279
王女殿下にお会いになって王太子殿下は無事に王女殿下を見初めて結婚を申し込んだのだ。
本当に良かった。
「私なんかより、王女殿下の方が遥かに美しい人でしょ?気品もあるし落ち着いて淑女然とされてらして。王太子殿下も王女殿下に会われたら目から鱗が落ちたみたいだったわ。本物の王族は違うのよ。多分、紛い物を掴まなくて良かったって感じたはずよ」
そこもだけど、西の外交官の妻を奪ったとか…しかも王太子が…そんなの洒落にならんだろ!国交断絶延長の危機だったじゃん。
それにしても王太子殿下は金髪碧眼に免疫無さ過ぎだったんだな。それに理想に目が眩んでいたんだ。姉ちゃん意外とグッジョブだったのかもしれない。
「ザックさんは、姉ちゃんに再会した時、大丈夫だったのかな?」
確か彼は姉ちゃんへの想いを引きずって引きこもりになったと仰っていたけど。
「スンとも表情が動かなかったわよ。もうリサちゃんがいたからじゃない?でもあんたの侍従をしてたって聞いて納得したわ。だからもう吹っ切れていたのよ。それか懲り懲りだと思ったかどちらかよ」
それに関してはノーコメントだ。多分、リサさんのお陰だという事で。
陛下とリリベル一行は無事に5日で子爵領に到着した。
「陛下!迎えに来て下さったの!」王妃様は陛下に抱きついた。
陛下も目尻を下げて王妃様を抱き締め返している。夫婦の仲は円満なんだな。良かったよ。
だが「ねえ陛下!今からソリ遊びに行くの!陛下も行かない?」
王妃様は童心に返っておられた。
「まあまあ王妃様、陛下は到着なされたばかりでお疲れよ」
「公爵はどうした?」
「公爵様は、王妃様に連日お付き合いなさって、お疲れのご様子で今はお部屋で休まれておりますの」
公爵、ダウンしたか。それで婆様が王妃様と一緒にいるんだ…。
「おお!年を重ねておるが鉄壁の淑女じゃないか!こんな所にいたのか?!」
「まあ?その赤い髪、もしかして小公爵様?」
婆様、リコピンとお知り合いなの?でも小公爵どころか公爵を通り過ぎて引退してるけど。
「そう言えばリコ、以前、伯爵令嬢に婚姻の申し込みをしていたな?」
わー!!陛下!暴露ダメ!
「急に消えたから、俺との婚約が嫌で失踪したのかと…」
「違うわよぉ。駆け落ちしたの」「駆け落ちっ!」
「前子爵夫人、カッコいい!」王妃様!そこ誉めない!
「小公爵様のお申し出を両親が受ける前に逃げちゃいましたわ。私、歳下より歳上が好みでしたの」
唖然とするリコピンをリリベルは引きずって、とりあえず王妃様のソリ遊びは体力の余った私とリコピンが行く事になった。
ソリの所に行くと父が待っていた。
「おっ?リリお帰り。帰って来たばかりでソリ遊びか?」
「それよりお父様、こちら私の護衛騎士でリコピンです」
「‥‥‥ただの騎士じゃないだろ?」その通り。でも説明は後だ。
それに気になる事が他にまだある。
「子爵か?宜しくな。俺の事はリコピンでいいから。それより、その馬…白いな…」
ああやっぱり気付くよね?その馬、野生馬だよね?
「宜しくリコピン。この馬はタナカだ」
いや!馬の名前を聞いてんじゃないぞ!
「早く行きましょう子爵!帰りが暗くなるわ」
「ああそうだな」 ええっ?!
行きは屋根の無い荷馬車の様な全席前向き4人乗りの小型の馬車だ。父が御者で山の中にどんどん入って行く。
だが走っているのは野生馬…多分、北のスネイプニルだ。登りなのにもの凄いスピードだ!
「おぉ!なんだスゴいスピードだ、これ」
リコピンですらこの感想だ。だが王妃様は「イケイケーッ!」と右腕を上げてノリノリだ。
あっという間に雪が積もる山の中腹部分に到着した。そこで一旦止まり、皆が降りた後、父が馬車のレバーを上げると車輪が収納されソリに早替わりだ。もしかしてこれで山頂近くまで?
「山頂までは行かないぞ。だがここからは零下だから防寒か風魔法で防げ。スピードも出るからな」
「リコピン大丈夫?王妃様は?」
「私は平気。ちゃんと防寒してるしお腹と背中にカイロを入れているの」カイロは火魔法の魔力石だ。
「俺は水属性だが…筋肉は裏切らん」
やはり王族は水属性が多いんだ。しかし筋肉だけでは…でもとりあえず乗るか。
ソリは父が言った通り、凄いスピードで山中を走った。下りは特にヤバかった。でも王妃様はケラケラ笑っている。
どんだけスピード狂なの?リリベルはこっそり植物達の力を借りて風を防いだ。途中でリコピンにもそれを広げた。
ソリになってから1時間くらいで終わったが、リコピンはすっかり無口になった。
帰りも途中で馬車になったが下りだったので行き以上のスピードで帰着した。王妃様はご機嫌で別荘に戻って行かれたがリコピンは私と父で屋敷まで運んでサウナに放り込んだ。
間もなく解凍されるだろう。




