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乗り出したはいいが、マンションを出てすぐに顔面に叩きつけられ雪に、さっそくカンタの決心は揺らいだ。払ってもすぐに新参者がやってきて、顔を濡らしていくこの状況に、カンタはしばし途方に暮れた。やっぱり部屋に戻るかと、電気の消えた我が家をちらっと眺め、そこで寝ている二人に思いをはせ、イラっとしたカンタは歩き出した。とんだ門出だった。時折襟元に紛れ込む雪片に鳥肌をたてながら、男一代、おーとーこだったーらーと再度カンタは口ずさみつつ足を前にすすめた。中途半端に積もった雪に足を取られ、何度も転びそうになった。おまけにキャリーバックのタイヤに雪がはさまり、邪魔してくる始末だ。それでも頑張って歩き、大通りにでた。マンションからでは分からなかったが、相変わらず歩道には帰宅難民で溢れていた。カンタもその群れに紛れ込んで駅へ戻ってみたがこれはミステイク。当たり前だが電車は動かず、タクシー一つ捕まらない。一か八かで目についたビジネスホテルに飛び込んでみるが、やっぱり満室だった。背に腹は代えられないと多少値の張る所にも行ってみたが、そこも駄目だった。マンガ喫茶や怪しいビデオ屋の前には長蛇の列が出来ていて、見た瞬間に並ぶ気力をそがれてしまった。こんな時、知り合いの少なさが身に染みた。働き出してからは友達と呼べるような人間とは出会えず、カンタ自身も開き直ってそういう付き合いを避けてきた。妻と結婚してからは多少軟化したものの、それでも本質的にはやさぐれたままだった。いざというとき頼れる友人を持つことは幸せな事である。カンタは自分の人生に後悔したところで、そもそも今回の責任は自分にはない事に気づき、不当な非難だと抗議した。だがいくら抗議したところで温かい部屋で眠り続ける相手には届かず、このままでは寒いのでビルとビルの間に出来た微かな隙間に避難した。こうなる運命にあるのなら、愛人くらい囲っとけばよかったと、そんな甲斐性は現在から過去未来に至るまで、金輪際持てる可能性なんてこれっぽっちも無いカンタは後悔した。男三十五歳根無し草、こんな状況なのでありえない仮定を前提に、後悔することくらいは許されるだろとカンタは思った。愛人一人抱えられないと一宿の恩すら恵んでもらえないのかと、キャリーバック片手に雪に打たれて呆然としていると、ポッケのスマホが鳴った。カンタは間髪入れずに取った。愛する妻がこの度の不祥事に心を入れ替えて謝罪する気になったのかと期待したが、聞こえてきたのは恐ろしいだみ声だった。

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