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異世界ゆうしゃA ~亡国の残響~  作者: 小城乃ひかり
第三章 賢者の国

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世界の向こう側 (1)

異世界ゆうしゃA ~亡国の残響~

天井が落ちてきた。

石だった。人の頭より大きい石が、音もなく落ちてきた。エルクが横に跳んだ。石が床に当たって砕けた。破片が飛んだ。


「走れ」リアが言った。


走った。

神殿全体が鳴っていた。壁の内側で何かが軋んでいた。床の亀裂が広がっていた。魔法陣の光が乱れていた。点滅していた。消えかけていた。


ミレナンが走りながら叫んだ。

「出口まで持ちません」

「距離的に絶対持ちません」


「持たせろ」リアが言った。

「持たせ方がわかりません」

「黙って走れ」

「走ってます」

シュウが横で笑った。笑いながら走っていた。

「毎回こうなるな」

「笑うな」エルクが言った。

「笑わないとやってられない」

天井からもう一枚、大きな石が落ちた。


ノクトが横を走り抜けた。速かった。四人より明らかに速かった。でも、先に逃げなかった。四人の速さに合わせていた。


「前だ」ノクトが言った。

前を見た。

通路の先が、崩れていた。


大きな石が積み重なっていた。天井が落ちていた。道が塞がれていた。

ミレナンが止まった。「やっぱり持ちませんでした」


「退け」

ノクトが前に出た。


両手を前に出した。黒い光が集まった。雷が走った。重力が圧縮されるような音がした。

瓦礫が吹き飛んだ。

一瞬だった。


積み重なった石が、砕けて通路の両側へ弾け飛んだ。道が開いた。

「行け」

シュウが走りながらノクトを見た。

「お前、敵だろ」

「死なれると困る」

「なんで」

ノクトは答えなかった。

走り続けた。

シュウがエルクに小声で言った。

「何考えてるんだあいつ」

「わからない」エルクが返した。「今は走れ」


走りながら、エルクは通路の壁を見た。

崩れていない部分に、まだ文字が残っていた。ミレナンが走りながら読もうとしていた。

「読むな」エルクが言った。

「でもここの文字が——」

「後で読め」

「後には崩れてます」

「諦めろ」

ミレナンが悔しそうな顔をしながら走り続けた。

広間に出た。


大型門衛兵を倒した広間だった。天井の亀裂が、さっきより広がっていた。床の魔法陣が消えかけていた。

そこに、何かがいた。

広間の中央に、何かがいた。

大きかった。


広間いっぱいに広がるほど大きかった。石と金属でできていた。形は人型だった。でも、これまでの門衛兵とは違った。これまでのものが人の大きさなら、これは神殿の大きさだった。天井に頭が届いていた。足が床に埋まっていた。それほど大きかった。


胸部に、核があった。

これまでのものより大きかった。光が強かった。青白い光ではなく、白い光だった。眩しかった。

全員が止まった。


ノクトが、珍しく少し間を置いた。

「面倒なものを起こしたな」

感情のない声だったが、いつもより少しだけ——何かがあった。


「何だあれは」シュウが言った。

「門番機兵だ」ノクトが言った。

「神殿最深部の最終防衛機構だ。こいつが動いたということは、神殿が終わりに近い」

「倒せるのか」

「一人では難しい」

「お前が難しいのか」

「難しい」ノクトが言った。淡々と言った。嘘をついている感じではなかった。


巨大な機兵が動いた。

腕を上げた。腕だけで通路の幅があった。降ろした。床が割れた。

「逃げるのか戦うのか」リアが大剣を構えながら言った。

「どちらも試みる、逃げながら削る」ノクトが言った。

「戦い方が雑だな」

「有効だ」


機兵が動いた。

速くはなかった。大きすぎて速く動けなかった。でも一歩の幅が大きかった。距離が詰まるのは速かった。

「散れ」エルクが言った。


四人が広間を走った。ノクトが反対側へ回った。

機兵の足が広間の床に落ちた。石畳が砕けた。穴が開いた。

「ミレナン」エルクが言った。

「何かわかるか。弱点でも構造でも」

ミレナンが機兵を見ながら走っていた。資料を出していた。走りながら資料を見ていた。

「これ、星門神殿の設計図に載っています。最終防衛機構の記述が——」ミレナンが叫んだ。

「何が書いてある」

「核が三つあります。胸部、背部、頭部です。ただし——」

機兵の腕が横に薙いだ。全員が伏せた。腕が頭上を通った。


「ただし、何だ」エルクが言った。

「核に直接攻撃しても駄目です。装甲が厚すぎます。核同士を共鳴させる必要があります」

「共鳴?」

「三つの核に同時に衝撃を与えると、共鳴して過負荷が起きます。それで止まります」

「同時に三箇所か」

「同時か、ほぼ同時か。ただし——胸部と背部は同じ位置から攻撃できません。反対側から同時に当てる必要があります」


シュウが叫んだ。「聞こえた。ミレナン、頭部はどこだ」

「一番上の光っている部分です」

「わかった」

シュウが《レプリカ》を発動した。


作戦が組み上がった。

言葉にした作戦ではなかった。

全員が同時に理解した。

ノクトが機兵の背後へ回った。雷を溜め始めた。

リアが機兵の正面へ出た。大剣を構えた。

シュウが右側に走り込んだ。複製した鎖を持った。

ミレナンが安全な場所へ後退した。

エルクが《残響》を絞った。

機兵の動きの気配が来た。


次に右腕が動く。

「シュウ、右腕が来る。躱した後に頭部へ投擲しろ」

シュウが頷いた。

「リア、俺が合図したら正面の核を全力で叩け。ノクトと同時になる」

リアが頷いた。


機兵の右腕が動いた。

シュウが躱した。複製した槍を投げた。頭部の核に当たった。核が光った。

「今だ」


リアが踏み込んだ。全力で大剣を正面の核に叩き込んだ。

同時に、ノクトの雷が背部の核に当たった。


三つの核が同時に光った。

光が増した。

増した。

増した。


機兵全体が光に包まれた。

轟音がした。

機兵が止まった。

光が消えた。


巨大な体が、ゆっくりと崩れた。

崩れながら、広間の壁に倒れた。壁が崩れた。天井が落ちた。


「走れ」ノクトが言った。


走った。

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