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どうやらセーフだったようで一安心し、こんなところで動けなくなったらどうなるんだと恐怖し、ためしにそうなった所を想像してみることにして、廊下でうずくまった自分は騒ぎ立て、驚いて出てきたあの二人の手を借りて部屋に連れ込まれ、さきほどまで愛の営みが行われていたであろうベッドに寝かされ、こちらが動けないのをいいことに適当な言い訳を散々並べたてられ、見たくもない小芝居を目の前で繰り広げられ、げんなりした自分は言葉を無くし、怒る気力すら削がれ、解体を待つ屠所の羊のように気力の失った目で妻を見つめ、それでも視界に入る愛人にはありったけの呪詛を送り、そうなるとやっぱり怒る気力は残っているじゃないかと気づいて、文句の一つでも言ってやろうかと頭を働かせてみても、一つの言葉が浮かんでこず、痛む腰を抱えて、唸り、歯を食いしばり、冷や汗をかいて、妻の持ってきたロキソニンを飲んで、薬の効くのを待って、その間にもやまない小芝居に、いい加減止めろと叫んでみても、それが声となってちゃんと出たのかすら分からず、傍から見たら腰の痛みに耐えかねて唸っただけのように見えたかもしれないし、ちゃんと声となって出てても無視しているだけかもしれないし、妻と愛人はそんな自分を残して居間へ行き、そこで別れのキスでもして、まったく都合の悪い時に帰って来たわねと自分に不当な文句を言い、共通の敵が出来たことで二人の絆がさらに深まるのはラ・パリスの真理よろしくラ・パリス将軍は死ぬ十五分前まで生きていたくらい自明の理で、こんな事を考えている自分がいい加減馬鹿らしくなってきて、とりあえず腰をいわさなかったのは良かったと安堵し、短気は損気だと自分に言い聞かせ、だいたいキャリーバックを壊したところで何の意味もないじゃないかと、先ほどのカッコウ時計同様無意味な行動に出ていた自分に苦笑いをし、狂気とは即ち、同じことを繰り返し行い、違う結果を求めることであるというアインシュタインの含蓄のある言葉を思い出し、それでもこちらにはこちらの理があるんだと反駁してみても、狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なりという徒然草の一説が浮かんできて、鎌倉時代のオッサンも余計なことを書き残しやがったなと文句をつけてみて、だけどその通りだなと納得している自分が嫌で、キャリーバックを引きずってエレベーターの前までやってきても、何かやり残したことがあるのではないかと部屋の前まで引き返し、

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