9 ブラッカンへの帰還
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しばらくして、王弟が即位し、新しいベナム国王となった。
しばらく儀式が続いた後、俺はサンドール伯爵とともに、新王の前に呼ばれた。
俺たちは王の前で跪いた。周りには多くの貴族達が並んでいた。
王は言った。
「今回の功績に基づき、皆には褒賞が与えられることとなる。しかし、特に傑出した功績をあげた二人にはこの場で表彰したい」そう言って、
「サンドール伯爵、この度の功績は目を見張るものがある。南部でいち早く私への支持を表明することで、他の貴族達をけん制し、離反を防いだ。また、私に付き従い、この度の即位に力を尽くした。よって、侯爵に陞爵するとともに宰相に任じ、報奨金と領地をあたえる」
次は俺に向き合い言った。
「そなたはサンドール侯爵とともに我に従い、余計な血を流すこともなく、王子を捕らえる功績を果たした。よって、ベナム王国準伯爵の地位を与える。また、ブラッカン王家が残していった財宝はそなたに与え、捕虜とした第二王子と元貴族達をブラッカンに引き渡す」
「有難き幸せ」
あれ?ベナムの爵位もらったら、ブラッカンに帰れるのかな。
まあいいか、とりあえずブラッカンのジャクソンに連絡を入れるか。俺はすぐに手紙を書いた。
俺は、王都に屋敷をもらった。貴族街だが、平民街との境あたりにある屋敷だった。
今回の事件で、王子に味方し取り潰された貴族は少ない。
皇子の取り巻きの貴族達は、国王襲撃の時に殺されるかとらえられるかして、その家も爵位はく奪、追放になったが全員が宮廷貴族で数もそんなに多くなかった。
なので、俺がもらった屋敷は元々富裕な商人の持ち物で、国が買い取ったものを俺に下賜したものだった。
まあ、今までの家よりも広くて部屋数も多いので、悪くはないけどな。
なので、アリアとフィリアを呼んで、一緒に暮らし始めた。
ついでに、獣人のメイドも雇った。ピストの街の獣人街で募集したら、かなり集まったので、アリアとフィリアに選んでもらった
アリアとフィリアは下級貴族の中でも最高位の準伯爵の正妻なのに、メイドたちに交じって家事をやろうとするので、メイドたちに止められていた。
ちなみにアリアは妊娠していた。最後の晩に種付けしたときにできたらしい。
「もしかしたらあえなくなるから、子供だけでもと思ってヒニン草を使わなかったの」だそうだ。俺とフィリアで喜んで飛び跳ねた。
そして、アリアの体を気遣うようフィリアとメイドたちに注意した。
「獣人は丈夫だから心配しなくても大丈夫よ」とアリアは言う。直前まで働いて生まれそうになったらコロンと産むのが普通なのだそうだ。それでも注意しろと、厳重に言い聞かせた。
ジャクソンからはすぐに返信が来た。生きていたことを喜ぶとともに、ブラッカンの窮状を知らしめてきた。ブラッカンは今大変な状況らしい。軍は壊滅、税の取り過ぎ、徴兵のし過ぎで生産人口は激減し、戦費のせいで経済はガタガタ、貴族は下級貴族以外は殺されてしまったため、国家の運営にも問題をきたしている状態である。
助けてほしい、すぐにでも帰ってきて欲しいとのことだった。
俺は王に国に帰ることを伝えた。
傭兵部隊はすでに解散し、俺は自由の身になっていた。
王はしばらく黙っていたが、「ブラッカンに帰るのか。いまあの国は大変なことになっている。何かあれば協力するからいつでも申し出てくれ」
非常にありがたい言葉だ。まあ、只より高い物はないと言うが、好意は受け取っておこう。
「有難き幸せ」そう言って感謝を示した。
妻たちは留守番をしてもらって、急ぎ国に戻った。
国はひどいありさまだった。
首都ベーリングは荒れ果て、人々は項垂れて、道端に座っていた。
王宮に着くと、ジャクソンが出迎えてくれた。
「トール、よく生きていたな。本当に良かった」と泣いて喜んでくれた。
「ジャック、よくやってくれた。この国を救ってくれたのだな」
「ありがとう、でも問題が山済みだ」
まず、東西北と戦争状態は続いており、それなのに軍は壊滅状態、兵士の徴兵し過ぎで男子人口の減少は著しく農業、工業生産力にも影響が出ている。
おまけに貴族内部でも対立があって、今回のクーデターを主導した内政派貴族と今回クーデターを傍観していた外交系官僚が冷戦状態で、外交系官僚たちは戦争終結のための外交努力を放棄しているとのこと。
「なあ、もしよかったら、ベナムの力を借りてもいいか。俺はあの国の爵位ももらっている。あの国にはいろいろ無理が聞く。下手をすれば従属国扱いになるが、このままでは国が亡ぶぞ」
ジャックは考え込んでいた。そして口を開いた。
「お前、この詰んでいる国をどうにかできるのか。だったらやってくれ。この国を救うためには何でもするぞ」
「じゃ、まずお前が王になれ」
「えっ」ジャックはびっくりした声で言った。
「皇子を一人捕虜にしている。その養子になるんだ。そうすれば正式に王太子になれる」
「その王子は」
「すでに拷問で意思を殺してある。声帯も性器も除去済みだ。そいつを王位につけてお前が王太子になるんだ。そうすれば、この国の決定権を握れる。今は合議制でやっているのだろ。それじゃ決まる物もきまらないだろ」
ジャックは黙ってしまった。図星だったようだ。ジャックは男爵だし、影響力が足りないのだろう。
俺は一旦ベナムに帰り、捕虜や王家が国から持ち出した財宝の内で残して行ったものをもった。さらに元傭兵部隊の隊員たち、獣人街の人たち、ベナムの下級貴族の次三男などが付いてきた。
傭兵部隊の皆は、ジョゼフが声を掛けたら、大部分が一緒に行くと言ってくれた。
獣人街の人たちは、夫が傭兵部隊に参加している者が多く、家族とともに移住してくれることになった。
さらに、獣人を妻に持っている男たちも、差別なく暮らせるならと一緒についてきてくれることになった。
さらに、それにつられる形で獣人街の女たちも移住してきた。
男の獣人は出稼ぎなので村に帰る場所があるが、女は村を出るともう村に帰れない決まりになっていたため、それならば新天地で夫を探そうかと付いてきたものが多かった。
ちなみに商業ギルドの派出所長、マーチャントさんら何人かの商人もついてきた。「商売のネタがたくさん転がっているのが目に見えています。これを逃したら商人ではありません」と笑って言っていた。
ブラッカンに着くと、彼らに住む場所を提供した。幸い、首都には空き家が多く住む場所の確保に困る事はなかった。
ちなみにアリアとフィリアも一緒にブラッカンに来た。俺が昔住んでいた男爵邸がそのまま俺たちの住みかとなった。メイドたちもそのままついてきたが、昔から我が家に仕えていた者が2名、屋敷を守っていてくれていた。びっくりしたが、その忠義心に感動した。
彼らを旧職に戻し、忠義の証として報酬を与え、そのまま雇用することにした。
次はジャックの即位式だ。
王位に就くために必要な王笏、王剣、王玉はすべて王家一家の住んでいた離宮に置き去りにされて、そろっており、第2皇子の即位は形式通りに行われた。
そのあと、ジャックは王太子として立皇した。
おれは、軍の再建に乗り出した。傭兵部隊の兵士たち、ベナム貴族の次三男を隊長クラスとして、兵を集めた。
とりあえず、5千の軍を集めた。
訓練をしながら、動けるように軍備をそろえた。武器はベナムから供与された。
国の経済的な復興は、商業ギルドの派出所長だった、マーチャント・バイト騎士爵がいろいろ手を尽くしてくれている。
経済政策に難儀していたジャックは彼に騎士爵の地位と名字を与え、ブラッカンの経済責任者に任命した。
そうしたら、従来の産業である鉱業の振興のほか、山間部での農業の振興や特産の山芋からお酒を造ったりと、大活躍だった。
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