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「リリベル嬢、ありがとう。また君の世話になった」
あれから王妃様はお食事を摂られるという事で、ザック殿下と部屋を出て来た。
食事ができるなら、もう徐々に元気になっていくだろう。少し安心できる。
「ザック殿下、王妃様は王女様の事もですが、ザック殿下を失う事が最も恐ろしかったのだと思いますよ。それは殿下が単に息子だからという訳ではなく…王妃様は赤い髪の、この国の王家に多い色を持って産まれた殿下を見て“初めてこの国に受け入れられた”のだと感じたと仰ってましたから、ザック殿下は王妃様にとって“この国に存在してもいいという証”なんだと思います」
「母上がそんな事を君に?」
「そうです。お茶会でそう申されました」
だから殿下の側に私は相応しくないだろうと、最初は牽制されたんだと思うんだよね。調子に乗るな的な。
でも、もう北の国王陛下がいらして、それも変わってしまったけど。
だからと言ってリリベルがザック殿下の側にずっと居てもいいという話ではない。決して思い違いをしてはいけない。
最近、近くなり過ぎているんだ。ザック殿下と。
リリベルがそんな事を考えていると、ザック殿下が
「リリベル嬢、もう少し待っていて欲しいんだ」と仰った。
一体、何の事?とザック殿下を見るが
「分からなければいい。だが、もう考えているから」
ザック殿下は、そう言って帰りの馬車まで送って下さった。
「父上、兄上、私は学院を卒業する時に王位継承権も放棄して、王族を抜けようと考えております」
アイザックはリリベル嬢のお陰で、王妃が回復中である事を報告した後、続けてそう言った。
さすがに父も兄も驚いたのだろう。直ぐに言葉が返ってこなかった。
「アイザック!それはリリベル嬢のせいか?彼女が子爵令嬢で王家に嫁げないからか?」
「兄上、私はいずれ、兄上が国王になり王女殿下が王太子になれば臣下に降る予定です。それが少し早まるだけです」
「そうだ。確かにそうかもしれないが、少しどころか早過ぎるぞ!父上はまだお若いし、10年後だって私が即位しているかどうか。私の即位が決まってからでも、それでも遅くはないぞ」
「兄上、私は将来、やりたい事が見つかったのです」
「それはっ「第三王子、まだ学院の半分が過ぎたばかりだ。今のタイミングではなく最高学年に上がってから決めてもいいだろう。それとも何か…そうか子爵令嬢を早く繋ぎ止めたいか?」
それもあるが、それだけではない。
「子爵令嬢は学院生の身でなければ、爵位を陞爵されてもよいほど功績を挙げていると、余は思っておる。それは議会でも反対される事はないだろう。だから、今、直ぐにでもそなたの婚約者に据えることは出来るが、それでは嫌なのだろうな」
「父上、私は彼女に私の側を強要したくはないのです!」
「子爵令嬢に選ばれる為に王族籍から抜けると?」
「‥‥‥」「選ばれなくても戻れんぞ」
「覚悟の上です」
「分かった。余の心に留めておく。だが今は決断には時期尚早だ。まずは王太子教育を終わらせろ。そして学期末では子爵令嬢から主席を奪い返せ。実力を付けねば令嬢にも見向きされんだろう。1年以内でやり遂げろ。分かったか?」
「はい!父上」
アイザックは時間が惜しいとばかりに謁見室を飛び出して行った。
「父上、王族を抜ける者に王太子教育は要らないのでは?」
「王太子、本当にそう思っているのか?アレが子爵令嬢以外に、何を目標にしているのか知っているのか?」
「さあ?それに最近まで子爵令嬢の事、ただの側近だと言い切っておりましたし」
「そうか。それはアレが少しは子爵令嬢のレベルに近付いたってことだな。面白いな。ハハハハハッ」
「父上…笑ってる場合ですか…」




