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どちらかといえば無宗教で、これといった宗教観も持ち合わせておらず、普段は自分の死んだ後のことなんて知ったことかくらい考えているカンタであったが、あんな終わりはあんまりといえばあんまりであった。ジャック・ニコルソンのような熱演なんて出来ないカンタだ、馬鹿面さらして凍りつくのが落ちである。そういえば、とカンタは聞いてみた。店先に看板が掛かってないのはどいうわけなのかと。それね、と店主はいって入り口をさした。夕方から風が強くなってきたので、飛ばされてはあれだと店の中に入れたのだという。見ると確かに畳まれた立て看板が壁にたてかけてあった。現実とは実につまらないものである。不思議な本も無ければ、煩瑣な日常を投げ出して逃げ出せる異世界なんてこの世には用意されていないのだ。少なくともカンタの人生にそんなものはなかった。浮気性の妻と若い燕と薄情な部下のいるこの世界を惨めにもがきながら進むしかなさそうだった。問題は、どこに進んでいいのか分からなというい事だった。カンタの羅針盤はとっくに壊れ、メインマストは浮気という暴風にいとも簡単にへし折られていた。箱舟さくら丸だか幸福号だか文房具船だか、そんな船ほどの強度も無いカンタの人生号は、今にも自壊しそうなほど竜骨が軋みをあげていて、あとは運を天に任せてただ漂うばかりであった。いったいなんだってこんな状況になってしまったのだ。因果応報という言葉があるが、はたして自分はそこまで悪いことをしてきただろうか。そりゃ人並みに嘘もついてきたし誰かを恨んだことだってあった。だからといって、こんな目にあわされる謂れはないではないか。勿論カンタも世の家庭事情に精通しているわけでも無いので、もしかしたら夫婦の間には大なり小なり似たような物事で溢れているのかもしれないが、それでもここまで極端なのはレアケースではなかろうか。部下の仕打ちも仕打ちだ。この前だって色々とフォローをしてやったではないか。クライアントを間違うという昨今のコンプライアンスの手前、下手すりゃ一発で首が飛びそうなところを自分の機転で回避させたではないか。そんなもろもろのポイントバックが現在カンタの置かれている状況だなんて、神もヘッタクレもありゃしないじゃないか。店主と笑顔で話すカンタの裏ではそんな思いが渦巻いていた。どうすることが正解なのかカンタには分らなかった。相変わらずの支離滅裂な思考でこの世を呪い、自縄自縛にとらわれてもがいていた。何はともあれ寝床を探すか、大人しく家へ帰って家族会議と洒落こもうかなんていう選択肢ははこれっぽっちも浮かばなかった。店主がやっと行ってくれた。カンタは真っ赤になった指を暖房の風で温めながら痒さと戦った。

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