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最強黒猫の絶対防御と、無自覚バフの歌姫 〜心を閉ざした少女は、極上の音色で異世界を無双(癒や)します〜  作者: ぱすた屋さん


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第33話:奇跡の光。届けたい相手に降り注ぐ、極上の癒やしと力(バフ)

 


「……痛みが、ない。傷が……全部塞がっていく……!?」


 ガルドさんの震える声が、信じられないものを見るような驚愕と共に戦場に響いた。


 私の声とギターから放たれた銀色の光の粒子は、まるで意思を持っているかのように、傷ついた冒険者たちのもとへ真っ直ぐに飛んでいき、その体に吸い込まれていく。

 すると、彼らの体を包み込んでいた淡い光が、内側から溢れ出すような力強い黄金のオーラへと変わっていったのだ。


 ありえない方向に折れ曲がっていたガルドさんの左腕は、瞬きする間に正しい位置へと戻り、赤黒く濡れていた腹部の致命傷は、傷跡一つ残さず完全に塞がっていた。


 それだけではない。

 ガルドさんの周囲で、ピクリとも動かなくなっていた数人の冒険者たちが、次々と「う、おお……?」と呻き声を上げながら身を起こし始めたのだ。


「俺は……腹を、オークに抉られたはずじゃ……」

「息が、苦しくない。それどころか、体が羽みたいに軽いぞ!?」


 血の海に沈んでいたはずの彼らは、自分の体をペタペタと触り、驚きに目を見開いている。

 欠損していた肉体が再生し、枯渇していたはずの体力や魔力までもが、限界を超えて底上げされているのだ。


 私は瓦礫の上で、さらに力強くギターをかき鳴らした。

 歌うたびに、弾くたびに、私の中に眠っていた不思議な力が泉のように湧き上がってくるのが分かる。


(もっと。もっと、みんなに届け……!)


 私は声を張り上げた。

 言葉の壁なんて関係ない。私の「死なないで」「立ち上がって」という強烈な願いが、銀糸蜘蛛の弦の『精神安定の魔力』をブースターにして、純度百パーセントの治癒魔法へと変換されている。


 しかも、この光の粒子は、目の前で唸り声を上げている魔物の群れには一切降り注いでいなかった。


『……素晴らしい。お前の音色は、対象を完全に選別しているな』


 足元で、黒猫が誇らしげに琥珀色の瞳を細めていた。


『ただの無差別な治癒魔法ではない。お前が「助けたい」と強く願った相手にだけ作用し、敵対する魔物には一切の恩恵を与えない、究極の支援魔法だ』


 黒猫は、黄金のオーラに包まれて戸惑うガルドさんたちを見下ろして、フンと鼻を鳴らした。


『さあ、筋肉ダルマども。俺の専属楽士が、お前らに極上のマタタビ……もとい、極上の『継続回復リジェネ』と『全能力強化バフ』を与えてやったぞ。……その光を浴びている間、お前らは絶対に死なん』


 黒猫の言葉の意味を本能で理解したのか、ガルドさんがゆっくりと立ち上がった。


「……お嬢ちゃん。この奇跡は、あんたの……あんたの『歌』が起こしてくれたのか」


 ガルドさんは、瓦礫の上で光に包まれながらギターを弾き続ける私を見上げ、顔をくしゃくしゃに歪めた。

 その目からは、大粒の涙が溢れ出している。

 今までずっと声を出すことを恐れていた私が、自分たちを救うために、戦場のど真ん中で声を張り上げている。その事実が、歴戦の冒険者である彼の心を激しく揺さぶっていた。


「……あぁ、なんてこった。俺たちは、こんなに小さくて優しいお嬢ちゃんに、命を拾われちまった」


 ガルドさんは、自分の足元に転がっていた、刃こぼれだらけの巨大な両手剣を拾い上げた。

 今までなら、両手でようやく持ち上げていたその重い鉄塊を。

 彼はなんと、再生した左腕の『片手』だけで、羽のように軽々と持ち上げてみせたのだ。


「ウガァァァァァッ!!」


 事態を理解できないロック・トロールが、再び邪魔な結界ごと私をすり潰そうと、苛立ちに任せて巨大な拳を振り下ろしてきた。


 先ほどなら、結界に頼るしかなかった絶望的な一撃。

 だが。


「……俺たちの歌姫の頭上に、汚え岩を落とすんじゃねえぞ、化け物ォォッ!!」


 ガルドさんが、凄まじい脚力で石畳を蹴り砕き、私とトロールの間に割り込んだ。


 ドゴォォォォンッ!!


 爆発音が響く。

 だが、吹き飛んだのはガルドさんではなかった。

 彼が片手で無造作に振り上げた大剣が、トロールの丸太のような腕を下から完全に弾き返し、あろうことか、その硬い岩の皮膚ごと腕を天高くカチ上げてしまったのだ。


「ギ、ガァァッ!?」


 自分の膂力が、ちっぽけな人間に負けた。

 その信じられない現実に、トロールが体勢を崩してよろめく。


「ははっ……嘘だろ。力が、力が無限に湧いてきやがる!」


 ガルドさんは、自分の手のひらを見つめ、獰猛な笑みを浮かべた。

 その背中には、黄金のオーラが立ち昇っている。

 私のギターの音が続く限り、彼の筋肉は疲労を知らず、どれだけ傷ついても瞬時に回復していく、まさに『無敵』の状態だった。


「おい野郎ども! 見たか! お嬢ちゃんが、俺たちに極上の魔法をかけてくれたぞ!!」


 ガルドさんが、背後で立ち上がった仲間たちに向かって咆哮した。


「傷は一瞬で治る! 力は普段の何倍も出る! 後ろで歌ってくれてる俺たちの恩人に、これ以上無様な背中を見せられるかァッ!!」


「「「おおおおおォォォォォッ!!!」」」


 数分前まで死にかけていた冒険者たちが、地鳴りのような雄叫びを上げて一斉に武器を構えた。

 その瞳には、絶望の欠片もない。

 あるのは、圧倒的な力への歓喜と、自分たちを救ってくれた少女への絶対的な忠誠心だけだ。


 ♪——『さあ、顔を上げて』

 ♪——『あなたの本当の強さを、見せて!』


 私は、彼らの背中をさらに強く押すように、アップテンポなリズムへとコード進行を切り替え、高らかに歌い上げた。


 光の粒子が、彼らの武器にまでエンチャントされるように宿り、銀色の軌跡を描く。


 反撃の狼煙が、上がった。

 数万の魔物の群れに向かって、無敵状態となった数人の冒険者たちが、怒涛の勢いで雪崩れ込んでいったのだった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


本作を応援してくださる方は、ぜひブックマークや下の評価【☆☆☆☆☆】をいただけますと幸いです。


次回お楽しみに。

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