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異世界ゆうしゃA ~亡国の残響~  作者: 小城乃ひかり
第三章 賢者の国

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第二の門 (1)

異世界ゆうしゃA ~亡国の残響~

賢者議会塔は、アルテフェインの塔より低かった。


低いが、幅があった。円形の建物だった。外壁に複数の魔法陣が刻まれていた。

入り口に二人の衛士が立っていた。黒い装備だった。魔導杖を持っていた。

ミレナンが衛士に証明書を見せた。衛士が四人を通した。


中に入ると、吹き抜けの円形広間があった。中央に大きな円卓があった。すでに人が座っていた。


十人以上いた。


全員が賢者だった。


服装がそれぞれ違った。白いローブの者。青いローブの者。刺繍の入った厚手の外套を着た者。杖を持つ者。持たない者。年齢もばらばらだった。若い者もいた。アルテフェインより老けて見える者もいた。


「星の賢者です」ミレナンが小声でエルクに教えた。

「あちらが魔導の賢者。あの方が結界の賢者。奥の方が時の賢者で——」

「全員顔と名前を一致させる必要があるか」

「今はなくていいです」

「なら今は聞かなくていい」

ミレナンが少し口をへの字にした。


アルテフェインがすでに円卓についていた。上座に近い場所だった。エルクたちが入ると、老人が顎でそばの席を示した。四人が座った。


円卓が揃った。


アルテフェインが立ち上がった。


エルクが話した。

アルテフェインが先に話すかと思っていたが、エルクに目で合図した。お前が話せ、という意味だった。

エルクは立ち上がって話した。


星門神殿のこと。

扉が開いたこと。

無数の世界を見たこと。

「世界を選べ」という声のこと。

ノクトが現れたこと。神殿が崩壊したこと。

順番に話した。

賢者たちは黙って聞いた。

途中で口を挟む者はいなかった。全員が真剣な顔をしていた。一部は手元に羊皮紙を広げて何かを書いていた。

エルクが話し終えた。


賢者たちがざわついた。

複数人が同時に話し始めた。エルナト語だった。エルクには聞き取れなかった。


ミレナンが小声で訳してくれた。

「残響が門の鍵になったのは初めての事例だと言っています」ミレナンが言った。

「あと、世界を選べという言葉の解釈について議論しています。あの方は門の意志だと言っていて、あちらの方は古代の記録の再生だと言っていて——」

「まとめると」

「みんなびっくりしています」

「わかった」


議論が続く中、一人だけ話していない賢者がいた。


円卓の端に座っていた。

他の賢者より年老いていた。アルテフェインより老けて見えた。白い眉が長かった。杖を持っていたが、立てかけたまま使っていなかった。


その老賢者が、静かに何か言った。


エルクには聞こえなかったが、他の賢者たちが静かになった。

ミレナンが訳した。

「やはり始まったか、と言っています」

「どういう意味だ」とエルクが聞いた。


ミレナンが老賢者に聞いた。老賢者が答えた。ミレナンの顔が少し変わった。

「……もっと前から知っていたと言っています。百年以上前の記録に、同じ現象が起きかけた記録があると」

「百年前にも」

「でも、その時は残響の器がいなかった。だから途中で止まったと」

エルクは老賢者を見た。老賢者もエルクを見ていた。

何かを知っている目だった。


アルテフェインが立ち上がった。議論を静めた。

「エルナト第二の門が活性化している」

アルテフェインが言った。

「星門神殿の崩壊で、連動して動き始めた。時間がない」

場の空気が変わった。


アルテフェインが地図を広げた。

円卓の上に広げた。全員が覗き込んだ。


世界地図だった。エルクが今まで見た中で最も大きな地図だった。

レグルス、エルナト、ヴァルガンだけではなかった。海があった。海の向こうに大陸があった。名前の読めない国が並んでいた。砂漠があった。氷原があった。

その地図に、印がついていた。

七か所だった。

「確認済みの門の位置だ」アルテフェインが言った。


シュウが地図を見た。

「ちょっと待て。そんな重要なもん、世界各地に放置されてるのか」シュウが言った。

「発見できないのだ」アルテフェインが言った。「門は隠れている。現れたり消えたりする。場所を変えることすらある。七か所というのは、過去に一度でも確認された数だ。現在も同じ場所にあるとは限らない」

「じゃあ今どこにあるかもわからないのか」

「大まかにはわかる。だが正確な位置は、残響で追わなければ特定できない」

シュウがエルクを見た。エルクが頷いた。


「さらに問題がある」アルテフェインが続けた。

「過去の記録によれば、門は何度か開いた可能性がある。だが——開いた記録だけが残っていて、その後どうなったかが、わからない」

「どうなったかがわからない、とは」

「記録が途切れている」アルテフェインが言った。


「記録した者が、いなくなったのかもしれない」

円卓が静かになった。


エルクは地図を見た。

七つの印が、世界に散らばっていた。


もし門が開いたなら。

世界が融合したなら。

記録した者がいなくなったのは——世界そのものが変わったからかもしれなかった。


帰れるのか。

その問いが、また頭の中に浮かんだ。

浮かんで、沈んだ。

答えが出なかった。


リアが横にいた。

エルクの顔を、ちらりと見た。

何も言わなかった。



会議が終わったのは昼過ぎだった。


広間を出たところで、ミレナンが待っていた。

大きな本を両手で抱えていた。三冊重ねていた。抱えきれないくらいの量だった。歩きながら読んでいた。

「ミレナン」シュウが言った。

「あ、皆さん」ミレナンが顔を上げた。

足が石畳の段差につっかかった。

体が前に傾いた。

本が飛んだ。

シュウが手を出した。三冊のうち二冊をキャッチした。一冊が床に落ちた。

ミレナンが石畳に手をついた。転ばなかった。ギリギリで踏みとどまった。


「惜しかった」シュウが言った。

「今日は転びませんでした」ミレナンが立ち直りながら言った。

「転びかけた」

「転びかけただけです」

リアが落ちた一冊を拾った。ミレナンに渡した。

ミレナンが「ありがとうございます」と受け取った。

「それで。何かわかったか」エルクが言った。


「第二の門の調査隊が出ます」ミレナンが言った。

「皆さんも同行です」

シュウが少し止まった。「え、俺たち強制?」

「もちろんだ」

声がした。

振り返った。


アルテフェインが広間から出てきたところだった。

「もちろんなのか」シュウが言った。

「残響なしでは門の位置を特定できない」アルテフェインが言った。

「お前たちが必要だ。それだけだ」


シュウがエルクに小声で言った。「まぁ断れる雰囲気じゃないな」

「最初から断れない。行くって言ったしな…」エルクが返した。


リアが少し笑った。

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