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ERROR CODE 2x002 ふえる

主人公の適応能力半端ねぇ……

「食べる」必要がないというのは、一人暮らしだと面倒が少なくなっていいが、食事する楽しさを感じることができない弊害もある。

充電の終わった俺は、着替えて買い物するために外へ出た。街道沿いのカフェやファミレスには会話を楽しみながら食事をとる人々が見えた。

そんな風景を尻目に、ドラッグストアや100円ショップを巡る。洗剤や生活用品を買い込む。そんなに必要ないので、それほど大荷物になることもなかった。

することも無いので、学校へ行ってみる。道は途中から覚えていた。

学校に近づくにつれて、にぎやかな声が聞こえる。どこのクラスが体育をしているのかと思ったら、自分のクラスだった。

懐かしい顔ぶれがサッカーをやっている。自分以外は皆健在のようだ。

あの輪に、自分はふたたび入っていくことができるのだろうか?



「なぁうどん」

隣でクラスメートのサッカーを観戦していた熱田が声をかけてくる。

「うどんじゃない香川だ。いきなりなんだ。」

「なんだとはなんだ。」

「こっちが聞きたい」

「向こうのフェンスの向こうに誰かいるじゃん」

「女の子か?」

「そうだ。結構かわいくね?」

「初めて見る顔だ、近所の子かな?」

「この近所だったらこの学校にいるはずだろ、あれくらいじゃ」

「えー、じゃあどこの学校だろ」

「どうしたどうした」

氷見が割り込んできたので、フェンスの向こうを指さす。

「あそこあそこ。」

「おー、あれはかなりの美人と見た」

「見りゃわかるよ」

早々に熱田に突っ込まれている。話の流れくらい読め。

「しかし、どこの制服だろうあれは」

「どう見ても私服だろうが」

熱田がハリセンで叩く仕草をしつつまた突っ込む。その時、フェンスの向こうの少女が一人一人を指さし始めた。

「あれ、何してるんだろ」

俺の言葉に二人が振り向く。

「人数数えてる感じじゃね?」

「何のために?」

「さぁ……」

「まさか転校生かなぁ?」

氷見の言葉に二人を含め周囲の人の目が輝く。あながち、その発想は間違っていないかもしれない。

しかし、そんな話をしているうちに少女は消えていた。

「あ、行っちゃった……。」

誰かが残念そうに漏らした。俺も同意見だった。



やっぱり人数は39人。自分以外での増減はなかったようだ。一週間だしそういうものか。

一緒に過ごしてきた半分以上を無視されてきたのに、もう負の感情を抱くようなことはなかった。不思議なものだ。昨日は憎しみにも似た感情が沸き上がったというのに。

来週の試験は簡単なものだろう。友達などできようもなかったあの頃、クラスメートのいない美術部に篭もるかさっさと帰って勉強するくらいしかできなかったのだから。でも、念には念を入れなくては。そう思って図書館へ向かうことにした。


図書館へ来て、まずは利用者カードを作ってもらう。危うく坂田正治と書きそうになるのを振り払い、太田ひかりという名前と、アパートの住所を書く。

そうしてカードを作ると教科別参考書のコーナーへ向かい、教科書準拠版の参考書を数冊手に取り、カウンターで貸し出し手続きをとる。静かなフロアにスーパー袋の音が響くのには耐えられない。

図書館から帰路に就くと、ちょうど一日で最も熱い時間帯になっていた。まだ梅雨前とはいえそれなりに暖かい。半袖で正解だったと思う。

アパートの廊下を進んでいくと、自分の二つ前の部屋の戸が開いて女性が出てきた。目が合う。

「はじめまして。220号室に越してきました太田です。よろしくお願いします。」

お辞儀しながらあいさつすると、向こうも礼を返してくれた。

「218号室の竹内です。よろしく。じゃ、私これから学校だから、じゃあね!」

慌ただしく駆けてくる彼女を手を振って見送り、自分の部屋へ入る。

買ってきたカゴに昨日脱いだ服を入れると、洗濯機のある一階へまた部屋を出る。

洗濯機部屋には誰もいなかったので、勝手に使わせてもらう。洗濯物と洗剤を少し入れ、スイッチを入れる。新型機で助かった。

「君かい、新しい住人っていうのは。」

自分でも洗濯機を扱えたことに安堵していると突然後ろから声がかかった。振り向くと、背の高い男性が大きなカゴを抱えて入ってきた。

「はい。昨日越してきました。太田です。よろしくお願いします。」

「おう、僕は中村陶治だ。106に住んでいる。君は220号室だろう?そこが最後の空き部屋だったからね。」

「ええと、中村さんも洗濯機ですか?」

「見ての通りね。数日ため込んじゃったから女の子には見せられないよ。」

これでも男なんだけどな……。心は。

「よかったら今度一緒にお茶でもしないか?近所にいい店を」

「トージ!」

突然叫び声が聞こえ、中村さんが口をつぐんだ。声の主は戸口からこちらに歩いてきた。

「新しい子に絡むなって言ってあっただろう。しかもその誘いは80年代か!陳腐だ!」

その女性は中村さんの耳元で怒鳴りつけている。俺がそれに引いていると女性がこちらを見る。背筋がビクッとしたような気がした。

「ごめんなさいね。いつものことなの。私は107号の長田。コイツと同じ大学に通ってるの。あなたが昨日越してきた子ね。」

「はい。220号室の太田です。はじめまして。」

「中村がご迷惑をおかけしたようで、ごめんなさいね。」

「いえ、あなたが謝られるようなことでは……。」

「いいのよ。いつものことだし。でもこれで終わりね。あなたが最後だから。」

長田さんが言葉を切る。

「本当は言っちゃダメって言われてるんだけどね、明後日の土曜日にあなたの歓迎会するから。その時になったらまた連絡するけどね。それまでは知らないふりしててね。じゃ、あなたの洗濯も終わったみたいだし、私はコイツを部屋に連れて行くわね。」

「おい、僕も洗濯が……」

「いいの。一旦戻りなさい。じゃ、またね!」

長田さんは中村さんを引きずるように慌ただしく出て行った。残された自分は洗濯機から服を取り出してカゴに入れ、部屋に戻って、干した。

会話だけになると自分が混乱してしまうんですよね。馬鹿なので。

口説くならないようにテンポよく進めたいとは思ってます。

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