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漁師と海竜 海原を行く  作者: 赤五
第三章 迷宮都市編(前編) 21階層への道
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序 女探索者かく語りぬ

前章までのあらすじ


更に東の海に飛ばされたケンカイ達一行は、魔動船の修理の為に無人島に立ち寄った。

そこで出会った女軍人メイ。

彼女を狙う海賊を倒したケンカイ達に、襲いかかる東海母竜の'娘達'。

全てを倒すことに成功したケンカイは、東海母竜の追跡を躱すために魔力波動をかえるが、その副作用で若返ってしまった。

15歳の少年になったケンカイが目指したのは、古代の宝が眠ると言われる迷宮都市ユエンディー。

地下迷宮で新たな冒険が始まる。

 某月某日、迷宮都市・ユエンディーにて


 は、あたしも焼きが回ったってことかね。

 あんたらみたいな若造に助けられるとはね。

 いや、迷惑だったわけじゃないよ。

 むしろ、感謝してる。

 なんだったら、感謝の証に一晩付き合ってあげてもいいさ。

 おや、お嬢ちゃん、冗談だよ。冗談。

 あんたみたいな可愛い子をはべらせてる少年に、あたしみたいな年増が本気で迫るわけないだろう。そんな顔すると、可愛い顔が台無しだよ。

 おや、綺麗だって?、やめとくれ。

 もう、あたしも歳さ。

 さすがに、あんたのような若いのとヤルほど常識外れじゃないよ。

 

 でも、あんた、歳の割にはいい飲みっぷりだね。お姉さん、感心するよ。

 態度も落ち着いているし、妙に貫録あるし、あと10歳も年上だったら、絶対銜え込んで離さないんだけどさ。

 

 て、お嬢ちゃん、机の下で足を蹴るのはやめとくれ。冗談だって。冗談。


 いたたた、まったく、冗談が通用しないガキはいやだねえ。

 あんたもそう思わないかい?

 それが可愛いって?

 いや、その感想は父親ぐらいがいうもんだろ。て、お嬢ちゃん顔真っ赤じゃないか。

 うん、どうした。お姉さんに恋の相談でもしてみる?

 男を落とす方法ぐらい、たっぷり仕込んでやってもいいんだよ?

 あんな手や、こんな手や、ああ、口でするのも・・・

 

 てて、少年。無言で頭を殴るのは勘弁しておくれ。

 冗談だって、冗談。

 

 なんかさ、正直死ぬかと思ってたのを助けてもらったから、妙に高揚しちゃってんのさ。

 普段は、こんな軽口叩く女じゃあ無いんだけどね。

 信じられないって?

 本当だって。

 硬派な姐さんってことで、大人気なんだから。あたしは。

 

 おら、そこっ、笑ってんじゃねーよ。急所潰されたいのかいっ。


 ああ、すまないねえ。あいつら、品が無くてね。

 まあ、探索者なんてヤクザな稼業をしている連中で、品のある奴なんざあ、まずいないがね。


 で、あんたらは何かい?

 探索者に成りに来たのかい?

 ここはいい都市まちだからね。なんたって、威張ってる役人共がいないんだ。

 腕に自信があるなら、いくらでも稼げるし、好きな事をし放題だ。

 でも、調子に乗り過ぎることだけは注意しなよ。

 役人より怖い連中がいるからね。まあ、こういう店の主人連中なんだけど。

 この都市まちじゃ、探索者の店の主が一番怖いのさ。

 なんたって、迷宮の管理をしてくださっている連中だ。

 お宝をピンハネさえしなけりゃあ、拝んでやってもいいんだけどね。


 ああ、あんたの悪口を言ってるわけじゃあないよ。

 さっきから怖い顔でこっちをみてるけどさ。

 命の恩人に酒を奢ってるくらいで、目くじらたてるんじゃないよ。


 ああ、すまないね。

 あれがこの店の主人さ。

 この店の迷宮の入口を管理している奴さね。

 知り合いかって?

 まあ、なんだ、結構古い知り合いさ。

 関係? そ、そんなのどうでもいいじゃないか。

 いや、ああ見えても結構いい奴なんだよ、って、話が逸れてるね。

 

 それで、あんたらは何しに来たんだい?

 食い詰めたようには見えないから、自棄になって一攫千金を狙ってるわけじゃないんだろ?

 迷宮を攻略しにきた?

 は、それは、凄いね。

 あたしも、長年この稼業をしているが、真顔で言うやつを初めて見たよ。

 大抵は、お宝さがしで一山狙いなんだがね。

 

 まあ、あんたらの腕前は見せてもらったからね。

 正直、あたしらより上だ。悔しいけどね。

 

 でも、気を付けなよ。

 ここの迷宮は、地下にいけばいくほど、見返りは大きいけど危険は更に大きいんだ。

 無理して帰ってこなかった奴が、どれほどいることか。

 ほどほどで稼ごうとして、長居しすぎて、あたしらのように処刑屋に出くわす間抜けもいるけどね。

 

 ああ、あんたらが倒してくれたのが処刑屋さ。こいつらは、何故か同じ階にいると急に湧いてくるんだ。そして、襲ってくる。

 出くわしたら、ほぼお終い。

 

 え、時間制限を超えたんだろうって?

 面白い言い方だね。それ。今度、ほかの奴らにも教えてやるか。


 ああ、それにしても少年。あんた酒強いね。

 このあたしも、結構強いって評判なんだが、あんたも負けてないよ。

 え、まだまだいけるって?

 ほほう、それは、あたしに対する挑戦かね。

 飲み比べで負けたことは無いよ。

 昔、飲み比べで勝てたら一晩付き合ってやるって云ったら、酒場の男が全員挑戦してきたけどさ。全員返り討ちにしてやったもんだよ。

 ほら、そこの店主なんざ、飲んでる最中に吐き出してね。

 まったく、そういうことで必死にやるんじゃなくて、ちゃんと言ってくれりゃあ、て、なんだ、にやにやしてんじゃないよ。あんた、おっさんか。

 

 ケンカイ達が試しに潜ってみた迷宮で助けた女探索者は、散々飲んだ後、店の店主によって介抱されることになった。

 後日、店主がケンカイに非常に感謝することになる。

 3か月後、その探索者の店に探索者を引退した女が、嫁ぐことになるのだが、ケンカイにとっては、いい女とやり損ねた記憶しか残らない出来事だった。

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