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「ククククッ」
「さっきから笑い過ぎです。フィリップ様」
「だってリリベル嬢に臆病者って…」
「私だって、そんな事言われたのは初めてですから」
「確かにあなたは色んな事を俯瞰して見ている。特に恋愛に関しては冷めているし老成すらしているけど、自分の恋愛に関しては違いますね。でもそれは仕方ない事です。初恋もまだなんでしょう?」
何だか悔しいが事実だから文句も言えない。
リリベルが「ムー」と唸っていると
「恋ばかりは相手がいないとできません。だから仕方ないですよ」
「恋も経験ですか?」
「そりゃそうです。小さい頃から好きな人がいれば、自分の気持ちに気付くのも早いし、気持ちを認めるのも早い。大人になればなるほど、経験の乏しいものには慎重になるものです」
「フィリップ様が宰相府に行かれてしまったら、もう私も殿下もこうやって頻繁にアドバイスを貰えなくなりますね」
「私がリリベル嬢にアドバイスですか?それは烏滸がましいですねぇ。それにもうザック様にも私のアドバイスは要らないし、周囲にはご自身の優秀な側近をお持ちではないですか」
「それでも歳上の方からのアドバイスが欲しくなる時があります」
「リリベル嬢、あなたは卒業後、子爵領に戻られるおつもりなのでしょうが、そんなに早くお戻りにならなくても良いのではないですか?もちろんあなたの故郷愛の強さは知っておりますが」
「リリベル嬢、あなたも卒業後は宰相府に来ませんか?あなたの能力は、もっと国や、誰か助けが必要な人の為に活かされるべきなのではないかと思うのです」
リリベルは思わぬ提案に目をシパシパさせる。
「将来、子爵領に戻るのを遅らせる事も検討してみて下さい」
フィリップ様はそう仰って、ワゴンを押して間もなく鍛錬が終わられる殿下方の方に向かおうとするが、リリベルにもう一言。
「そうだ、リリベル嬢、姉君にお伝え下さい。あれはなかなか良かったです。妻に他の色の購入も勧めました。私個人的には黒とか赤など好みですねぇ。では宜しくお願いします」
「!」キャーッ大人っ!
朝食後に今日は盆ダンスの練習をしないか?と第二王子ご夫妻に誘われた。
第二王子ご夫妻が教えて下さるそうで、我々もせっかく来たのだから、2日後にある盆ダンスに参加してみれば?と提案して下さったのだ。
盆ダンス大会は初日は、男踊り、女踊り、男女混合があって、最終日は全員が参加して躍るダンスがあるので、それに参加する事に決定した。
踊りの種類も振り付けも地域ごとに色々あるので、代表的な男女共通のダンスを皆で教わる事になった。盆ダンスはユカタを着て踊るので、チョコチョコと小股で歩き、ステップや難しい足捌きなどはなかったが、バックしたり斜めに歩いたり向きを変えて正面に進んだり斬新で面白かった。
難しい振り付けはない代わりに、手先の動きや目線とか流れるような動きが西のダンスと違うと感じたけど、一連の振り付けを覚えてしまうと、あとは繰り返しなので、リリベルはあっという間にマスターしてしまった。
「ビーバーちゃんはダンスも上手いのねぇ」
盆ダンスの練習中にやって来た王女殿下が仰った。
王太子妃様も見学にお見えになった。
「王女殿下は盆ダンス大会に参加されるのですか?」
「私もザウルスと出るよ。ビーバーちゃんも女踊りを覚えてみる?」
「あら、それもいいけど私は西のダンスも見たいわ。ドレスを着て踊るのでしょう?」
と第二王子妃様が仰った。
「確かに。せっかく南に来たのだから、盆ダンス大会で西のダンスコーナーを加えてもいいな。急だけどどうだい?」
第二王子殿下がザック殿下に聞いてくる。
「私はいいが、マレシオンはどうだ?」
「そうですねぇ。女性が3人ですので3組だけになりますが、それでも良ければ」
「私も踊れるわ」「姉上?妊娠中ではありませんか!」
「ワルツなら大丈夫よ。アイザック久しぶりだけど一緒に踊りたいわ」
「子爵夫妻にも頼んでみるか」
「それなら5組参加できるので見栄えはいいかと」
「なら初日の男踊り、女踊りの後の余興としてぜひお願いするよ」
我々は急遽、ワルツで盆ダンス大会に出る事になってしまった。
あの時、少しでも練習しておいて良かったかも。




