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いよいよ盆ダンスが始まる。
最初は女踊りからで、数々のチームを勝ち抜いた最高の女性チームが3チーム踊る。最初のチームの藍色のユカタの背中には“ワンダフル!”と書いてある。
あれは何だ?何で西の言語で素晴らしいなの?
「ビーバーちゃん、ユカタの背中には大体、チーム名や地元の名前を入れるのだけど、最近、王太子妃効果で西の言語が流行っていてね。あのチームはかつて“イバラーキ”という地域の有名チームだったのだけど、リーダーが変わってチーム名もオシャレに変えたのね」
「王女殿下は王族席に居られなくていいのですか?」
「トンビがいるから怖くって」
「龍がトンビを怖がってもいいのですか?」
「今のはカットでお願い」編集無理っす。
音楽が流れ出す。全員がビシッと整列し踊り出す。
「スゴい!踊りが揃ってる」
揃っているが、指先の優雅さ、流れるような手の動きや首の動き、足捌き、それらが全てが美しかった。
音楽も三味線、縦笛、横笛、太鼓、そして不思議な抑揚の歌。優雅でありながら、途中、激しくキビキビ踊る場面、すっかり踊りに見入ってしまった。
歌の歌詞が分からないのが残念だが、王女殿下もあまり分からないと仰った。昔ながらの言い回しと方言が混じっているそうだ。
「ビーバーちゃん、パンフレットのチーム紹介に踊りの概要が書いてあるわ」
と仰るので、読んでみると、
『爽やかな朝を迎え、気持ち良く野良仕事に出れば、朝帰りの酔っ払った夫を見つけ、激しく夫を痛め付けてやったが、優しい息子が「許してやって」と縋ってきて和解する』
という内容だった…。
「わー!知らなくても良かった」
「踊りなんて日常を表すものばかりなのよ。日常に根付いた文化なのだから」
美しく言われても、ただの痴話喧嘩だ。だが踊りは本当に素晴らしかった。今、思えばあの“キビキビ”は夫を痛め付けていたシーンだったのだろう。
次も女踊りが2チーム踊って、次は男踊りだ。
最初のチームの背中には“コラーゲン”と書いてある。何でだ?
「彼らも有名な“サイータマ”という地域のチームだったのよ。そう…どうしてコラーゲンなのかしら?」
「コラーゲンとか美容を営む方々が集まったのでは?」
チーム名について、パンフレットには「意味は知らんが読み方が気に入った」と書いてあった。
まあ意味は知らなくても良いだろう。踊りが全てだ。
とにかく男踊りも素晴らしかった。女性と違って力強さと大胆さが、とてもパワフルだった。
だが時々入る繊細さとのギャップが惹きつけられる。この繊細部分は一体?と思わなくもないが、きっと女踊りのように追求してはいけない真実なのだ。
男踊りも全チームが踊り終わって休憩が入る。
そして我々の出番だ。この休憩の間に皆でスタンバイする。
我々のワルツは南の国の人に、受け入れられるのだろうか?ドキドキするが、もう引き返せない。
ザック殿下も姉君をエスコートして王族席からお越しになった。
王太子妃様のドレスはやはり藍色で王太子殿下と国の代表色である色だ。
お二人が先にステージに入ると、大歓声が起こった!王太子妃様の人気が伺える。そして宰相補佐官様、姉夫婦、マレシオン様と続き最後にリリベルと侯爵令息ペアだ。
音楽が流れ始めると会場が静まり返る。会場中の皆が注目しているのが分かる。前奏でパートナーと礼をする。
その部分で「ホゥ!」と感嘆の声が上がったが、気にせずホールドを取って音楽に乗り踊り出す。
なかなか良い出だしだ。王太子妃様も満面の笑顔だ。
ドレスがフワフワと舞い、ターンで鮮やかに翻る。盆ダンスと比べると優雅さが全てで激しさは無い。だがクルクルと皆で振りを揃えて笑顔で踊る。約10分弱のダンスが長く感じられた。
踊り終わって礼をすると拍手喝采だった。
良かった。あの素晴らしい盆ダンスの後だったから受け入れられるのか心配だったが、きっと珍しさもあったのだろう。
皆がステージから去る中、王太子妃様が腕に巻いておられたエメラルドグリーンのスカーフをザック殿下の胸ポケットに挿して声を掛ける。
「頑張って!」
そしてリリベルの方を見て、ザック殿下の胸にあった赤いスカーフをリリベルの腕に結ぶ。
「弟をヨロシクね!」
リリベルは目を見開いて驚いたが、王太子妃様がステージから去られると前奏が流れ始める。
慌てて礼をして改めてザック殿下を見る。
殿下とは散々踊ったし、今更、緊張もしないけど、なぜか今までで一番ドキドキする。




