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そう思うと、妻が哀れであった。そんな行為に走らせたのは、他でもない自分で、自分がもっとしっかりしていれば、結果も違っていたのかもしれない。やっぱり今できる最善な策は、家へ帰り、二人を起こし、話し合いの場をもつことだろう。お互いが腹を割って話せば、解決への道も見つかるかもしれない。なんてこのチョコレート(さっき買った)よりも甘っちょろいことを考えてしまった自分に、カンタはぺっと唾を吐いた。何が解決への道だ、そんなものを模索するのは妻の方であって、自分がそんなことをする道理なんてこれっぽっちもない。大体妻のせいで自分がこんな目にあってるのに、何故慮ってやらねばならないのだ。雪の降る寒い寒い夜に亭主を路上にほっぽりだしといて、自分たちは温かい部屋でぐーぐー眠っている始末である。再び燃え上がった怒りに、カンタは残りのチョコレートを一気に頬張った。ビスケットの柄のついたキノコ形のチョコレートは案外噛み辛く、おまけにビスケットのせいで口中の水分を取られむせこんでしまった。慌ててキャリーバックからお茶を取り出し飲んだ。心配そうに声を掛けてきた店員には愛想よく受け答えをし、久々に触れるひとの優しさに涙がにじみ、まさに掃き溜めに鶴とはこのことだとカンタは思った。が、よく見ると店員はモップを持っていて、どうやら店内の掃除をする時間のようだ。そうすると、つまるところ、畢竟、いつまでも飲食コーナーにいるカンタが邪魔だということだろうか? オーケー店員さん、こちらももう用はない。十分体は温まった(わけではないが)、そろそろ巣立ちの時期だという事だ。カンタはゴミ箱にお菓子の箱を放り投げると、的を外して床に転がったところを店員が拾って捨てた。バツの悪くなったカンタはキャリーバックを掴むとすごすごと退店した。花の栄光、草原の輝き、ハワイの潮騒、とカンタは残して自動ドアをくぐると、雪の勢いはいくぶん弱っていた。重畳、いい傾向である。この調子でいい傾向を拾い集めていこう。例えば先ほどとはうって変わって何故かぬかるんだこの歩道も、キャリーバックを引いて歩けるようになったと考えればいいではないか。気温が高くなったのだ。当然気温が高くなったことにより雪がみぞれに変わったことも重畳である。カンタはコンビニに引き返すとビニール傘を買った。これで顔に叩きつけてくる雪は無くなった。何もかもがカンタの都合のいい方に転がっていた。一足ごとに跳ねて裾を汚す泥水も、可愛い物であった。




