7 復讐の始まり
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ある時、商業ギルドを通して冒険者ギルドから呼び出しがあった。
「なんで俺が冒険者ギルドから呼び出されるんだ」と尋ねると、メリーさんが困惑した顔で、「ごめんなさい、何も聞かされていないの。旦那様も当惑しているみたい。とりあえず行ってみてくれるかな」と言われた。
俺は不思議に思いながら、とりあえず人間の街にあるこの街の冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドに行くとたくさんの冒険者が集められていた。周りを見回すと隣のジョセフの顔もあった。
「やあ、お前も呼び出されたのかい?」ジョゼフが聞いてきたので、「ああ、商業ギルドを通してだがな」と答えた。
「見たところ、初級Bクラスの冒険者から呼び出されたみたいだな」
「初級Bクラス?」
「お前は結構常識知らずのところがあるよな。冒険者のクラスは初心者、初級者、中級者、上級者、最上級者、特級者の6階層に分かれていて、その階層が初心者以外はAからDまでの4クラスになっているんだ。だから初級のBはそこそこ戦いに慣れて、中級を目指そうかと言うところかな」
「そうなんだ。ところでジョゼフはどのクラス何だ」
「俺は最上級のDクラスだ。相当強いんだぞ」と少し自慢するように胸を張っていった。
「それはすごいな」
「ああそうだ、すごいだろ。まあ、それだけ危険の多い仕事が多いというわけなのだがな。3人の妻をもって養っていられるのもこのクラスだからだ」とすこし、自慢するように言った。
そんな雑談をしていると、他の冒険者たちは我々に頭を下げてくる。おれが助けたことのある冒険者もいるが、挨拶した後、俺に気が付いてもう一度挨拶することがあるので、すべてジョゼフに対する挨拶なのだろう。
「なんか、他の冒険者たちがジョゼフに挨拶するようだけど、実はかなりえらいのか」
「まあ、偉いと言えばそうなのだが……」と少し照れたように言った。
「俺がこの街で一番ランクの高い冒険者だからな」
それはすごい、おれは感心した。まさか隣人が最高クラスの冒険者だったなんてびっくりだ。
その時、冒険者ギルドの2階にあるバルコニーから声がした。
「今日は集まってくれてありがとう。儂はこの支部の支部長であるフィール・ハーモニーカだ。今回集まってもらったのは、この度このあたり一帯を治めるサンドール伯爵が傭兵部隊を作ることとなり、その隊員集めに冒険者の斡旋を依頼されたからだ。給与は兵士が月金貨5枚、半年間の契約だ。戦死した場合は、給与分を含め金貨50枚支払われる。役職が付けばそれ以上の給与となる。な、これは領主様からの強制依頼なので、断った場合、罰金として金貨100枚の支払いとクラスの降格がある。それでは全員順番に並んで手続きをしろ」と言って、周りをぐるりと見た。
そして、俺を見つけると側にいた男に何かを命じた。
その男は俺のところにやってきて、「トール様ですね。ギルド長がお呼びです。こちらにどうぞ」と俺に声をかけた。
ジョゼフは「お前は冒険者じゃないからな。特別勧誘だろ」と言って、にやにやした。
まあ、森を探索するとき、何回か冒険者を助けることがあったから俺の名前を知っているのだろう。とりあえず行ってみることにした。
その男に連れられてギルド内に入っていくと、ひときわ豪奢なドアの部屋に導かれた。
「此方になります」と言ってドアを開けると、その部屋は立派な応接室で、中央には立派なソファーがあり、そこに二人の男が待っていた。
一人はギルド長で、正面右に座っていた。
もう一人はりっぱな服装をした威厳のある男で正面に座っていた。
こいつは貴族だなと思い、俺は貴族の礼を取った。
「はじめてお目にかかります、私トールと申します。ピストの街に居を構えております。この地を治めるサンドール伯爵様ですね」
男は俺の方を見てニヤリと笑い、立って握手を求めてきた。
「初めまして、プルターク男爵殿ですね」
びっくりした。まさか俺の素性がばれているなんて。何でバレた。さっきの貴族の礼を取ったからか?下手なことをしなければよかったか。いや、ここに呼ばれているということは、前から知っていたということだろう。
俺は、差し出された手を握り返しながら言った。
「なぜ私のことをご存じなのですか?国では戦死したことになっているはずですが」
伯爵ではなくギルド長が答えた。
「この街にいきなり強い男が現れ、多くの冒険者たちから助けられたという報告を受けました。その男の足跡を追っていくと、大樹海から現れたことが判明しました。さらにボロボロの軍服を着ていたことが目撃証言からわかりました」
そう言うと、ギルド長は少し微笑みながら続けた。
「それでさらに調べてみるとブラッカン王国で戦いがあり、殿を務めた軍人たちが全滅したという情報を手に入れました。その中に、戦鬼トールがおり、死体は見つかっていないとの情報が手に入っています。大樹海を単独で生きて抜けられるなど、トール殿以外はあり得ない。それで伯爵に鎌をかけてもらったのです」
「で、どうするのです。私をブラッカン王国に突き出しますか」そう言って、全身に肉体強化魔法を巡らせた。
「大丈夫ですよ。あなたを突き出すような真似はしません。まあ、ブラッカン王国にそんなことにかまう余裕はないでしょうけどね」ギルド長は何でもなさげに行った。
「それはどういうことですか」
「ブラッカン王国でクーデターが起きたのですよ」
「えっ、そればどういうことなのですか」と尋ねたところ、詳細を説明してくれた。
ブラッカン王国の内情は最悪だったらしい。10年以上にわたり行われた戦争は国の財政を破綻させ、軍は壊滅し、王に進言するまともな貴族は粛清された。
すでに国家としての存在すら危うくなったのに、まだ戦争を続けるつもりだった。
貴族達のほとんどはすでに王を見限っていて、王のすげ替えがささやかれるようになった。
その状況に、焦った王はとんでもない方策を取った。
王家の血を少しでも引く、つまり王にとって代わりそうな上級貴族達を王宮でパーティをすると呼び出し、全員を皆殺しにした。
軍が壊滅したのに誰を使ったのか、それは犯罪者たちを集め、国の金を私物化し私兵として使ったそうだ。
これで安心と、王は思ったのだろう、戦費の調達と兵員の調達を官僚たちに命じた。
その夜、武装した下級貴族たちが王宮を襲った。
その中心となったのが、ジャクソン・プルターク男爵だと言う。
「ジャックがやったのか!」
ジャックは俺のいとこだ。正確には俺の父の弟の息子だ。
叔父は学問がよくでき、文官として独立して男爵になった。
ジャックは兄と同い年だが、頭がよく、リーダーシップもあり、子供のころは兄と俺、ジャックとジャックの弟のトニーの4人で遊んだものだ。
その中で、ジャックはリーダーになっていろいろいたずらしたり、冒険、と言っても子供のレベルの話だが、したりしたものだった。
「しかし、何分人員不足だったのでしょう。国王一家と取り巻きの貴族を取り逃がしてしまい、とんでもないことに我が国に逃げ込んできました」
「ここからは私が話そう」と伯爵が言った。
「逃げてきたのは良いのだが、王位復帰のための兵を貸せと言ってきた。当然王は断ったが、第一皇子が兵を出すべきと言ってきた」伯爵は困ったように言った。
「王と王弟は反対している。特に王妃はボルガランド王国の出身で、絶対にダメだと言って猛反対している。そもそも王妃はブラッカン王国の王家を受け入れること自体反対だったからな」
それはそうだろう。いきなり攻め込んできた国の王家なんて、受け入れるなんて考えられないだろう。
「ところが第一皇子はそんな意見に耳を貸さず、出兵を主張している。仲間の若い貴族たちと何やら企んでいるみたいだ」伯爵は忌々しそうに言った。
「絶対に何かとんでもないことを起こそうとしていることは間違いがない。第一皇子は本当に考えなしで、無知で、自尊心だけ高く、とても王の器ではない。それに比べて王弟さまは経験もあり、傘下の貴族達に対する心配りもあり、まこと王の器と言えるだろう」
この伯爵は王弟派だからな、話は半分に聞いておかないと。
しかし、復讐相手がこの国に来ているのは驚いた。これはチャンスかもしれない。
「ブラッカンの王族たちとその一派の命、私にいただけませんでしょうか」と尋ねた。
「どうするつもりかね」
「恨みを晴らしたいと考えています」
「恨み?」
「父も兄も国のために戦い、戦死しました。王はその献身を罵倒し、踏みにじり、あまつさえ我が家を罰しました。この恨み晴らさなければ父も兄も、二人を失ったことで気落ちして亡くなった母も浮かばれません。夢に出るのですよ。復讐しろと訴えてくる三人が、私を恨みがましい目で見てくるのを」
俺の顔がよっぽど変だったのだろうか、伯爵はこわばった表情でうなずいた。
「君の恨みはよっぽどなんだな」ぽつりとギルド長はつぶやいた。
「王弟殿下、チャク・ベナム様に伝えておこう。それできみには頼みがある。今度新設する傭兵部隊の隊長を任せたい」
俺は悩んだ。二人の妻たちとの幸せな日々を守りたい気持ち、家族の復讐の機会が来たことに対する喜び、いろいろな考えが浮かんだ。
そこに伯爵の護衛の一人であろう、かなり鍛えられた体をした男が口を開いた。
「伯爵さま、本当にこいつは強いのですか?戦鬼とか言いますが結局は敗残兵の脱走兵ではありませんか」
「あんた誰だい」俺は微笑みながら訪ねた。
「俺はこの伯爵軍の指揮を任されているカマーセ・ドックスと言う。お前みたいな商人が傭兵部隊を指揮できるとは思わない。そもそも王を裏切るなど武人の風上にも置けないやつは、伯爵さまの前に立つことさえ許されない。身の程をわきまえろ!」
俺は笑いながら言った。「あははその通りだ。俺は脱走兵さ。しかし、くそみたいな王のため死ぬ気はないんだよ。お前みたいな青二才にはわからんか」
するとその男は激高して、「おまえ、言わせておけば」と殴りかかろうとした。
その時伯爵が「やめよ」と言った。カマーセは止まったが「伯爵様、馬鹿にされたままでは武人としての矜持が成り立ちません。一度手合わせをさせていただきたい」と言った。
伯爵は俺の方を見て「このように言っているが、つきあってもらえるだろうか」と言ってきた。
俺はニヤリと笑い、「まあ、いいですよ」と言った。
腐れはて、この地に落ちてきた俺だが、やはり武家に生まれた者、久しぶりの戦いに心が躍っているのを感じた。
決闘の場所はギルドの闘技場で行われた。
沢山の冒険者や伯爵軍の関係者が見学に詰め掛けていた。
カマーセは剣を構えていた。刃引きはしてあるようだが当たればただでは済まない。
俺はボーと突っ立っていた。
「おい、お前剣がないのか。そうか商人だものな。ギルドの者があるだろう。貸してもらえ」とカマーセは吐き捨てるように言った。
「いいや、持っているよ。でも必要ない」
「何!」
「弱い者いじめの趣味はないんだよ。まあ、悪い子にはおしおきしなくてはな」と薄ら笑った。
カマーセは激高し、突っ込んできた。
俺は剣をひょいとかわすと剣の腹を殴ってたたき折った。そのあと腹に一発食らわせた。
カマーセは吹っ飛んで壁に激突した。
「おい、まさかこれで終わりか」とあおると、「まだだ」と言いながらふらふらと立ち上がった。
「新しい剣をもらって来い。待っていてやるから」と言うと、「バカにしやがって」と言って殴りかかってきた。
とりあえず、ひょいとよけると顎、肩、腹に3発ほど拳を入れた。
カマーセは吹っ飛び、地面にたたきつけられると、縦に2回転した。
俺はてくてくと近づくと、気絶しているカマーセの襟首をつかみ、二三発ビンタをかました。
「うー」と気が付いたようだ。
「おい、まだ終わってないぞ」と言って、拳を振り上げた。
「もう勘弁してください。許してください」
「さっきの威勢のいい口はどうした?」
「申し訳ありません。図に乗っていました」
「男が簡単に謝るものじゃないだろう。男じゃないならあそこは要らないな。もぐぞ」といって、下半身に手を伸ばした。
「お許しください」ついにカマーセは泣きだしてしまった。
ちょっとやりすぎたようだ。
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