序 元筆頭探索者かく語りぬ
前章までのあらすじ
地下迷宮の攻略を開始したケンカイ達。
海で知り合ったユッキ、再開したメイを仲間に加えて迷宮の攻略を行うも21階層への通路が見つからない日が続いていた。
だが、探索者の店で知り合った鋼鉄の盾が偶然にも、21階層への通路の発見に成功する。だが、発見した時の罠によって遭難してしまう鋼鉄の盾。
全滅間際の窮地に駆け付けたのはケンカイ達・海熊の銛だった。
そして、21階層を発見したことで、迷宮都市の探索者の店の序列が変わる騒動が発生する。
上級者専用探索者の店・白い黒犬亭の筆頭探索者となったケンカイ達は21階層の攻略に乗り出すのだった。
ここが、白い黒犬亭か。
聞いていたとおりのでかい店だな。
おい、おまえら、びびるんじゃねえぞ。俺達も雨の傘亭の筆頭探索者チームなんだ。
上級者専用だろうが知らねえが、これからは俺達がこの店のトップになるって気持ちじゃなきゃいけねえ。
なにしろ 、ここじゃあ、もの凄いお宝がわんさか出るってんだ。
雨の傘亭の店主がせっかく推薦してくれたんだ。
これで奮い立たなきゃ男がすたるってもんだ。
なーに、俺達ほどの手練がありゃあ、あっという間に一目置かれるって。
さあさあ、入るぞ。
ほら、行くぞ。いや、俺じゃねえよ。お前から入れ。偵察はお前の役目だろ。
ほら、あ、っ、いてえな。
いきなり扉をあけるんじゃねえ。ぶつかっちまったじゃ、ねえ、、か・・・
ああ、すみません。旦那。
いえいえ、前を見ていなかったのは、俺の方でして。
はい、さすが白い黒犬亭ですねえ。旦那のような大男、初めてみましたわ。
さぞかし名のある御仁では、え、鋼鉄の盾?
それって、あの、有名なチームの・・・
あわわわわ、大変、大変、申し訳ありませんでした。
お、俺達は、本日からこの店にお世話になる、元雨の傘亭の筆頭探索者チーム・春雨です。
俺がリーダーをやっています。
いや、まさか、いきなりこの店の筆頭の方にご迷惑を掛けるとは、面目ねえ話でして。
え、筆頭じゃない、ですか?
またまたご冗談を。鋼鉄の盾が21階層を見つけたって事は、俺達でも知ってますぜ。
地獄階層の発見者の旦那が筆頭でなくて、誰が筆頭だというんですかい?
海熊の銛?
いやですぜ、旦那。
それってただの都市伝説でしょう。
俺達の所属していた店は、ここから遠い所にあるから、こっちの事情には疎いですが、それって酔った連中がする出鱈目な与太話じゃありませんか。
どんな話を聞いたかって?
そりゃあ、荒唐無稽な話ですよ。
10台半ばの男女二人組みの話でして。
そんで、二人とも魔法使い。
たしか、迷宮の中に住んでいて、猫と鴎に変身して迷宮を彷徨ってるんですよね。
そして、少年の方は旦那みたいな大男の怪力持ちで、少女の方は妙齢の美女になったり、幼女になったりするとか。
少年は棍棒を振り回して、どんな怪物も一撃で叩き潰し、少女の方は攻撃魔法を使って迷宮を焼き払うとかって話もありやす。
他にもどんな話があったか、お前ら知っているか?
大酒のみの大喰らいという話、そんなのもあったかな。
ああ、そういや旦那達絡みの話もありましたっけ。
旦那のチームのメンバーが、少年の一睨みで二人も失神させられたとかって。
あ、いえ、旦那達を貶めるつもりじゃあねえんですよ。
その後、旦那と少年が決闘して友情を深めたって話も聞きましたし。
さすが、鋼鉄の盾の旦那だ。化け物相手にも引けをとらねえ凄い漢だって話でさあ。
で、旦那、何で笑ってらっしゃるんで。
後ろを見てみろって?
ああ、なんかこの店にそぐわない若いのがいやがりますが、この店って探索者しか入れないわけじゃないんですね。
え、奴等も探索者だって?
それじゃあ、ここが上級者専用の店って知らずに入って来た初心者ですかい。
ああ、わかりました。旦那の手を煩わせるこたあありません。
ここは、きっちり、この俺が言い聞かせてきますわ。
おい、お前ら行くぞ。
あまり、いじめるんじゃないぞ。やさしく言い聞かせてやりゃあいいんだ。
じゃあ、旦那行って来ますわ。
手加減しろって、そんな大声で言わなくても分かってまさあ。
ほら、あの若いの、こっちを見てますぜ。旦那の声だけでびびってるんでしょうかね。
女に囲まれて、引っ込みがつかないのか、度胸があるのか、それとも足が震えて動けないのか。
さっさと、店から逃げりゃあいいものを。ねえ、旦那。
まあ、これも社会勉強。痛い思いは早めにしといたほうが後々のためになるってもんでさ。
雨の傘亭の元筆頭探索者チーム・春雨のメンバーは、痛い思いを早めにすることができた。
それが彼らのためになったかどうかは分からない。
彼らが、海熊の銛が実在するチームであることを知るのは、その直ぐ後のことである。




