序 女探索者かく語りぬ
前章までのあらすじ
更に東の海に飛ばされたケンカイ達一行は、魔動船の修理の為に無人島に立ち寄った。
そこで出会った女軍人メイ。
彼女を狙う海賊を倒したケンカイ達に、襲いかかる東海母竜の'娘達'。
全てを倒すことに成功したケンカイは、東海母竜の追跡を躱すために魔力波動をかえるが、その副作用で若返ってしまった。
15歳の少年になったケンカイが目指したのは、古代の宝が眠ると言われる迷宮都市ユエンディー。
地下迷宮で新たな冒険が始まる。
某月某日、迷宮都市・ユエンディーにて
は、あたしも焼きが回ったってことかね。
あんたらみたいな若造に助けられるとはね。
いや、迷惑だったわけじゃないよ。
むしろ、感謝してる。
なんだったら、感謝の証に一晩付き合ってあげてもいいさ。
おや、お嬢ちゃん、冗談だよ。冗談。
あんたみたいな可愛い子をはべらせてる少年に、あたしみたいな年増が本気で迫るわけないだろう。そんな顔すると、可愛い顔が台無しだよ。
おや、綺麗だって?、やめとくれ。
もう、あたしも歳さ。
さすがに、あんたのような若いのとヤルほど常識外れじゃないよ。
でも、あんた、歳の割にはいい飲みっぷりだね。お姉さん、感心するよ。
態度も落ち着いているし、妙に貫録あるし、あと10歳も年上だったら、絶対銜え込んで離さないんだけどさ。
て、お嬢ちゃん、机の下で足を蹴るのはやめとくれ。冗談だって。冗談。
いたたた、まったく、冗談が通用しないガキはいやだねえ。
あんたもそう思わないかい?
それが可愛いって?
いや、その感想は父親ぐらいがいうもんだろ。て、お嬢ちゃん顔真っ赤じゃないか。
うん、どうした。お姉さんに恋の相談でもしてみる?
男を落とす方法ぐらい、たっぷり仕込んでやってもいいんだよ?
あんな手や、こんな手や、ああ、口でするのも・・・
てて、少年。無言で頭を殴るのは勘弁しておくれ。
冗談だって、冗談。
なんかさ、正直死ぬかと思ってたのを助けてもらったから、妙に高揚しちゃってんのさ。
普段は、こんな軽口叩く女じゃあ無いんだけどね。
信じられないって?
本当だって。
硬派な姐さんってことで、大人気なんだから。あたしは。
おら、そこっ、笑ってんじゃねーよ。急所潰されたいのかいっ。
ああ、すまないねえ。あいつら、品が無くてね。
まあ、探索者なんてヤクザな稼業をしている連中で、品のある奴なんざあ、まずいないがね。
で、あんたらは何かい?
探索者に成りに来たのかい?
ここはいい都市だからね。なんたって、威張ってる役人共がいないんだ。
腕に自信があるなら、いくらでも稼げるし、好きな事をし放題だ。
でも、調子に乗り過ぎることだけは注意しなよ。
役人より怖い連中がいるからね。まあ、こういう店の主人連中なんだけど。
この都市じゃ、探索者の店の主が一番怖いのさ。
なんたって、迷宮の管理をしてくださっている連中だ。
お宝をピンハネさえしなけりゃあ、拝んでやってもいいんだけどね。
ああ、あんたの悪口を言ってるわけじゃあないよ。
さっきから怖い顔でこっちをみてるけどさ。
命の恩人に酒を奢ってるくらいで、目くじらたてるんじゃないよ。
ああ、すまないね。
あれがこの店の主人さ。
この店の迷宮の入口を管理している奴さね。
知り合いかって?
まあ、なんだ、結構古い知り合いさ。
関係? そ、そんなのどうでもいいじゃないか。
いや、ああ見えても結構いい奴なんだよ、って、話が逸れてるね。
それで、あんたらは何しに来たんだい?
食い詰めたようには見えないから、自棄になって一攫千金を狙ってるわけじゃないんだろ?
迷宮を攻略しにきた?
は、それは、凄いね。
あたしも、長年この稼業をしているが、真顔で言うやつを初めて見たよ。
大抵は、お宝さがしで一山狙いなんだがね。
まあ、あんたらの腕前は見せてもらったからね。
正直、あたしらより上だ。悔しいけどね。
でも、気を付けなよ。
ここの迷宮は、地下にいけばいくほど、見返りは大きいけど危険は更に大きいんだ。
無理して帰ってこなかった奴が、どれほどいることか。
ほどほどで稼ごうとして、長居しすぎて、あたしらのように処刑屋に出くわす間抜けもいるけどね。
ああ、あんたらが倒してくれたのが処刑屋さ。こいつらは、何故か同じ階にいると急に湧いてくるんだ。そして、襲ってくる。
出くわしたら、ほぼお終い。
え、時間制限を超えたんだろうって?
面白い言い方だね。それ。今度、ほかの奴らにも教えてやるか。
ああ、それにしても少年。あんた酒強いね。
このあたしも、結構強いって評判なんだが、あんたも負けてないよ。
え、まだまだいけるって?
ほほう、それは、あたしに対する挑戦かね。
飲み比べで負けたことは無いよ。
昔、飲み比べで勝てたら一晩付き合ってやるって云ったら、酒場の男が全員挑戦してきたけどさ。全員返り討ちにしてやったもんだよ。
ほら、そこの店主なんざ、飲んでる最中に吐き出してね。
まったく、そういうことで必死にやるんじゃなくて、ちゃんと言ってくれりゃあ、て、なんだ、にやにやしてんじゃないよ。あんた、おっさんか。
ケンカイ達が試しに潜ってみた迷宮で助けた女探索者は、散々飲んだ後、店の店主によって介抱されることになった。
後日、店主がケンカイに非常に感謝することになる。
3か月後、その探索者の店に探索者を引退した女が、嫁ぐことになるのだが、ケンカイにとっては、いい女とやり損ねた記憶しか残らない出来事だった。




