。炎を放った。

ユウが横へ飛んだ。


炎が地面を焼いた。ユウが起き上がった。また走った。

「ケン」ユウが叫んだ。

ケンがいた。後方だった。ユウの方向を見ていた。

「準備しろ」

ユウが魔術師の目の前まで来た。魔術師が杖を向けた。

ユウが急停止した。

後ろへ跳んだ。

魔術師の炎がユウを通り過ぎた。


そこにケンがいた。

ケンが盾を構えていた。炎を受けた。弾き返した。方向が変わった。


魔術師に当たった。

魔術師が怯んだ。


ユウが接近した。短剣を持っていた。


刺した。

魔術師が崩れた。


蘇生が止まった。

死体が再び倒れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ