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「リリベル嬢、悪いな」「へっ?」
わーっ!!打ち合わせと違うじゃん!いきなり持ち上げてきた!何でー?!
急いで体勢を合わせて回転する。
観客は大歓声だが「何て事してくれちゃってんの!私はネコか!?」だ。
チャチャチャのステップを踏みながら睨むと
「何かボーッとしてた気がしたからさ」と。
随分な荒療治だ。
だが、ありがとね!ザック殿下とのダンスはバトルだった。それを思い出させてくれて感謝しかない。
おのれぇ!楽団ではないから音楽のアレンジはできない。この既存の音楽で仕掛けるのは限られるはずだって覚悟したのだが、この後の振り付けは練習通りだった。有り難いけど変な感じ。
ザック殿下ずっと微笑んでいる…。
いやっダンスの時は笑顔は大事だけどさ。でも違う。何だろう?初めて感じる違和感だから説明できないな。でも嫌じゃない。
むしろずっと…ずっと何だろう?答えが出ないままダンスが終わった。
殿下と向かい合って礼をする。
スゴい大歓声が周囲から聞こえるんだけど、何だか自分だけ無音の中に居るみたいだ。
「ビーバーちゃん!スゴい!凄いダンスだった。ワルツ以外は初めて見たわ。私もザウルスと練習しようかな」
「えっ?王女殿下冗談でしょ」
「アハハハハッ」
王女殿下に抱き締められて「ハッ」と我に返ると音も戻って来た。
「ビーバーちゃん、私達これから男女混合踊るから見ていてね」
王女殿下がザウルス様とステージの方に向かうのを見送っていると
「やられました。あなた方、仕組んでたんですね?」
とマレシオン様が仰った。
「仕組んでたって…何をですか?」
リリベルには心当たりはない。マレシオン様を真っ直ぐに見ると
「今はいいです。後で」と仰った。
何の事だろうかと不安になったが、そんな気分は吹き飛んだ。
男女混合、盆ダンスが始まったのだ。
これは“男女の掛け合い”だとBENTOO屋の店主が言っていた。
踊りで気持ちを伝え合う。踊りで会話するの?
リリベルは踊る男女らを食い入るように見つめる。
背中の、意味の無いアホなチーム名も気にならなくなった。
ただ踊りを見続ける。
男性の、女性に乞うような踊り。逆もある。片想いで振られるコメディのような踊りもあれば、片想いで泣いているような踊りもある。
そして両想いの踊り…王女殿下の舞うような手つきが、ザウルス様の手に応える。西のダンスのように決して触れ合わないのに情熱的だ。見つめ合う視線も凄いんだ。
あ!フンドシの端が見える。でも競技では名入れは禁止らしいから残念だ。
「リリベル、盆ダンスって西のダンスより情熱的よねぇ。そう思わない?」
「そうだね、ララ姉ちゃん」
「私達もアレを踊れるのよ。さすがに会場で披露する程の腕前じゃないけど」
「へえ。スゴい」
「そりゃあ3年近く南の国にいるからね〜。リリベルにも教えてあげようか?」
「王女殿下にも言われたな〜」
「殿下にも仕込んであげるわよ。多分、二人とも一晩で覚えるでしょ?」
「殿下には、そんな暇はないよ。すごく忙しいもの」
「じゃあ公爵令息?」
「姉ちゃん、公爵家は無理だって言ってたのに」
「王家も無理だわ」「そうだね。だから踊りはもういいや」
「そっか。じゃあさ下着!セクシーなのリリ用に用意しとくから」
「いつ使うんだか?」「毎日よ!オシャレは下着からよ」
「先にルト兄の所が必要かも。義姉が二人目欲しいって」
「サイズさえ、分かればねぇ」
「ライ兄とエリオット様のは?」
「ああ殿下のご用命のヤツね。任せといてよ。二人共、逃さないわよ」
「姉ちゃん、お土産買い過ぎたから商会に運ぶのお願いしていい?」
「あんた、どさくさに紛れて…。まあ良いわ。それよりザッ、あ、いや何でもないわ」
「変な姉ちゃん」




