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あちらの自分はシュウサクとどんな話をしているのだろうか。異性で傷ついた心を舐めあっているのだろうか。カンタは野郎二人が会話をしている所を想像してみた。一人はもやしのような中年で、もう一人はガッチムチタイプのだみ声青年である。そんな輩が中学生のような恋愛トークを繰り広げているのだ。なかなか臭い立ちそうな場面だった。その香りに頭がやられていると、新しいコーヒーがやってきた。カンタは店主に礼をいい席に戻った。入れ替わりで店主が窓際へいき、カーテンをめくって外を眺めた。相変わらずやむ気配がないですね、と店主は言った。こんなに降ったのは何年ぶりですかね、とひとり言のように続けた。少なくともカンタが上京してからこのかた、ここまで降ったのは初めてである。テレビでは数年おきに大雪予報が出して大騒ぎをしているが、それが的中したことはない。毎回散らつく程度で、積もったって数センチである。それが今では路地裏など人通りの少ない所ではアスファルトの上がまっ白に染まっていた。上京してきて二十年近くなりますが記憶にないですね、カンタがそういうと、店主は大きくうなずいた。三十年くらい前ですかね、ニ十センチも積もったことがありましたが、その時もこんな感じの降り方でしたね。明日の朝は雪かきで大変だ。スコップはどこにいったかな、とひとり言を言いながら店主は店の奥に消えていった。店内に一人残されたカンタは、もう一度窓の前まで行った。そのまま茫然と窓の外を眺めていると、どこからともなく妻の声が聞こえたような気がた。その声は自分を呼んでいた。振り返り、辺りを見回す。当然誰も居ない。幻聴である。雪に呼ばれた気がするというベタな展開にカンタは苦笑いを浮かべた。自分は疲れているのだ。ふとカンタは降りしきる雪に思いを託して一句読んでみたい気分になった。カンタは少し考えてみたが、すぐに諦めてため息をついた。詩情のない自分には五七五の短い語句すら浮かんでこないのだ。代わりに自分を呼ぶ妻の声が一段と大きくなったような気がした。あの鈴を転がすような声が耳にまとわりついて離れない。カンタは耳を塞いで目を閉じた。そしてそのまま叫び出したい衝動にかられた。押し寄せる感情の波はカンタの心をそのままさらおうとしてくるが、カンタは口を閉じてじっと耐えた。妻の声なんてまやかしで、自分を呼んでいる筈はないのだ。仮に妻が呼ぶのだとしたら、自分ではなく愛人の名である筈である。

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