3 村に着いたら、運命が動いた!
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しばらく歩くと、道に出た。馬車が一台通れるかどうかの細い道だ。
道は石で舗装されていることはなく、少し盛り土をしているだけの簡易な道だった。
しかし、雑草に覆われていないところを見るとまだ使用されていると判断できた。
さらに道があると言うことは、人の出入りがあると言うことだ。
俺はどちらの方に行くか迷った。道は南西から北東に通じていたが、南を目指していたので、南西に進むことにした。
3時間ほど歩くと、村に着いた。
その村は高い木の杭で周りを取り囲んで、防壁としており、出入り口の門は厚い板で出来ていた。
そこにいた門番の一人に声をかけた。門番は獣人だった。
「私は、隣国から来たトール・プルターク男爵である。故あって馬車と従者を失い、さまよってここに来た。何日か逗留させてほしいのだが」
門番は胡散臭そうに俺を見たが「今村長を呼んでくる。しばらく待つように」と言って、その場を離れた。
仮にも貴族に対する口の利き方ではなかったが、こんなところに外国の貴族が現れたと言ったら、怪しむのは当然だ。まあ、今回は許そう。
しばらくして、村長が現れた。村長も獣人だった。俺を見ると胡散臭そうにして、「何しに来た」と言った。
「国の用事で南の国を目指していたが、事故で馬車も従者も失い、ここまでさまよってきた。ここを治める領主の居所を教えて欲しいのと、しばらく休みたいので村に逗留させてほしい」と丁寧に言った。
手を出してきたので、ブラッカン王国の金貨を一枚あたえた。
これ一枚あれば、平民だったら一月は暮らせる金額だ。
「おい、あの家に案内しろ」と村長は門番に行って戻っていった。
門番はめんどくさそうに「こっちにこい」と言って、案内してくれた。
門番が案内したのはひどいあばら家だった。
そこには親子なのだろう、母親と娘がいた。
二人はうつろな目で俺を見ていた。
「こいつの世話をしてやれ」と言い捨てて門番は帰っていった。
二人は、やせ細り服はボロボロで、体のあちこちからイカ臭いにおいを漂わせていた。
二人が小屋の中に入ると、汚れた毛布が敷かれていた。
二人は来ていた衣服を脱いだ。元々貫頭衣のような服だったので脱ぐのは簡単だった。
二人の頭に耳があったので、獣人であることははっきりしていたのだが、脱いだらも狐のしっぽが見えた。孤人族らしい。
体は薄汚れていたが、それより目を引いたのはやせ細ったからだと、何かでたたかれたような怪我の跡だった。
俺は戦地で、ちょっとした怪我なら治せるぐらいの治癒魔法を会得していた。
薬草と、治癒魔法で大体の怪我なら自力で治せた。そうしないと誰も助けてくれなかったからだ。
本来軍には衛生兵や軍治療師が付いてくるのが当たり前なのだが、現王の「無駄」の一言で廃止された。
俺は思わず、彼女たちに治癒の魔法をかけた。傷がきれいになくなり、二人ともびっくりしているようだった。
次は汚れた体を洗わなくてはと思い、風呂を用意した。さっき自分を洗った川で、大きなドラム缶に水を幾つも汲んであるので、そのうち一つを取り出し、薪を集めて火を起こした。
適温になったら、そのドラム缶からお湯をたらいに移し、まずは子供の方からお湯につけて洗い始めた。
石鹸を使ったが、お湯を一回変える必要があるぐらい汚れていた。
ちなみに下半身は自分で洗うよう指示し、タオルを渡して自分で洗わせた。
次は母親の番だ。
背中を洗い終わると、さすがに大人なので自分で洗うように言って、俺はその場を離れた。
大きな焚火を起こし、お湯で二人の貫頭衣を洗った。また、家にあった毛布も洗った。
すごく汚れていた。
こげない距離で焚火の近くに服と毛布を干すと二人とも洗い終わっていた。
新しいタオルを足して体を拭くように言って、焚火に当たるように言った。
二人は言うとおりにした。
娘のおなかからぐぅと言う大きな音がした。
顔を真っ赤にした娘は下を向いていた。
飯を作ろう。
鍋に水を入れ、薬草やキノコ、さっき解体したアタックラビットの肉をたっぷり入れ、ぐつぐつ煮始めた。
その間に俺も風呂に入り、後片付けをした。
ぐつぐつとスープは煮えてきた。灰汁を取りながら、しばらくに詰めた。
服が渇いたようなので、二人に服を着せた。二人とも少し驚いていた。
何をさっきから驚いているのかな?
スープができたので、スープをよそいで軍用の堅いパンを出して二人に食べるように促した。ちなみにパンは固いからスープに浸してから食べるように指示した。
二人は恐る恐る口にしたが、一口食べると、後はむさぼるように食べた。
あっという間に食べ終わり、もっと欲しそうな顔をしていたので、「いくらでも食べな」と言ってお代わりをよそってやった。
何倍か食べると二人ともお腹がいっぱいになったようで、娘の方はこっくりし始めた。
小屋に抱っこで連れて行き、軍用毛布にくるませて寝かした。
毛布を洗ったら、かなりボロボロになってしまったからこれじゃ使い物にならないと思ったからだ。
母親にも軍用毛布を貸して、これで寝なさいと言ったところ、「どうしてこんなにやさしくしてくれるのですか」とぼそりと尋ねられた。
「泊めてもらいますし、怪我して弱っている人を見たら助けようと思いますよ」
実は半分嘘です。二人とも痩せて薄汚れていたのだが、かなりきれいな女性で、15歳から10年間女っけなしの戦場で、生き死にの境をさまよっていた俺にとって、仲良くなるチャンスだと思ったわけです。本当に下種な考えだ。俺は少し落ち込んだ。
しばらくして母親はぽつりぽつりと話を始めた。
母親の名前はアリアと言い、村の村長の家で召使をしていたそうだ。早くに両親を失い、村長の家で働いていたら、15歳の年に前村長に無理やり関係を持たされ、子供を産んだそうだ。その子が今寝ている娘のフィリアだそうだ。
その後も半分妾、半分使用人のような感じで村長の家に住んでいたが、1年前に前村長がなくなり、正妻の長男が後を継ぐと家を追い出されたそうだ。それでこのあばら家に住むことになったのだが、村の男たちが毎日のように来て、二人を慰み者にしているとのことだ。
それで、食べ物を置いて言ってくれればよい方で、何も持ってこなかったり、はては少ない食べ物を食べ散らかしたり、すくない持ち物をもっていってしまうものもいるそうだ。
子どもはできないのか尋ねると、アリアはさみしく微笑んで、最初に前村長に襲われたときから避妊用にヒニン草を食べているそうだ。今では二人とも子供ができないよう、毎日食べているとのこと。
俺のことは何と呼んでいいか尋ねてきたので、トールと呼んでくれと言ったら、「トール様、もしよかったら私をお使いになりませんか。こんなに良くしてもらってお礼一つできませんのでせめてこの体でご満足いただければ」と言ってにじり寄ってきたので「気持ちはありがたいが、大丈夫。第一アリアさん、体が本調子ではないでしょう?無理はしないでください」と言って微笑んだ。
格好をつけていますが、実は怖いのです。俺童貞です。25年間女性と話したことすら数えるほどしかない、完膚なきまでに非モテ童貞です。そんな奴がいきなり女性に言い寄られても焦ってしまい何もできません。したいけど怖いのです。おまけに体を洗って、傷を治したら、結構美人なのです。大人の色気もあります。そんな女性に非モテ童貞が何かできるはずないでしょう。
「さあ、寝ましょう」と言って、あばら家に二人で入っていった。
本当に寝るだけです。俺は軍用毛布をひっかぶって寝てしまった。
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