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王女殿下はザウルス様に介抱されるように連れて行かれ、リリベル達も夕食後、部屋に戻る。
すでに部屋にはお布団が敷かれ、直ぐに寝れるようになっていて温泉もいつでも入れるらしい。
リリアン様とシャーロット嬢は温泉で泥パックと全身マッサージを受けるそうだ。疲れも取れ、お肌もツヤツヤになるとガブリエラ様から絶賛お勧めされたそうだ。
リリベルも行こうかと思っていると、シャーロット嬢がリリベルに告げた。
「先程、殿下達がお戻りになられたようですよ」
リリベルが窓から男性陣が宿泊している棟の方を見ると、その隙にリリアン様とシャーロット嬢がいなくなっていた。
やられた!だが何でだ?リリベルはモヤッとしながらもお風呂に向かう準備をする。
リリベルを不意打ちで置いて来たシャーロットとリリアンが、急いで男性陣の宿泊する棟の入口に向かっていると、ちょうど殿下方がお戻りになったところだった。食事の給仕のメイドに馬車が着いたら知らせて欲しいと伝えておいたのだ。
「ザック殿下!マレシオン様お帰りなさい!」
「ただいま。リリアン嬢、シャーロット嬢」
「リリアン嬢、シャーロット嬢、二人か?」
殿下とマレシオン、二人の目がリリベル嬢の姿を探しているのは一目瞭然だった。
シャーロットはリリアンに目をやる。
リリアンは打ち合わせしたかのようにマレシオンに話し掛ける。
「マレシオン様、お疲れ様です。この国の温泉の泥パックとマッサージは全身の疲れが取れるだけではなくお肌にも良いのですって!ぜひ受けられてみて」
シャーロットはその間に殿下にソッと耳打ちする。
「殿下、このままならダンスのパートナーはリリベルさんとマレシオン様です。ですが学院のテストの時みたいに男女のダンスレベルを変えれば」
ザック殿下が目を見開く。
「ワルツの後にお二人で、またアクロバティックなダンスを見せて下さい!リリベル嬢はこれからお風呂に向かうはずです。早く!」
隣で聞いていたフィリップがマレシオンの視界からアイザックを隠した。
アイザックは女性用の温泉がある方に急いで向かう。男女共有部分でリリベルを捕まえないと、もう今日は会えないだろう。
アイザックが共有廊下の境に立っていると、リリベルが軽装のワンピース姿でやって来た。彼女には昼間、ウドンを打った時にも会ったはずなのに、なんか久しぶりに会ったような気がした。
リリベル嬢が俺に気付いて一瞬驚いたような顔をする。
「殿下?お帰りなさい。これからお風呂ですか?」
俺が返答もせずに彼女を見つめていると「何か昼間にも会ったはずなのに、久しぶりに会った気がしますね」と彼女はそう言った。
「奇遇だな俺も君を見た時、そう思った」
そう言った時にリリベル嬢が見せた笑顔は、俺の心臓をギュウっと鷲掴みするものだった。
“これは苦しいな”
オリベル王女の肖像画を見て、憧れていた時の気持ちとは比べ物にならない程だった。
◇◆◇◆
「やあ子爵、また世話になるよ。今回は乳児を含め、大所帯だから前より面倒を掛けるかもしれない」
王太子殿下御一行が子爵領の別荘に到着した。
ベルトルト達は日中は別荘で過ごすが、夜は子爵邸に戻って来るらしい。
別荘にはベルナルドが人員を増やして手伝いに行っているが、義母もクララベルも子供達の面倒を見に行ってしまった。特に二人にとって孫、ひ孫であるから嬉しいみたいだ。
王太子殿下と一連の挨拶を済ませた後、ベルモントは子爵領での注意事項を伝える。
「王太子殿下、もし野生馬を見かけても近寄らないように皆に言っておいてくれませんか?特に護衛の騎士達は攻撃される可能性がありますから。それに今はマスオもうろついている」
「マスオ?」
「そうです。北の陛下の馬なのですが、サオリと違って、私もまだ面識がない」
「何だかよく分からんが白馬は見かけても絶対近寄らないよう全員に言っておくよ」
「では、何か不足があればベルナルドにお伝え下さい。私はこれで」
「ああ。わざわざ挨拶に来てくれてありがとう」
別荘から出てくると爺様と出くわした。
「ベルモント、釣りに行くぞ」
この時期の領は清流に棲む数種類の川魚が旬だ。今日の夕飯に振る舞うのだろう。新鮮な夏野菜も今朝、届けていたしな。爺様は何だかんだ食で人を振る舞うのだ。
僕は黙って義父について行った。兄貴、これは貸しだからな!




