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駅前を外れると街は妙に暗く感じた。この雪で店はどこも早めにしめているようだった。途中途中でファストフード店にでもよって暖を取ろうと目論んでいたカンタには誤算だった。ときおり思い出したかのように吹き荒れるビル風に雪を投げつけられ、カンタの足は止まった。ただでさえ重たい荷物を抱えているというのに、これではろくに前へ進めない。それに止まると途端に汗が冷えて、カンタの体は芯の芯まで凍える始末で、禄に休憩も出来なかった。カンタは信号待ちをしていたタクシーを恨めしく見つめた。車内は暖房が効いていて、さぞ快適だろう。運転手は後ろの客と談笑しているようで、その笑顔がカンタには自分をあざ笑っているかのように感じた。信号が変わるとタクシーはカンタを残して走り去った。残されたカンタはクソッと呟き、やってくるタクシーを睨みつけたが、どれもこれも空車の二文字はなかった。運賃はこちらが出すので、相乗りさせてくれと願ってみるが、そんなものが通じるほど世の中は甘くなく、いたずらにカンタの体が冷えただけだった。肩に積りはじめた雪を払い落とし、カンタはふたたび歩き出した。そのうち意識が朦朧としてきて、目の前にちらつくのが雪なのか虫なのか飛蚊症なのか光視症なのか分らなくなってきた。このままではまずいと危機感を抱いたカンタは、何か考えて気を紛らわすことにした。すると頭の中で不敵なベースがなり始め、控えめなドラムまで加わったかと思うと、それは感傷的な足音にかわり、向こうから四人の男が歩いてきた。やあ、それで? 何があった? 今度は何があった? と英語で聞いてくるので、カンタは俺には英語が出来ないよと頭を振った。そんなことはいいから、五マイルも歩いてきて退屈なんだというので、一マイルは何キロときくと、インペリアルユニット以外分らないよとのこと。じゃあお相子だねという事で手を打ち、ラ、ラララ、ユリシーズと一緒に歌っいると、四人組が自分の手を掴んでくるので、カンタは仕方なくついていくことにした。ハイになろうよ、ハイになろうよと掻きたてられても、こんな寒くちゃハイにはなれなくて、新しい道を見つけたんだと得意げに言われても、新しい道よりも暖かい部屋が欲しいカンタであった。このままこいつらに付いていっても、きっと碌な事にならないぞと本能が告げていた。それとなく脇道にそれようとするカンタを、四人組は見逃さなかった。やめてくれ、笑わせるなよ、お前らの同情なんていらないんだとカンタは四人組の手を振りほどこうとするが、新しい道を見つける、新しい道を見つけるんだベイビーとこちらの話を聞いてくれない。




