表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ゆうしゃA ~亡国の残響~  作者: 小城乃ひかり
第四章 戦士の国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
65/143

紅蓮の侵攻 (2)

異世界ゆうしゃA ~亡国の残響~

両軍が動いた。


矢が飛んだ。最初の一斉射だった。

黒い鎧の兵士たちに当たった。何人かが倒れた。でも止まらなかった。

魔導兵が呪文を唱えた。光が飛んだ。爆発した。地面が吹き飛んだ。

第一軍の列が乱れた。でも埋まった。

後ろから前へ押し出されるように、また列が揃った。


「多い」シュウが言った。

「突破させるな」フレイナが槍を構えながら言った。「突破されたら後列が終わる」


両軍が激突した。


剣と剣が交わった。盾が割れた。怒鳴り声が上がった。

誰かが倒れた。誰かが踏み越えた。


ケンが後列にいた。

負傷した兵士を引きずり出していた。前線から引いてきた兵士の傷を確認していた。

押さえる場所を指示していた。怒鳴らなかった。落ち着いた声で言っていた。

それが周囲を落ち着かせていた。

「右腕、まだ動くか」ケンが負傷兵に言った。

「動く」

「じゃあ持てるか、これ」水の入った袋を渡した。「後ろで配ってきてくれ」

負傷兵が頷いた。立ち上がった。

ケンは次の負傷者に向かった。


ユウが戦場を走っていた。

前線から後方へ、後方から前線へ、伝令を運んでいた。矢が飛んでいる中を走っていた。

怖そうな顔をしていた。でも止まらなかった。右から走って左へ抜けて、また右へ戻った。

「左翼が押されています」ユウが伝令を届けながら叫んだ。

「援軍を」

指揮官が動いた。


ジェイドが右翼に突っ込んでいた。

敵の一団に正面から入っていった。籠手が光った。一人を殴り飛ばした。別の一人を掴んで投げた。また別の一人に蹴りを入れた。周囲の戦士たちが驚いていた。でも釣られて前へ出た。右翼が押し返した。

「気持ちいい」ジェイドが笑いながら次の敵を見ていた。


第一軍の中から、一騎の騎士が出てきた。

炎色の鎧だった。馬が黒かった。手に長剣を持っていた。

「あ、あいつは!魔騎士ガース!」フレイナが言った。

「第一軍の幹部だ、人間を辞めたやつだ」

レイオンが前に出た。「俺が行く」

「王子」フレイナが言った。


「見ていてくれ」

レイオンが駆けた。


ガースも動いた。

二つの影がぶつかった。火花が散った。

レイオンが押し込んだ。ガースが受けた。また打ち合った。

レイオンが速かった。攻撃が途切れなかった。ガースが後退しかけた。

レイオンが踏み込んだ。大きく踏み込んだ。


ガースが炎を纏った剣を振った。

レイオンが弾かれた。地面を転がった。立ち上がった。

「まだだ」レイオンが言った。

また向かった。


「頑固だな」フレイナが呟いた。

見ていた。援護のタイミングを測っていた。


中央戦線が押されていた。

敵が突破口を作ろうとしていた。左から右へ圧力をかけた。防衛線の一部が薄くなった。

「右から来る」

エルクが言った。

《残響》が動いていた。

戦場全体の情報が薄く流れていた。死者の記録があった。

似た地形で似た戦い方をした誰かの記録があった。

敵がどこへ向かうか、どこを突こうとしているか、少し先が見えた。

「右から来る。十人以上だ」

隣の指揮官が判断した。すぐに右へ兵を回した。


突撃が来た。

でも待ち構えていた。弾いた。

「どうわかった?」指揮官がエルクに言った。

「勘だ」

「そういう勘を持っていてくれ」


エルクは次を読んだ。

「今度は左だ。同時に中央を狙う。中央が崩れたところを突く」

指揮官が動いた。


リアが前線に出ていた。

大剣を振るっていた。一人倒した。また一人倒した。止まらなかった。踏み込んで、振って、次へ向かった。周囲のヴァルガン兵がそれを見ていた。

「何者だあの女」誰かが言っていた。

「知らんが、前に出るな」別の誰かが言った。

「潰される」


シュウが後方で動いていた。

兵士のところへ走った。消耗した矢を《レプリカ》で複製して補充した。弓兵が驚いた顔をした。

「ありがたい」弓兵が言った。

「すぐに使ってくれ。崩れるから」シュウが言った。「崩れたら教えてくれ、次を出す」


膠着していた戦線が、突然崩れた。

後方だった。


轟音がした。


地面が揺れた。


炎が上がった。


「紅蓮のゼルガドが動いた」誰かが叫んだ。

大剣が振り抜かれた。

炎の衝撃波が走った。ヴァルガン兵が数十人、まとめて吹き飛んだ。

地面が溶けていた。石畳が液体になっていた。


ゼルガドが戦場を歩いていた。

止めようとした兵士が大剣の一振りで飛んだ。

魔導兵が呪文を撃った。大剣で弾いた。

騎馬が突撃した。大剣の柄で馬を止めた。馬が倒れた。


退屈そうだった。

その目が退屈そうだった。

防衛線が崩れた。


レイオンが魔騎士から離れた。ゼルガドへ向かった。

「来るな」フレイナが叫んだ。

「目の前にいる」レイオンが言った。


ゼルガドがレイオンを見た。初めてこちらを見た。

「王子か」ゼルガドが言った。

レイオンが剣を構えた。「そうだ」

「面白くない」

ゼルガドが大剣を振った。

レイオンが受けた。

吹き飛んだ。


十メートル以上飛んだ。地面に叩きつけられた。

転がった。立ち上がろうとした。膝をついた。

フレイナが槍を構えながら飛び込んだ。ゼルガドが槍を大剣で払った。

フレイナが横へ弾かれた。でも着地した。


リアが前に出た。

ゼルガドと向き合った。

大剣と大剣だった。


リアが踏み込んだ。全力で振った。ゼルガドが受けた。火花が散った。地面が揺れた。

止まった。

ゼルガドが笑った。

「面白い」ゼルガドが言った。声が低かった。

「久しぶりだ。こういうのは」

リアが次を振った。またゼルガドが受けた。今度は押し込んだ。ゼルガドが一歩後退した。

「面白いが」ゼルガドが言いながら押し返した。

「まだ足りんな」


エルクがゼルガドへ向かった。《残響》を使いながら横に回った。ゼルガドの動きを読もうとした。

ゼルガドがエルクを見た。

一瞬だけ見た。

「お前が勇者か」ゼルガドが言った。

エルクが止まった。


ゼルガドが目を細めた。見ていた。エルクを見ていた。何かを測るような目だった。

「違うな」

ゼルガドが言った。

「まだ足りん」

もう一度言った。

エルクに向けた言葉なのか、自分自身への言葉なのか、わからなかった。


ゼルガドが大剣を肩に担いだ。

「もういい」

踵を返した。


第一軍が動いた。

前進していた軍勢が止まった。後退し始めた。



日が沈んだ。


戦闘が一旦止まった。

決着ではなかった。第一軍が引いた。


ヴァルガン王ガルゴンが地図を見ていた。

レイオンは腕に包帯が巻かれていた。フレイナが隣に立っていた。

「ゼルガドを全く止められなかった」レイオンが言った。悔しそうだった。

「あいつ、本当に化け物だ」

「今日のところはここまでだ」ガルゴン王が言った。

「傷の手当てをしろ」

「でも」

「今は休め」

レイオンが口を閉じた。

「おそらくゼルガドは、また来る。今夜か、明日か。今日は偵察みたいなものだったのだろう」ガルゴン王が言った。

「次は我々を全滅させにくる、今はみんな休め!戦いに備えろ!」


エルクはゼルガドの言葉を頭の中で反芻していた。

勇者か。違うな。まだ足りん。


ゼルガド

・魔王軍第一軍団長

・異名 紅蓮のゼルガド

・武力至上主義

・ヴァルガン最大の脅威


魔騎士ガース

・魔王軍第1軍の幹部

・人間を辞めて魔族なった者

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ