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しかし抗議をしたくてもその当人は音信不通ときている。まったく、酷い話である。先ほどからカンタの頭の片隅に残った冷静な自分から先に怒鳴り散らして電話を切ったのはどこのどいつだという抗議を受けているのだが、それは無視することにして、時には棚上げも必要だろうとカンタはシュウサクの仕打ちを一旦置いておくことにした。もう一度住所を確かめ、スマホの指示どおりに路地裏を歩いてみることにした。それにしても、いやに古臭い町並みである。鮨詰めのビルやマンションの壁は薄汚れ、頭の上に張り巡らされた電線は、雪交じりの風に揺れていた。神保町ってこんなところだったかな、とカンタは疑念に襲われた。記憶の中の神保町は綺麗とは言い難いまでももう少しまともなところであった。しかしカンタも働き出してからはここには来ていない。仕事が忙しくて本とは無縁の生活になってしまった。思い出は常に美しいというし、当時からこの程度だったのかもしれない。結局のところ、カンタもそれだけ歳を取ったのだ。御多分に漏れずカンタも都合よく過去を作り変えているのだ。なんてことを考えていると行き止まりに突きあたった。扉の前に置かれたゴミバケツには雪が積もり、どこからか小便の臭いが漂っていた。またである。辺りを見渡してみてもビルばかりでそれらしい建物はない。どうなってんだとスマホを見れば、引きかえせとなっている。機械に文句を言っても詮無いことなので、大人しく従ってみると大道りに戻ってしまった。もしやこの寒さでGPS機能でも壊れてしまったのかとも思ったが、確かに眼の前には書泉グランデが表示されていてその心配はなさそうだ。とすると……とするとである。機械音痴のカンタには何故路地裏に入ると案内が出鱈目になるのか分らなかった。狐につままれた気分である。そしてシュウサクからの電話は一向にきやしないとくる。手鼻をかむと、カンタは途方に暮れた。ここまで来てしまえばこっちのもんだと考えていた自分は余りにも浅はかだった。そのまま突っ立っていると寒いので大通りを行ったり来たりしながら打開策を探した。学生時代によく通った古本屋が潰れているのを発見してアンニュイ気分に襲われながら、シュウサクへのコンタクト手段を模索した。しかし寒さと疲労と心労で疲れたカンタの頭ではそれも叶わず、ただ大通りを行ったり来たりするばかりであった。無駄に体力を消耗したところでひとまず屋根の下に入ろうという結論に達した。地区が変わったのだ、地区が変われば住民の傾向も変わる、コンビニやファストフード店の一つくらい開いているだろうとカンタは鼻水を垂らしながら天に祈った。

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