黒深の森
お楽しみ頂けたら幸いです
俺達は今黒深の森という場所に来ている。
武具屋でのクエストでこの森にあるという
神木を探しに来たのだ。
黒深の森は昼でも薄暗く魔獣も徘徊している
危険な森でだが、俺たちのLvなら十分安全に
クエストクリア出来るだろう。
「キュトさん、あまり離れないようにね?」
「わかってるニャ」
キュトさんから返事が返ってくるが、何処か
緊張した面持ちだ。
キュトさんは素早さを活かして攻撃をする軽装
タイプのアタッカーだ。攻撃は軽いが手数が
多く、敵を状態異常にするスキルも習得しており、
ウチのPTには欠かせない戦力になっている。
サラとの相性もよく、二人で様々なクエストを
こなしている様だ。
今回は俺達やサラさんにキュトさんの四人で黒
深の森に来ている。
先頭が俺で、次に紫苑、三番目にサラさんで、
最後尾にキュトさんの順番で隊列を組んで森
を進んでいる。
「しっかし面倒なクエストだよな~。なんで
装備を買う為に神木が必要なんだ?」
もっともな意見だが、そういうクエストなん
だからしょうがない。
「そう言うなよ?紫苑だって新しい装備が欲しいだろ?」
現時点でまだブロンズ系の武器や皮の装備なのだ。
いい加減に新しい装備に更新したい。
「そりゃ~な!金も結構貯まったしな!」
うん。俺もGは貯まっているが回復魔法の
ヒールを買いたいんだよね。回復がいつも
消費アイテムだと、30Gだとしても
ポーション代もばかにならない。
「そうね~。私は新しい魔法を覚えたいわ。
いつまでもブリッド系だけじゃなくて、
もっと広範囲を攻撃出来る魔法が欲しいの」
サラさんも新しい魔法をご所望のようだ。
「キュトさんは、何か欲しい物でもあったりする?」
俺は最後にキュトさんに欲しい物があるか聞いてみた。
「キュトは新しい靴が欲しいニャ。今使ってる
靴はもうボロボロなのニャ」
ふむ。キュトさんの足元を見てみると、確かにボロボロ
で、相当に使い込まれているように見える。これだと
靴底もかなり擦り切れているのかもしれない。
「キュトちゃんはスピード型だから動き回るものね。
靴の消耗が激しいのもしょうがないと思うわ。」
「そうだな!筋力全振りしてる俺よりも、前衛として活躍
してるんじゃないか?」
確かにその可愛いなりとは裏腹にかなりの実力者だろう。
彼女の御蔭でこのPTがかなり強化されているのは
疑いようのない事実だ。クレアさんには良い人を
紹介してもらった。今度何かお返しをするべきなのだろうか?
俺達は話をしながら森を進み、ついに目的の場所へと辿り着いた。
そこは他の木々と比べて背が高く軸が太い立派な大木が聳え立って
いた。
「やっと着いたな。ドグマさんに拠るとこの辺りに
ポイズントレントがいるはずなんだが。」
ポイズントレントは俺たちが探している神木をドロップするのだが、
ポイズンと名が付いている通り、こいつは毒攻撃を仕掛けてくる
厄介なモンスターだ。今回のクエストの為に、高い解毒ポーション
を用意して来たので準備は万端だ。だが、レーダーには何の反応
もない。
「ユウさん。少し東に行った所からガサガサと音が聞こえますニャ」
どうやらキュトさんが敵の位置を特定したようだ。猫人族は耳と目が
よく、レーダーよりも敵の発見がし易いようで、いつもPTを組んで
狩をする時は重宝している。
「ありがとうキュトさん。相変わらず凄いね」
「みんなの役に立ててうれしいニャ♪」
そう言ってキュトさんは頬を赤らませていた。
「キュトさんって、一々反応が可愛いわよね」
全く同意である。
俺達はキュトさんが音を聞いた方向へと移動した。のだが、
トレントどころか、他のモンスターの陰すら窺えなかった。
「どういう事だろう?レーダーにも反応はないし、この辺で
間違いないんだよね?」
俺はキュトさんに確認を取る。
「間違いないニャ!信じて欲しいニャ!」
もちろん疑っている訳ではない。レーダーにも何も映っていないのだ
これは何かある。
「大丈夫。ちゃんと信じてるよ。恐らくだけど、何らかの方法
で隠れているんだろう。」
そう言って俺は周りを見渡してみる。先ほどと同じように木々が
生い茂っている。うん。これはあれかな?
「サラさん。あの木にちょっと魔法をぶつけて見てくれないかな?
ポイズントレントが擬態してるかもしれない。」
RPGの設定でよくあるパターンって奴だ。トレント系のモンスター
が周りの木々に擬態するのはもう定番と言ってもいいだろう。
「わかったわ!」
サラさんがそう言うと、早速詠唱を始めた
「我の魔力を糧とし、業火で敵を撃て!
ファイアブリッド!」
サラさんの中二台詞に伴いファイアブリッドが樹木に命中する。
ドガン!
樹木はファイアブリッドを食らうと、その本性を現した。
ギチッギチッ
樹木はその体をくねらせ、音を鳴らしながら此方に向かい合う。
どうやら戦闘態勢に入ったようだ。
「出たぞ!何時も通り俺が敵の攻撃を受けるから
隙を狙って攻撃してくれ!サラさんは追撃を頼む!」
俺は全員に指示を出しながら前に出る。
「おっしゃ!いくぜ~!」「がんばりますニャ!」
「まかせて!」
皆がそれぞれ返事を返し武器を構えな直す。
皆が戦闘態勢に移行した時、目の前のトレントがガサガサと体を
揺らして紫色の実の様なものを投げつけてきた。
ドガッ!
「!?」「なんだ、これは!?」
実が盾に直撃した瞬間に爆発し、紫の煙が俺の周りに立ち込める。
俺は咄嗟にHPの確認をする。
Lv12
HP92/95 MP27 状態 毒
「!」
HPが減っていると思ったら状態毒になっていた。
どうやら先程の煙に毒の効果があったようだ。
油断していた訳ではないが、トレントの攻撃を完全に防いだと勘違い
してしまったのだ。
「くっそ!」
俺はそう毒づくが後の祭りだ。最初から毒攻撃をしてくると
知っていたのに食らってしまったのだ。毒づきたくもなる。
俺は直ぐに解毒を試みようとするが、ポイズントレントがそれをする暇を
与えようとはせず、連続で木の枝を振り回してくる。
こうなったら速攻で倒すしかないだろう。
俺は直ぐに倒して解毒する為にポイズントレントに突撃していった。
「おぉおおおお!」
俺は叫びながらファストブレードを発動させる。
振り上げた剣が輝きながら、ポイズントレントの腕を切り裂く。
ガシッ!
鈍い音を出しポイズントレントが腕を落としたが、構わず
腕を振り回す。だが俺はそれを盾でブロックし受け流し
僅かに出来た隙を見逃さず後ろに下がる。そして何時も通り
俺が後ろに下がるとタイミングよく紫苑が前に出る。
「ブレイクアッパァアアア!」
紫苑がタイミングよく打ち上げ攻撃をかまし
ポイズントレントが仰け反る。
「バイパーエッジ!」
そこへキュトさんが短剣で切り刻み、直ぐに敵から離れる。
「ファイアブリッド!」
そこにサラさんの追撃の魔法が決まり、ポイズントレントはその
巨体を崩れさせていった。
俺達は森の拓けた場所で休憩を取っていた。
無事クエストも終わったので、昼食のついでに休むことにしたのだ。
ちなみに毒は戦闘終了した直後に解毒済みだ。
「これでクエストクリアだな。最初に毒を貰った時は
焦ったが、それ以外は楽に倒せてよかった」
食らったのは最初の毒攻撃くらいで、それ以外の攻撃は
単調に腕を振り回すだけでブロックし易く
そこまで苦戦をしたという程でもなかった。
「そうだな~。俺はもうちょっと歯応えがあった方が
面白いんだが・・・。」
どうやら紫苑は暴れたりないらしい。
「確かに思った程でもなかったわね。ボス級の敵かと思ってたけど
そうでもなかったし。」
うん。攻撃を数発食らって沈むようじゃ
普通の雑魚敵と同じ位の強さなんだろう。
「キュトは弱いくらいの方が、楽ができてうれしいニャン」
そう言いながら、ハムハムとサンドイッチを頬張り食べているキュトさん
この猫人族は何やってても絵になるな。
「まぁ、これから嫌でも強敵と戦うことになると
思うし、楽なのは今のうちだけだと思うよ?」
そう、まだ序盤なのだ。Lvもやっと12になったばかりで
冒険者ランクも未だにEランクだ。まだアルビダ周辺
でクエストをやっている段階であって初心者も同然だろう。
「だよな!まだ魔族にも会ったことないし、早く戦ってみたいぜ!」
魔族と戦うなら、最低でも宿屋のエグリドさんと戦えるくらいじゃないと
無理なんじゃないかな?
「魔族なんて無理ですニャ!殺されちゃいますニャ!」
キュトさんが猫耳をペタンとさせながら訴える。
「魔族はいいとして、この後はどうする?
もうクエストはクリアしたんだし、アルビナに帰るの?」
サラさんが話題を変え、この後の予定を聞いてくる。
「そうだね。今此処で狩りを続行するより、
戻って装備を更新した方が、楽に敵を狩れそうかな。」
今回のクエストでやっと初心者装備を脱出できるのだ。
ブロンズソードさん。今まで有難う。
「おっしゃ!そうと決まったら膳は急げだ!」
そう言って紫苑は立ち上がろうとする。
「まてまて、まだ飯食べてるんだっての」
別にカロリーを摂取している訳ではないのだが、気分の問題だ。
「んなもん、もう食っちまったよ。
そうだ!帰ったらいつもの飯屋に行こうぜ!」
まだ食うのか?ゲームじゃ幾ら食べても問題ないとは言え
食いすぎだろう。てか、またあの店に行く気なのか?
「絶対!嫌!」
サラさんに全力で拒否されて紫苑が項垂れている。放って置こう。
「んじゃ帰ったら武具屋で装備更新って事で。
キュトさんもそれでいいかな?」
俺はキュトさんにも確認を取る。キュトさんはサンドイッチ
を食べ終えて、デザートのリンゴを齧っていた。
「分か、モグ、た、モグモグ、ニャ。」
食べ終わってから喋ろうね?
有難う御座いました




