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第17話 人望がない!

 西軍の兵士たちは揖斐川のこちら側に、木製の柵を並べ敵襲に備えていたが実際には恐れていた事態にはならなかった。


 既に西軍の隊規は緩み始めている。


 大垣城二の丸の縁側では、三成が長い紙を目の前にしてなにやら思案している様子だった。


 大谷刑部は何も言わずいつものように隣に腰を掛けた。


「なんだ? それは?」


【内閣総理大臣】宇喜多秀家

【内閣府主事】進藤正次、蒲生頼郷

【内閣府メンバー】本郷義則、千原勝則、蘆田作内、高橋権太夫、森九兵衛


【外務大臣】※東西外交 川尻秀長

【外務事務官】本多政重、加藤吉成、渥美孫左衛門、高野越中、服部新左衛門

【特別顧問】安国寺恵瓊


【財務大臣】※年貢・検地 長束正家

【財務務官】安宅作右衛門、河瀬織部、隅東権六、千田采女、藤林三左衛門


【文部科学大臣】※教育 長宗我部盛親

【文部科学事務官】天草久種、木下頼継、大橋掃部、曾根高光

【スポーツ交流担当官】―――


【防衛大臣】※国防 島津豊久

【防衛事務官】遠藤俊通、雑賀内膳、国友藤二郎、小幡信世、林半助、水野庄次郎、磯野平三郎


【農林水産大臣】※農業・林業・漁業 糟屋武則

【農林・環境事務官】佐藤小安右衛門、寺田久左衛門、青木市左衛門、塩野清助、渡辺甚平


【経済産業大臣】※貨幣・通貨・産業 戸田勝成

【経済産業事務官】伊藤盛正、岸田忠氏、東新太夫、戸田内記、猪尾甚太夫、海北市郎右衛門


【法務大臣】※刑法・民法 平塚為広

【法務事務官】小西清左衛門、乾次郎兵衛、大場土佐、荻野鹿之介、牧野成里


【国土交通大臣】※街道・石垣整備 島津義弘

【国土交通事務官】阿閉孫九郎、入江権左衛門、大音新介、蒲生大善、河崎新六


【厚生労働大臣】※医療・労働・公共衛生 明石全登

【厚生労働事務官】中島宗左衛門、大島助兵衛、神保源右衛門、渡辺勘兵衛


【総務大臣】※各省調整・区割 織田信吉

【総務事務官】織田長次、舞兵庫、横山喜内、平塚久賀、蒲生将監、大山伯耆、村田新左衛門(小西家家臣)


【注釈】石川貞清ご家中、既に東軍へ逃亡の由……


「新体制の人員を発表しようと思っているが、まだ草案だ。

 石田家が多いのは取り敢えず入れているだけで、これから他家の家臣団の人材の推挙を広く行ってもらおうと考えている。

 入れ替えがあっても良い」


「ふぅ~ん」

 大谷は顎に手を充てる。

 彼は【注釈】を見た。


 三成のもう一人の妹婿・石川貞清はさっさと池田輝政に投降していった。


 実はこの時西軍には動揺が走り、続けて他の家中の有力な家臣も幾名か東軍のツテを頼って清洲に奔った。


 そして、この現象は残念ながらこれからも起こり得る。


 令和の価値観を持ってしても、三成に人望がないのは確かなようだ。


「どうだ? 刑部殿のご意見は?」


「俺と湯浅五助が入っていないところが気に入ったよ」


「フフフ、残念。このスポーツ交流担当の空欄を見よ! お二人にはこちらをやってもらおうかな、と」


「スポーツ?」


「楽しそうだろ。戦ではない。あらゆることにスポーツで決着つけるのもありっちゃありでしょ」


 いちおう三成としても大谷が興味を持って承諾してくれそうなポストを用意したらしい。


 大谷は苦笑した。


「うーん、ま、考えとく。ところでお前が総理大臣では無いということは大統領にでもなるつもりか?」


「奥ゆかしい俺がそんなわけないだろ! 無役ですよ。もちろん」


 大谷は否定の意味でゆるゆると首を振った。

 

 この男が無役でおとなしくしていられるようだったらどんなに世が平和だろうか。


「まぁ、いいや。それはそうと、治部よ。この、村田新左衛門ってのは初耳だな。弥九郎のとこの?」


「うん。コニタンがもうご隠居さんみたいになっちゃって……代わりに推挙したいって。何かと使える男でね。刑部も一度会ってみるといい。重宝するだろう」


 三成は自分で書いた草案に目を落とし、少し目元を赤くして言った。


「これからはどんどん村田のような者を推挙してもらって世の中を引っ張っていってもらいたいと思ってる。

 今はまだ足軽や一介の兵士がみなの代表となるような世の中ではないが、そのうち我らは選挙を行って西軍みんなの代表を選ぶ。

 過去の職分なんかを超越した国造りをする。 目指すのは議会制民主主義だ。今はこれと同時に憲法草案にも取りかかってる」


 今度は大谷に向き合う。


「もちろん三権分立も。やる事が山程あるぞ、刑部よ。 まずは食物の確保、国境警備の強化が急務だが、そのうちどんどん他のものも必要となってくる。医療、産業、教育、娯楽……」


「そう上手く発展してくれるかなぁ。既に世を嘆いて倦む者も現れてるのだぞ。

 誰も言うこと聞かないかもよ」


 西軍兵士の間では出来うる限りミニマムで無理のない生活を送りたい。


 そんな異世界転生スローライフブームが蔓延している。


 無理もない。

 女のいない世界じゃもちろん子も成せない。


 一族の繁栄を願い武士として邁進していた者たちにとって、出世にもあまり意味がなくなった。


 組織に属していることにすら、窮屈に思う者も出てきた。


「みんなの気持ちはわかるけどね。団体で事に当たらないと。そんなんじゃ、すぐに内府のジジイに飲み込まれちゃうよ」


 大谷はマジマジと三成の草案を眺めた。


 確かに石田家家臣が中心だが、程良く適材適所のように思える。


 大谷はハタと気付いた。


「治部、ひとり重大な人物を見逃してるぞ」


「え?! 誰かな」

 三成はまずいな、と書状を舐めるように見直した。


「俺ら西軍諸侯がこれから先もなし得ないであろう偉業をその人物は既になし得ている」


「な、なに?!」


「大河ドラマの主人公!」


「た、大河ドラマ!? 嘘でしょ?! こんな知名度カスッカスの西軍に、そんな人物いないでしょうが!」


「フフフ……多分、日本国民にアンケート取ったら、今この世界に存在する中では、徳川家康の次くらいの知名度あるよ」


 大谷な口の端に不敵な笑みを浮かべた。

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