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嘘じゃない本当の後日談  作者: シヲンヌ
本編
16/22

16

妙に長くなったので、キリの良いところ分割しました。

カリカリと、ペンの走る音が部屋に響く。

手元を照らす陽光がペンの金属部分を淡く反射していた。

ペースを落とさず、そのまま自分の名前を署名する。

ペンを置いた手で右側に置いてある認印を取ろうとして、空振った。不思議に思って、認印があるはずの場所へ視線を移す。認印は跡形もなかった。

俺は唸った。席から立つ。

「っかしいなぁ。何処行ったんだ?」


俺は周囲をぐるりと見渡す。認印らしきものは見えない。

続いて机の上を探す。インクとペンと書類の束以外に見えるものがない。

おかしいな。さっきまで使ってたから、片付けてないはずなんだが。

机の引き出し類を開けても、やっぱり目的のものはなかった。そのまま椅子を後ろへ除ける。机の下へ身をかがめて、目を皿にして探す。




認印って言っても、先程まで使っていたのはまぁまぁ大きいサイズだ。

厚さは5cm、直径10cmくらいの円形で判子に近い形状をしている。握りこぶしを思い浮かべてもらえば、想像できるか?朱肉の上に載せて、色をつけてから押すのだ。なお朱肉はちゃんと机の上にある。

丸っこいので机の上からすっとんとんと落ちてもおかしくない。とはいえ普通の認印に比べれば段違いで大きいから、すぐ見つけやすい。見つけやすいと思っていたんだけど、なぁ。




眉間に皺が寄る。ここにもない。息を吐くと大きなため息になった。

本気(マジ)で何処へ行ったんだろう。

紛失したらヤバいんだよな、俺の名前って少ないし。

ついでに俺はそれなりに偉い立場にいるので、悪用されると事後処理が面倒だ。

書類とかを止めること事態は簡単である。だけど動いた人材とか物事を収束させるのは、中々大変だろ?止める頃には色んな奴が関わっているだろうし。


本格的に探そうと机の下から出て、立とうとしたとき。

パサリと何か薄っぺらいもので乱雑に頭が触れられた。なんだなんだ。

見るとそれは書類の束だった。だが書いてあった文字は俺のものではない。

勿論名前も。

俺は書類を持っている存在を見る。

俺が存在を認知したのを確認すると、そいつはおおらかな声で挨拶した。

「提出しに来たぞ」

「どうも。じゃあどけてくれ、デューク」

そう返すとデューク=アブラヒムこと、デュークは笑って書類を手元に戻す。

ウインクする脳天気さに恨めしくなり、俺は親友をじとりと見た。





「ふーん、良いんじゃね?じゃあ押しとくわ」

「ありがとうございまーす」

デュークから書類を受け取り、さっと確認して認印を押した。

デュークは満面の笑みを浮かべる。


認印はデュークが持っていた。正確には拾ってくれていた。なんでも俺の書斎のある廊下の隅に落ちていたらしい。確かに探していたとき、書斎のドアは全開だった。机の上から落ちたという俺の予想は当たっていたわけだ。

部屋の換気にとドアを開けていたのが災いした。

でも拾ってくれたのがデュークで良かったと思う。俺の親友は何やってんだよと笑っても、不正に利用しようとなんて絶対にしないからだ。

今?ドアはびっちりと閉めてある。だってもう換気は十分だろ。




「そういえば、またお前なんか拾ったんだって?」

天気の話をするかのようにデュークが話題をもたらす。

ドアから意識が戻り、俺は親友を見た。

「何かって、何だ?」

「えー?自分で連れてきといてそれかよ反応」

やれやれと肩をすくめる親友を無視して、俺は考えた。

連れてきといて、と言われても困る。

思い当たる事象が多すぎて、親友の指す対象が特定できない。一体どれのことだ?


とりあえず全部言ってみるか。

「んー、それってぽっと出の生意気な鳥共(ども)を一斉検挙且つ一斉屠(と)殺したこと?それとも鳥共が不正に所持してた奴隷を連れてきて、疑似ハローワーク開いて希望のところへ就職させたこと?それとも」

「小さい鷹の坊主を連れてきたことです龍禅サン」

「あぁそっちか、俺の管轄の孤児院に預けたぜ」



言葉を割り込ませたデュークに俺はうんうん頷く。やっと納得した。特定できずにもやもやと胸中に滞在していた不快感が一掃される。気分爽快。

「いや待ってくれ疑似ハローワークってどういうことだ、俺聞いてないぞ?!そもそもお前あれを『屠殺』って色々酷くないか?というか、そういえばあの日のメシって鶏肉だったような?いやまさか、まさか、な。あぁもう今の言葉で色々追求したいことが増えたッ!」

しかしデュークはパニックになった。今も頭を掻きながらわめいている。俺としては一人劇を見ている気分だ。独り言ならもう少し小さい声で言えば良いのにな。


俺はまた椅子から立った。側にある上着かけから外行きのコートを取る。

手には先程まで記入及び捺印をした書類がある。

その中から数枚を抜き取って、未だ興奮状態の親友に渡す。デュークは少しの間、目を瞬(しばたた)せてから、呆けた顔で俺を見た。

「何これ?」

「お前宛ての報告書。事後報告形式で監査通過済みだから、絶対に覆せないけど」

「あっサンキュー」

いぶかしげな表情が一転し、ウキウキしながらデュークは書類確認に移っていった。今にも鼻歌が聞こえてきそうくらいに上機嫌だ。相も変わらず切り替えの早いことで。そこがこの親友の良いところだけどな。

「じゃあ俺は外回ってくるから」



デュークの生返事を聞き流しつつ、俺はドアへ向かう。ドアノブを引き、開ける。そして同時に書斎の鍵を、ポケットから出した。廊下に出てから、俺は静かに部屋の鍵を鍵穴へ入れる。ついに扉を閉めようとしたときだ。

デュークに呼び止められた。

俺が短く返事を返すと、デュークは1枚の紙をかざした。

「なぁ、これ減給通知って書いてあるんだけど。もしかして俺の見間違い?」

俺は真面目な顔を作って、紙を見た。次に笑いつつも困惑を隠そうとしないデュークを見る。続いて俺は、軽く鼻を鳴らして、にっこりと微笑んだ。そうして俺は、勢いよくドアを閉める。


瞬時に鍵をかけると、全速力で書斎から逃走した。

















次回予告「もう少しだけ続きます」

リュ-「終わる終わる詐欺は読者を逃すだけだぞ」

デューク「あのリュ-さん減給って一体、あの、俺何かやったっけーッッ!?」

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