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カンタははブルブル震え、歯をガチガチいわせながらシュウサクの長話が終わるのを待っていたが、これがいつまで経っても終わりそうにない。終いには最近調子が悪いオフィスの給湯器の文句までいいはじめたので、俺に言うなと何度も口から出そうになたが、カンタは必死に耐えて機会を待った。シュウサクも喋りつかれたのだろう、一息ついたところを見計らってカンタは口をはさんだ。だが寒さはカンタの口を張りつかせ、うまく喋ることが出来なかった。あっあっあっ……というカンタに、シュウサクは何ですかと聞きかえしてきた。カンタは深呼吸をし、やっと喋りはじめたはいいが、あからさまな猫なで声に自分でも気がついて咳払いをした。この後の予定はなんだとシュウサクに聞くと、酒飲んで寝るだけですよと相変わらずのだみ声で答えるので、部下と上司の親睦を深めるためにたまには一緒に飲まないかと誘ってみる。数秒の沈黙。当たり前である。普段のカンタならば口が裂けても言わないセリフだ。大方冗談か否か判断に迷い、こんなことを言い出したこちらの真意を測りかねているのだろう。沈黙の長さがシュウサクの戸惑い証明していた。隙を与えて断る算段をたてられても困るので、そうはいくかとカンタは矢継ぎ早に適当なことを並べた。お前ももうすぐ三十になるし、人生にだって迷う時期だ、先輩の話を聞いても罰は当たらないぞと、現在進行形で生き迷っている自分がいうべきではないセリフまで吐かせたこいつの家に是が非でも転がり込んでやると、なかばカンタも目的がよく分からなくなってきたところで、シュウサクは野太く明るい笑い声をあげた。珍しく冗談だと思ったのだろう、気軽にいいですよと食いついてきたので、馬鹿め! とカンタは心の中で悪態をついた。じゃあさっそくと住所を聞いてくるカンタに、シュウサクはあからさまに困っていた。家で飲むんですか? というシュウサクに、イエスと答え、マジですか? というので、マジですとカンタはスマホを頬と肩で挟み、両手に手帳とボールペンをもった。でも散らかってるし狭いし人を呼ぶような場所じゃないんですよと、この期に及んでグダグダ言い訳をしてくるシュウサクに、住所はとカンタは上司の圧力でもって再度繰り返す。世間ではそれをパワハラというのかもしれないが、そんなものに構ってはいられない。やっとねぐらを確保できたのだ。罰なら後で受け入れよう。渋々といった体のシュウサクから神保町のマンションの名前を聞きだし、手帳にメモをする。幸いここから歩いていけない距離ではない。

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