記念イベント
「ユウ!あの話聞いたか?」
紫苑がいつものように大声で話しかけてきた。
「ああ。今度やるイベントの話か?」
今度やるイベントとは、このゲームのサービス開始一ヶ月を記念して開催される
討伐型のイベントの事だ。
「それだ!俺達も当然参加するんだろ?」
もちろん参加する。このイベントは賞品や賞金が出るのだ
やらない理由なんてない。ちなみに参加賞なんかもあり
このゲームを始めたばかりのプレイヤーでも恩威がある。
「そりゃあね、何といっても賞品が豪華だし」
賞品には種類があり、ジョブ毎に貰える物が違うのだ。
俺の場合は、見習い剣士なので[アイスシールド]という
レア装備が貰えるらしい。これは非売品の装備だ、
ぜひ入手しておきたい。
「だよな!だよな!んでさ、
どうせだから他の奴等も誘わないか?」
他の奴等というのはもちろんサラさんとキュトさんの事だ
このイベントは最大5人PTを組んで参加することが出来るのだ。
もちろんボッチのためにソロでも参加は出来るが、賞品や
賞金を狙うなら、ソロよりもPTの方が断然有利だろう。
「そうだな。サラさんとキュトさんも誘ってみようか」
このイベントはAIの参加も可能なのでキュトさんも誘ってみることにした。
俺達は二人を誘う為に、ある喫茶店に呼び出した。
この喫茶店はあの不味い飯屋がどうしても嫌だという
サラさんが必死に探し出した店だ。この店の飲み物は
普通の味だが、他の店が酷過ぎて逆に美味しく感じられてしまう
くらいだ。よくこんな店見つけられたよね。
「おまたせー」 「おまたせニャ」
俺たちが席に着き、注文したカフェラテを飲んでいると
二人が店に入ってきて俺達に話し掛けてきた。
「おう!二日振りだな!」「二人とも、こんにちは」
俺達は挨拶を交わし、彼女達は俺たちの前の席に座り注文をする。
「店員さん。カプチーノを一つください」
「キュトはココアをおねがいしますニャ」
彼女達が注文をした後、俺は早速今回のイベントについて
話を切り出した。
「んで、メールにも書いたんだけど、
俺達と一緒に今回のイベントに参加しないか?」
彼女達も何時も俺達と遊んでいる訳じゃないので、
ちゃんと確認しておく必要がある。
「かまわないわよ?私も参加するつもりだったし」
「キュトも一緒にやるニャ」
二人とも快く参加を表明してくれた。
「二人とも有難う。早速だけどイベントについて、
軽く説明するよ」
俺は二人に今回のイベントについて説明を始めた。
「イベントはどれだけモンスターを狩れるかで入賞者が決まる。
それにポイント制で敵のLvが高ければ高い程倒した時の
ポイントも多い。場所はこのアルビダ近辺の東西南北の
出口から出た草原地帯で開催される。参加時はアルビダの
門の所でイベントを受けられるから待ち合わせはそこでいいね」
俺の話に三人が聞き入り、サラさんが質問を出す」
「敵のLvが高ければポイントが高いって話だけど、
私達は何処で狩りをするつもりなの?」
サラさんが当然の質問をしてきた。もちろん考えてある。
「ああ、それなんだけどな。今回はアルビダの北で
やろうと思う。」
俺が質問に答えると、今度はキュトさんが疑問に思ったのか
「なんで北なのニャ?北はLvが高い敵がいてポイントも
たくさんもらえるかもしれないけど危ないニャ。
南の方が敵が弱くて安全にたくさん倒せるニャ」
その疑問には俺ではなく、紫苑が答えた。
「量より質を取ろうって作戦なんだよな!」
それはそうなんだが、説明が足りなすぎる。
「そうだ。紫苑の言うとおり、今回は量より質で勝負
しようと思う。確かにキュトさんが言うように、
南の方が敵が弱くて乱獲すればポイントも沢山
稼げるだろうけど、敵には限りがあるんだ。
なにも俺達だけがイベントに参加する訳じゃない。
当然、獲物の取り合いになる。弱い敵の方が狩り易いから
ソロや低Lvの人が数を稼ごうと乱獲するはずだ。そうなると
どうしてもプレイヤーが狩るスピードにPOPが追いつかなくなる」
俺の説明の途中でサラさんが相槌をくれる。
「そうね。確かにせっかくイベントに参加してるのに、
それが敵の取り合いになっちゃうなんて最悪だわ」
まったくもって同意である。他のプレイヤーと揉め事に
なったりしても面倒なだけだしね。
「そういうこと。南に比べて北はソロにはちょっと厳しいし、
例えPTでもLvが低いとかなり倒すのに時間が掛かるはずだ。
その点俺達なら安全に早く倒すことも出来ると思うんだ。」
俺はここで一度言葉を切り、カフェラテで唇を濡らす。うん甘い。
「でもでも、北は魔族の領域に近いニャ。
もしも魔族が出てきたら死んじゃうニャ」
どうやらキュトさんは魔族が怖いらしい。それもそうかも
しれないと思う。誰だって死ぬのは怖い。例えそれがAIだとしても、
例えそれが生き返るのが前提の死だとしても。
「大丈夫だよキュトさん。今回のイベントモンスターはゴブリン
で固定されてるから、魔族に襲われる心配はないよ。」
そう言ってキュトさんを説得しようと試みる。
キュトさんは今の説明で一応は納得してくれたみたいだ。
「分かったニャ。そこまで言うなら、北で狩りをするニャ」
といった所で、サラさんとキュトさんが注文した飲み物が運ばれてきた。
「おまたせしました」
そう言って店員がカプチーノをサラさんの前に、
ココアをキュトさんの前に置き、店の奥に戻っていった。
「きたきた♪」「おいしいニャ~」
二人は早速注文したカプチーノとココアに舌鼓する。
俺と紫苑も残りのカフェラテを飲み干し、話の続きに戻って説明を再開した。
有難う御座いました




