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玄関ロビー降りたったカンタは、キャリーバックの持ち手を畳み、それを椅子代わりに座った。久しぶりに一息付けた気がして、カンタはしばし黄昏た。そのまま気を抜くと、意識が遠のき、どこかに飛んでいってしまいそうで、こりゃいかんと自分に喝を入れた。やはりあの寝室での光景は、自分には刺激が強すぎて、処理できるものではなかったのだろう。そりゃ最愛の妻があんな状況になってれば普通おかしくなるもんだが、それは自分にも当てはまるようで、気づかないうちに蝕まれていたのだ。今は何時だと腕時計を見ると、まだ十一時ニ十分だった。寝室からの一件を合わせると、あれだけのことがあったのに、まだニ十分なのかと驚いていると、窓の外、随分と雪が吹き荒れてる光景が目についた。気づかぬうちに本降りになったようで、室内灯に照らされた雪は、今では横殴りに降っていた。こんな中をどこに行けば……スマホを取り出して周辺のホテルを調べてみるが、どこも満室でカンタの泊まれそうなところはなかった。この雪である、みんな考えることは同じようで、帰宅を諦めた金のあるリーマンは多少値が貼ろうとも寝床を確保したのだろう。庶民の味方のカプセルホテルですら満室の有様だ。カンタは郵便受けの隣に置かれたゴムの木を見た。ゴムの木の葉は乾いて色がくすみ、手入れが行き届いていないようだった。酷い話だとカンタは思った。置いたからにはちゃんと最後まで面倒を見るべきなのだ。埃をかぶった元気のない植物を放置していいなんて道理はどこにもない。だがそんなか弱い植物にすら、自分はこうなってみるまで気づかなかったのだ。毎日この子の前を前を通り過ぎていたというのに。他人を責められる謂れなんてカンタにはどこにもなかった。所詮は同族で、弱者を虐げていた側なのだ。まあそれはそれとして、外は吹雪いていた。こんな夜に当てもなく飛び出していくなんて、正気の沙汰ではない。だけどこのままここに座っている訳にもいかない。先ほどからこの雪の中帰宅したリーマンが続々やってきて、カンタを横目に訝しんだ様子でエレベーターに乗り込んでいるのだ。この先妻との関係がどうなるにせよ、もう少しだけここに住まなければならないし、やっぱり変な噂を立てられては困った。スマホを弄る指をとめ、ホテル探しを諦めたカンタは、こうなりゃなるようになるさと重い腰(本当に重い腰)をあげた。おーとーこだったらぁーと鼻歌を歌いながら、当てもない羇旅に乗り出した。

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