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盆ダンスの午後の部が終わっても、マレシオン様はずっと無口だった。何か考え事をされてらっしゃるのか無表情だし、さすがに侯爵令息達が焦り出していた。
でもシャーロット嬢は全く気にしていない。
「どちらに加担するか腹を決めて下さい」って何宣言?
翌日も晴天の中、盆ダンス大会が始まった。
今日はあちこちの会場で気軽に参加できる、参加型盆ダンス大会だ。
「ビーバーちゃん、街の中央広場の盆ダンスが男女の告白ダンス会場なの。そこが一番、観光客には見応えがあるし面白いと思うわ」
「もしかして、フンドシの名前を見せるという?」
侯爵令息達の方が興味津々だった。
「そうそう。男性からはね」「女性側からは?」
「踊りながら意中の男性に近付いて行って、踊りでアピールするの。でも男性に別の好きな女性がいればフンドシの端を見れば分かる」
「名前無しの場合は?振る時と受け入れる時はどうするんだ?」
「もちろん踊りで返すのよ」
「おお。スゴい!それ見に行きましょう!」
観光と言うより完全な野次馬だな。
朝食後、また皆でユカタをお借りする。
今日は何色にしようか?真剣に考えていると
「リリベルさん昨日のターコイズブルーのドレスは、とてもお似合いでしたよ」
とシャーロット嬢が何枚か持って来てくれた。
何か怪しくないか?何か企んでない?でもシャーロット嬢はなかなか良い趣味をしている。
面倒臭くなったリリベルはシャーロット厳選のユカタから一着選ぶ。
「リリベル嬢、帯はこれが良いわ」
リリアン様が持って来て下さった帯はクリーム色にゴールドの線が入った物でオシャレだった。
リリベルはされるがままにユカタを着せられ髪を纏められる。何だか抵抗する気も今更、起きない。
着替えが終わって集合場所に行く。
男性陣は今日は全員、白地に藍色で模様の入ったユカタだった。
ザック殿下もいた!火山の国の女王陛下はどうなったんだろうか?
「ビーバーちゃん。トンビ女王は、もう今朝、帰ったから安心していいよ。そのユカタ似合ってる。可愛いね」
「王女殿下もその藍染めのユカタ素敵です」
火山の国の女王陛下はたった1日しか居なかったんだ。
「やあビーバーちゃん。明日はとうとう帰るんだね。寂しいな〜今日は最後まで楽しんで行ってよ」
「ザウルス様!王女殿下とお揃いのユカタだ!」
「そうそう。カップルになるとユカタを合わせるんだよ。柄とか色とかね」
「わあ素敵です!」
馬車で途中まで行って、そこからは人も多いし通行止めなので会場までは徒歩だ。
「リリ〜!」ララ姉ちゃんご夫妻とも合流したが、この夫婦もお揃いのユカタだった。
中央広場はすでに人で一杯だ。音楽が流れ沢山の人が踊っている。
「ビーバーちゃん!見てて、ザウルスと踊って来る」
二人で手を繋いで踊りの輪に入って行った。皆が二人を見て場所を空けている。王女殿下だからかな?いや違うかも。こんなに人がいるのに藍色のユカタの人がいない。
「ビーバーちゃん、盆ダンス大会で藍染めのユカタを着て良いのは第一会場で踊る人だけなんだよ。盆ダンスの名手だから藍色のユカタの人を見ると、皆、敬意を示して場所を空けたり提供したりするんだ」
今日も同行して下さった第二王子殿下が説明して下さった。
「第二王子殿下も踊られたのですか?」
「そう。あの二人が踊る前は妻とね。王太子妃殿も、ずっと盆ダンスを習っていて本当は今年、兄とデビューのはずだったんだ。でも懐妊の方がめでたいだろ?今日の夕刻に国民に向けて父が発表するんだ、懐妊の事を。すでに新聞では号外が出ているよ」
「わあ」
「そう。だからお祝いで盆ダンス大会が明日まで1日延長する予定だよ。国を挙げてお祝いダンスだ」
「スゴい時に来た!」
「そうだね。明日帰るのは勿体無いけど仕方ないね」
「あっ!ララ姉ちゃん!」
その時、王女殿下の隣で踊っていた姉が貧血なのか座り込んだ。
ダンナ様に直ぐに抱えられて踊りの輪から出て来たけど大丈夫だろうか?




