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漁師と海竜 海原を行く  作者: 赤五
第二章 東端の魔海
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第7話 新たなる目標の地

これで第2章の改稿完了です。


連載した時の文章は、今晩消します。

「おっと、話がずれてしまったな」


 メイは少年趣味の説明を中断した。


「もし、ケンカイ殿が国に士官したいというなら、私が上層部と掛け合っても良いのだが。

 ん、おそらくそれは無いのだろう?」

「ああ、こっちもいろいろやる事があるからな」

「ふむ、わざわざ西から来たのだから、目的があってしかるべし、か。少々、いやかなり残念ではあるが」


”リネス、西からこちらに飛ばされたことを話したのか?”

”いえ、話してないです。聞いてもきませんでした”


「ん、こちらの推測も当たってるようだな」


 動揺したリネスを見て、にんまりと笑うメイ。


「室内の装飾や、用意してもらった服の意匠が西の国のものと似ているからそう推測したのだが、ん、これも隠しておいた方がよい情報かな?」


”メイの癖に鋭いな”

「ああ、あまり知られたくない」

”この女の勘違いも、状況証拠をきちんと分析した結果のようだったしのう。頭は悪くないのじゃな”

”賢くて美人の変態女か。それって、かなり最悪に近いぞ”


「ん、わかった。秘密を共有できて実に嬉しい」


 本当に嬉しそうに笑うメイ。そういう表情は顔の造りがよい上、屈託がなく非常に魅力的だった。


「ということはだな。ケンカイ殿。いや、見かけからはケンカイくんと呼んだ方がよいか?」

「・・・呼び捨てでいい」


 さすがに、くん呼びは恥ずかしいケンカイ。

 それを聞いて、何故か再び頬を赤くするメイ。


「お互い呼び捨てでいいとは、まるで恋人同士のようで照れるな。

 ん、それでだ。以上の事から私が推定したキミ達の目的なのだが」


 咳払いをした後、メイは大見えを切る。

 ばさりと手を振って言った。


「迷宮都市・ユエンディーの攻略に違いあるまい!」

「なんだ、それ?」

「なんですか、それ?」


 初めて聞く都市の名前を、自信たっぷりに断言したメイは、ケンカイ達の反応をみても自分が間違っているとは思っていないようだった。


「ん、いまさら誤魔化さなくてもいいだろう。ケンカイ。

 そういう事をされると、お姉さん寂しいぞ」


 メイがケンカイの頭を撫でた。若返ったケンカイは、身長が低くなっているのでメイと同じくらいの背丈である。

 メイの腕を払いながら、ケンカイは念話でリオウに確認する。


”爺さん、知っているか?”

”ユエンディー・・・どこかで聞いたような気がするのじゃが”


「古代魔法帝国の時代から存在するという神秘の地下迷宮を有する独立都市。

 これほど、大魔法使いであるケンカイが目的にするに相応しい場所は他にはないと、私は推測するのだ。

 100年間にわたる攻略を経ても、なお詳細のわからぬ地下大迷宮。

 莫大な宝物が散在し、偉大な過去の技術の産物が存在し、それを求めるものは後を絶たない。

 だが、迷宮には怪物が沸くかのごとく徘徊し、迷宮の最深部を覗いた者は誰もいないと言う」


”怪物が沸く、宝物、地下迷宮・・・”

”爺さん、心当たりがあるのか?”

”そして、ここは東の大陸じゃの、まさか、アレがまだ生きておるのか

 ふむ、ケンカイ、話を聞き出せ。・・・うまく行くと、オヌシの年齢を元に戻せるかもしれんぞい”

”そうなのか!”


「さすがは、メイ。よくぞ、オレの目的に気づいた」

”え、そうなんですか。ボク、聞いてませんよ”

”いいから、話を合わせろ”

”は、はい”


「す、すごいですねー メイさん。わー、キヅカレチャッター」

”・・・暫く黙ってろ”


 リネスの棒読み台詞も、今のメイには気にならないようだった。


「うまくいけば一攫千金。宝物の誘惑に惑わされた者達の集う都市だ。

 だが、ケンカイが財宝に興味あるとは思えない。

 ん、魔法に関連する目的の物があるのかな?」

「そこまでは、言えないな」


 本当は言えないではなく、言いようがないのだが。


「だが、オレ達は西から来たばかりで、あまり情報が無いのも確かだ。

 もっと、詳しく教えてくれ。礼はする」

「私とケンカイの仲ではないか。礼などとは水臭い。・・・あ、頼む内容は後でいいかな?」

「結局、受け取るんだ」


 リネスの突っ込みにも反応せず、メイはケンカイの手を握った。


「それでは、私の知っている限りのことを教えよう。ここだとあれだな。二人きりになれる部屋があれば是非そこで」

「何するつもりですかっ」


 リネスが間に割り込んだ。


「ボクも話を聞きたいから、一緒です」

「3人一緒は初めてなのだが・・・」

「そういう事じゃないですっ」

「ん。リネスちゃん、そういう事ってどういう事かな。お姉さんに言ってごらん」

「うー」

「からかうんじゃない。まあ、涙目のリネスが可愛いのは確かだが」

「え、えーと、ありがとうございます?」

「む、私の方がもっと可愛いと思うのだが。いや、私の場合は綺麗の方が相応しいのか」


 収拾がつかなくなってきた。

 それを収めたのは、ケンカイの腹の虫だった。

 つまり、お腹が空いて、腹が鳴ったのだ。

 朝から何も食べずに、大暴荒れしていたのだ。ただでさえ大食いのケンカイの胃はとっくに空っぽだった。


「そういや、腹が減ったな。続きは飯を食いながらにするか」

「私の料理の腕を披露しようか? こう見えても蛇とか蛙を捕まえて捌くことには自信があるのだ」

「・・・リネス、頼む」


 得意なのはサバイバル料理のメイの提案を却下して、ケンカイはリネスに準備を頼むのだった。




”遊戯場じゃの”

”遊戯場?”


 食事をしながら、メイの知っている事を聞き出したケンカイは自室に戻った後、リオウと念話を交わしていた。

 メイはリネスに頼んで空いている客室に案内している。

 彼女をチャンター共和国の首都まで送ることにしたので、それまでの居住部屋として提供したのだ。

 メイにすら呆れられたのだが、この辺りの地図を持っていないケンカイ達は、チャンター共和国がどこにあるのか判らなかった。。

 なので、陸を探すところから始めるところであったのだが、幸い海賊の資料の中に地図が入っていたため、そんな事態は避けられたのであった。

 ちなみにその地図は貰い受けて操作室に貼られている。


”古代魔法帝国で、流行った遊びなのじゃ。

 怪物を配置し、罠を仕掛けられた迷宮から、宝を得る。

 階層わけした迷宮を作って、どの階層まで進めたかを競う競技もあったのう。

 階層は深くなればなるほど、出てくる怪物や罠が強くなっていくのじゃ。

 そうでなければ、侵入を防ぎたいだけなら、最初に強い戦力を置くのが当たり前じゃしの。侵入を防ぐ一番の方法は、侵入する気にさせないことじゃ。

 わざわざ弱い怪物を最初に入れているあたり、遊び目的じゃよ。

 本来は、実戦の腕を確かめたり、鍛えたりするのが目的なのじゃが、スリルのある娯楽遊戯としても人気があったのじゃ”

”スリルがあるって、命懸けだろ?”

”迷宮の中の戦闘は、全て実戦じゃがのう。命を失うことは無かったのじゃ”

”どうしてだ?”

”ほれ、この船にもあるじゃろう。あの戦闘訓練室と似た仕掛けじゃよ”

”ああ、あれか”


 戦闘訓練室は、中でどのような怪我をしても即座に治療されるという魔法の掛かった部屋である。以前、ケンカイは剣術使いリンダとそこで訓練をし、損傷を受けた腕が直ぐに治っていくのを経験していた。


”ちと異なるのは、命に係わるダメージを受けたと判断された時は、別室に転送されてから自動的に治療されるという所じゃの。

 その仕掛けのおかげで、命懸けの戦いを死ぬ心配がないまま楽しめるということじゃ”

”じゃあ、これからいくユエンディーの地下迷宮も死ぬ心配は無いのか?

 メイの話では、危険があると言っていたが”

”自動治癒や、自動転送の魔法は高度な上に必要魔力も桁違いじゃしのう。まず、その機能は失われておろう。むしろ、迷宮自体が存続していること自体、奇跡的じゃろうて。さすがというしかないのう”

”そりゃあ危険だな”


 リオウの言い方だと、迷宮を作った者を知っているかのような口ぶりである。

 ケンカイは、少し気にかかったが、なにせ相手はリオウだ。

 どんなことを知っていても不思議ではないので、聞くことはしなかった。

 それにしても、古代魔法帝国の地下迷宮か、ケンカイは思いを馳せる。

 死に戻り前提の迷宮に、死んだら終わりの人間が挑戦する。

 今まで攻略できていないのも当然である。


”だが、聞いた話ではそれに相応しい見返りはあるようじゃな。そちらの供給機能が生きておるのなら、たしかに挑みたくなるのも無理はないかのう”

”宝物、ね。”

”浅い階層のものなど、ワシから見ればたかがしれておるだろうが、今の時代の人間にとっては貴重な物も多いだろうしの”

”それで、オレの年齢を元に戻せるってのは、どういうことだ。そんな魔法装置でも迷宮にあるのか?”

”さすがに魔法装置は無いのう。必要なのは触媒じゃよ”

”触媒?”

”高度な魔法を行使する時に、たまに必要になるのじゃ。オヌシにかけた術の場合、必要なのは'竜の角'じゃな”

”爺さんの角か?そんなものどこに持ってたんだ”

”根本の部分だけを額に残してあったのでな。今回はそれを使ったのじゃ。じゃが、今回で使い果たしての、この体では角が自動再生されぬので、同じ術を使うのは無理じゃ”

”迷宮に行けば、それが手に入るのか”

”かなり、深い階層までいかぬと無理だとは思うがの。それに、この船の外装を修理するために必要な資材も手に入るはずじゃ。今のところは航海に支障はないが、結構無理をしておるのだぞ”

”あの女面の怪物どもに襲われることを考えると、万全にしておいたほうがいいか”

”じゃのう、雷撃の反動もきついでな。このままだと船体がバラバラになる可能性もあるのじゃ”

”海の藻屑は嫌だな”

”なら、そこで資材も手に入れるべきじゃの”

”反対する理由は無いな”


 どこの国にも属さず迷宮探索者達が築き上げた海上都市。

 それは、チャンター共和国と、それと同じくらいの勢力を誇るヒンディア帝国の国境付近にある島に存在する。

 迷宮都市・ユエンディーがケンカイの次の目的地となったのだった。





竜の宮にて、'姉達'が困惑していた。


 1人が言う。


「あら、魔力波動が消えてしまいましたわ」


 1人が言う。


「これでは、追跡できませんわ」


 1人が言う。


「妹達も混乱していますわ」


 1人が言う。


「それに目標に接触した'妹達'は、全滅しましたわ」


 4人が言う。


「'妹達'では、目標を捉えることはできませんわ。

 故に、言う事を聞く子たちだけ、回収しましょう。

 そして、もっと強い妹を作りましょう。

 目標を捉えることができるだけの妹を。

 然り、妾たちならもっと強い妹を作り出せますもの」


 1人が言う。


「なら、人狩りも必要ですわ。素材がたりませんもの」


 1人が言う。


「では、'娘達'を送りましょう。


 1人が言う。


「'娘達'なら心配ありませんわ」


 1人が言う。


「あら、出来損ないはどうしたのかしら」


 1人が言う。


「回収できなくても、問題はありませんわ」


 2人が言う。


「結局、役にたちませんでしたわ」


 2人が言う。


「失っても問題ありませんわ」


 4人が言う。


「然り、故にあの出来損ないの事は忘れてしまいましょう」


 そして'姉達'は作業に戻る。全ては母様に喜んでもらうため。

 そのことだけを考えながら、いまだ目覚めぬ母様を待つのである




 彼女は出来損ないと言われていた。

 そのことを否定することは、彼女自身にもできなかった。

 彼女は、姉妹たちとあまりにも異なっていたからだ。



 リーイン大佐率いるリーミン号は、海賊達との密やかな会合の後、予定通りの航路を進み巡回を行っていた。

 リーミン号は3本マストの巨大な軍船である。

 巨大な帆をつけた3本のマストすべてに見張り台を設けてあり、一つの見張り台には常に二人が駐在し周囲を警戒している。

 これは、巡視が目的であるための当然の措置である。

 見張りが見える範囲というものは、見張り台の高さに比例する。

 もし正体不明の海賊船がいたとしても、先に相手を見つけるのはこちらの筈だ。

 できれば、海賊達の手を借りずに、自分の手だけで討伐を成功させたいものだな。

 と、リーイン大佐は思っていた。

 あの女ネズミは始末し終えたころだろうか。今後の事を考えると、監察局の上層部に少し掴ませておく必要があるかもしれん。

 そんなリーイン大佐の思考は、甲板からの急な連絡によって中断された。


「大佐、妙なものを発見しました。至急確認お願いします!」

「海賊か?」

「いえ、違うと思うのですが、申し訳ありません。自分ではふさわしい言葉がみつかりません」

「見たものの説明すらできんのか、この無能が」


 吐き捨てるように言い捨てた大佐は立ち上がり、甲板に向かって急いで歩いた。

 太ってきた体ではきついのだが、彼も軍人だ。

 その程度のことで弱みをみせるほど軟ではない。

 甲板では、見張り台の人間が指さす方向を見ている数名の兵士が、全員驚きの表情を浮かべていた。


「どうした、何を見つけたのだ。説明しろ」


 大佐が来たことに気づき、全員が一斉に敬礼する。

 その中で一番階級の高い甲板長である大尉が、一歩前にでてリーイン大佐に報告した。


「は、実は先ほど、見張り台の者が妙な物を発見いたしました。

 我々も、それを確認していたのでありますっ」

「だから、その妙な物とはなんだ。海賊に関係ありそうなのか」

「は、判りませんっ」

「なんだと?」

「是非、ご自分の目でご確認をお願いします。あちらです」


 大尉は海の方向を指さした。

 リーイン大佐はその方向も見た。

 そこには、波に揺られる奇妙な物があった。

 一言で表現するなら、青黒い球体の様なものだ。


「なんだ、あれは。海藻が固まっているのか?」

「いえ、それが・・・、あ、大佐、あれを見てくださいっ」


 ゆっくりと揺れる球体は、さらにゆっくりと回転しているようだった。

 白い何かが回転にあわせてまわり、船の方向からも見えるようになった。

 それは、若い女の顔のように見えた。


「な、何だあれは」

「判りません、如何しましょうか」


 リーイン大佐は悩んだ。

 謎の海賊組織と関係があるのだろうか、あるのなら捉える必要がある。

 関係が無いにしても、巡回で遭遇しておきながら、怪しい物を見過ごしたとなれば職務怠慢と見なされる可能性もあった。

 結局、嫌な予感がしてもするしかないのだ。


「回収する。危険そうであれば、その場で処分せよ」


 悩んだ末に出した命令に従って、船員たちが動き出した。


「念のためだ、護衛隊は全員武装の上、甲板に待機せよ。至急だ」




 出来損ないと言われた彼女は、ただ海の上を漂っていた。

 外海にでてからは、鬱陶しい'姉達'の思念干渉も無くなった。

 なぜ、ほかの姉妹達はあれに耐えられているのか、彼女には判らない。

 母様への義理で追っていた目標は、魔法波動が消滅したため追うことができない。

 竜の宮に帰る気も無くなっていた。

 なので、することが無いので海に浮かんでいる。

 心地よい退屈だった。

 その退屈が破られたのは、大きな船が近くを通り、そこから小さな船がこちらに向かってくるのを確認した時だった。



 甲板長の大尉は、自分から率先して有志を募り手漕ぎの小舟に乗って青黒い球体に近付いた。

 手には竿の先に鉤をつけた道具がある。それで球体をひっかけようとしたが、なぜか柔らかそうに見える球体には鉤先が刺さらなかった。

 舌打ちしたあと、甲板長は目標を変えた。

 鉤を掛けれそうなのは、女の顔にみえる部分しかない。

 自分のやることに嫌悪感を感じながらも、甲板長は手鉤を持ち替えて女の顔に見える部分に引っかけようとした。

 そして、鉤先が顔に触れる寸前、女の顔が変化した。

 目を開けたのだ。

 そして、次の瞬間、青黒い球体は爆発したように弾けた。


 

 リーイン大佐からは、何が起きたのかよく判らなかった。

 判ったのは一つだけ、全身を切り裂かれた甲板長達は生きていないだろうということだけだった。



 出来損ないと言われた彼女は、自分の顔に金属が迫ってくるのを見た。

 刺さると痛そうだ。痛いのは嫌だ。

 次の瞬間、彼女の全身を覆い球体を成していた髪の毛が解ける。

 解けた髪の毛は、鋼線の鋭さで小型の船と乗員に襲いかかった。


「敵は、排除」


 彼女は大きな船をみた。小さな船はあそこから来たのだ。


「あれも、敵」


 そして、そちらに向かって泳ぎだす。

 髪に覆われていた部分が露わになった彼女を見たものは、おそらくこう言うだろう。

 人魚、と。



「な、なんだ、あれは。化け物、いや、人魚?」


 女の上半身に魚の下半身。そして、蒼黒の髪の毛。

 余裕があれば、リーイン大佐もその造形を美しいと感じることが出来たに違いない。

 だが、そんな余裕は彼には与えられなかった。


 出来損ないと言われた彼女は、尻尾で水面を叩き、一気に甲板まで跳躍した。

 力強い動きをみせた尻尾が、甲板に到着すると足に変わった。

 そこにいるのは、薄い胸を隠す胸当てだけを身に付けた半裸で蒼黒の髪の美少女だった。

 綺麗な脚線美を眺める時間すら与えず、少女は頭を振った。

 髪が甲板を横切り、そして、立っている者はいなくなった。

 血に染まった甲板を見ることも無く、少女は再度跳躍して、海の中に戻る。

 海中に入った瞬間、2本の脚は一本の尾に変化した。


「弱かった。やり過ぎた?」


 そんなことを呟きながらも少女の動きは止まらない。束ねた髪がリーミン号の船底を抉りとる。

 船内に海水が流れ込み、傾き始めるリーミン号。

 沈没を防ぐことはできそうにない。

 そして、少女は沈んでいく船の最期を看取る事も無く、再び泳ぎ始める。


「そういえば、目標は西に向かっていた」


 だとしたら、西に行けば会えるかもしれない。

 会えなくてもそれでよい。

 少女は自由になったのだ。もう、彼女の行動を制限する者は誰もいないのだ。

 ただ、自分が思うがままに行動する。

 彼女にとって、少しでも、意味のあるものは目標の事だった。

 それ以外に気になる事は無いし、気にするつもりもない

 少女は西に向かって泳ぐ。

 力強く一本の尾を動かして。





 おまけ(性的な内容を含みます。閲覧中尉いや注意)


 海姫の雷号のある日の夜


 メイを乗せてチャンター共和国に向かう海姫の雷号。

 船長であるケンカイの部屋に忍び込む影があった。

 部屋に鍵はかかっていたのだが、別に魔法で施錠しているわけでもない普通の機械仕掛けのものだ。

 影にとって、そんな部屋の鍵は簡単に開けることができる玩具のようなものだ。

 そういう仕事をしてきたのだ。

 影は、部屋に潜入した後、再度扉の鍵を閉める。

 一連の動作は滑らかで、音もほとんど立てていない。

 そして、影はケンカイの眠るベッドに近づいた。

 そして、上掛けに手を伸ばし、その手を掴まれた。・・・・


「なにをしてるんだ、メイ」


 掴んだのは寝ていた筈のケンカイ。掴まれたのは残念美人ことメイ中尉だった。


「ん、熟睡していたように見えたのだが、これが魔法の力か・・・」

「使ってねーよ」


 見た目は少年のケンカイも、中身は様々な経験を積んだ大人だ。

 気配を感じるくらいは簡単にやってのける。


「それで、こんな夜中に何のようだ」

「ん、礼を貰いにきただけだ」

「礼?」

「約束しただろう?情報と引き換えに」

「それが、何で夜中に忍び込むことになるんだ?」

「だから、少年の青い果実をいただきにきたのだよ」


 メイは真顔で言った。


「は?」

「ふふふ、お姉さんにまかせておけば、すぐ終わるから」

「お前は、馬鹿か。オレの本当の歳は違うのは知っているだろう」

「なに、重要なのは見た目と肌ざわりだ。あとはおまけだ。

 あれだけ誘っておいて、ここで嫌だはないだろう。ケンカイ」

「いつ、オレが誘った?」

「どうせ、10代半ばの男子の性欲は抑えきれるものでは無いのだよ。

 うっかりリネスを襲う前に、お姉さんが相手をしてあげよう」


 ケンカイは言った。 


「人の話を聞け」


 メイは言った。


「私の体を見て」


 そして、ケンカイは10代半ばの性欲に抵抗できなかったのである。

 翌朝、メイが納得できない表情で、

 お姉さんが、優しくリードしてあげるシーンのはずだったのに・・・

 と、悔しがっていたが。

 外見は少年だが、ケンカイの中身は様々な経験を積んだ大人なのだ。

 それくらいは簡単にやってのけたのだった。

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