天稟の魔法剣士VS凡愚の魔法剣士 身体付与
遅くなりました。
前話のあらすじ。
アイズが立った! 波の上に。
押し寄せる濁流の元、滑るように移動していった。
短剣と靴に付与した水属性の魔法により、オレは今海の上に立っている。
まるでサーフィンをしている気分になるな。
「馬鹿な。僕の魔法に飲み込まれず、進んで来るなど……」
「エルフは樹上にて最強。なんて言われて、度々人外扱いされるあたしたちが言っていいか謎だけど……アイズ君って本当に人間?」
この世界には、恐らくだがサーフボードなんてものはない。少なくとも一般的には。
よくあるファンタジー世界同様、この世界も海はそこまで安全ではない。そんな余暇を楽しむアイテム、広く知れ渡る訳がないのだ。
だからこそ、オレの動き方は彼らには理解不能なのだろう。
片膝立ちのような姿勢なため、前世のサーファーに見られても不可解だろうが。
「重ねた失敗と、装備の更新様々だな」
両靴はギルドマスターと模擬戦をした時よりも、アップグレードされている。
具体的には絶縁素材の張り付けと、ソ-ルや内側に竜翼の皮膜などのドラゴン素材を用いて補強していた。
そのおかげもあり、弱い魔法であれば付与する事ができるようになった。
足が固定されているので、サーフィンと言うよりはスノーボードに近いか。
「姿勢制御と推進に手が取られて、他の魔法を使えないのは痛いが、まぁ成功だ」
靴が纏う水を固定化させ、その場に押し留める。
これは魔力によって引き起こしている現象なので、土台が魔力のない普通の水だと乗る事ができない。
また、そのままだとスキーのように滑り落ちるだけである。
オレ自身が活動する水魔法を、短剣に込めた魔力で補助させて、方向転換・加速に用いる事で水上の高速移動を成立させた。
「水上を走るなんて芸当、数多の英雄譚の中にも出てきませんわよッ」
「滑落するような速度で、あの水流を昇っていく様は圧巻ですね。……アイザック君は何を目指しているのでしょう?」
普段、彼の速度を間近で見てる私たちでも、目を見張る動きなんですが……。なんて苦笑混じりの声が聞こえてきた。
フランの興奮ぶりは心地良いけど、観客の感情が呆れの方が多いのは少し納得いかない。これも日頃の行いか?
「くっ、だからどうした! 魔法を多重展開できない君に、これは防げまいッッ」
フリーズ状態からいち早く回復したナルヴィクは、風の弾丸を複数放ってきている。
幾つもの魔法を使っているためか、一発一発の威力は乏しそうだ。
「今の状況だと踏ん張れないし、一発貰ったら投げ出されるか」
オレの魔法を相手は知らない。故に偶然だろうが、繰り出された応手は非常に的確だった。反撃できない弾幕ゲーム再びである。
こっちの姿勢も固定なので、さっきよりもそれっぽい。
外れた攻撃が水飛沫を立てて、視界を狭めると共に水流を乱してきた。
この対応力。噛ませ犬っぽい態度や、後手後手に回ってた序盤は一体何だったのか。
相手が大技の影響を残している事だけが、先程より好転した点である。
発動が続く魔法により、奴は行動が限りなく制限されているようなのだ。
「弾幕が薄いぜ、天才さんよぉぉ!!」
文字通りの洗礼を潜り抜けて、飛び上がる。
勢いと工夫された踏み込みを用いて、水で柔らかくなった地面を中空に跳ね上げた。
視界を遮りつつ、速度重視で斬り掛かる。
「……間に合っ、ぐぁっ!」
「ちっ。これで仕留められないんか」
一撃はぶち込めた。
けれど、同時に魔法を行使できないため、身体能力強化しか使えていない。
咄嗟に張られた障壁に阻まれて、浅く傷つけるに留まっている。
膂力だけでは、魔力が多く込められた水のカーテンを貫き、革鎧に風穴を開けるのが限界だった。
「ふぅふぅふぅ…………はぁ」
吹き飛ばしたものの、上手く着地されている。
息切れはしているけれど、目に見えるダメージは薄く滲む血と衝撃で震える脚部程度だ。
「万全でなくとも、多重に張った防御を筋力だけで抜いておいて、何を残念そうにしている。力が体格に見合わなさすぎであろう。貴様本当に生物か?」
遂に人類どころか、生物か疑われ始めたんですがこれは。
英雄潭に強敵として出てくる人外ならば、居ると思うがなぁ。
「大技は破った。消耗も激しい。手詰まりも間近か?」
追撃をはせず、更に焚き付けて限界を呼び覚ます。
果たして、その目論みは成功した。
「舐めるな。破城波の制御は僕であれば、まだ可能なんだよ!」
再び励起された魔力で、生み出された全ての水が再び動き出す。
「分かってたさ」
放った魔法を繊細にコントロールするのは難しい。逆の立場なら、オレにはまったくもって不可能だ。
しかし、相対する男であれば成し得る。そうオレは確信を持っていた。
但し確実な操作と即応性を求めるためには、直接触れる必要がある。
「この時を待ってたぜ。喰らいつけ、瞬雷牙顎!!」
オレは浸透性と速度を強くイメージして、雷魔法を解き放つ。
奴を中心に再び舞い狂おうとした奔流を遡り、雷撃が掛け上がっていった。
「!? ならば、これでどうだぁぁ!」
「はぁ?」
一度切られた魔法への接続。
本来、その程度であれば雷は届く。まだ、奴の周囲に水は蔓延っているからだ。
だと言うのに、新たに出た水の塊が大波と合流すると、水に混じった泥などの不純物がこちら側に寄ってきた。
そこで雷の伝達が遮られる。
「泥の壁を越えれば……ってそんなんありかよ!」
再度放った魔法。しかし浸透していかない。
雷は、使いどころを誤ればこちらが感電しかねない。
そして、水が体と接していないと相手自身にも電流は通らないのだ。
だからこそ使いどころを見定めていたのに、前提を覆された。
科学知識も雷の特性も知らない癖に、純水を生み出したのか?
いや、火魔法で相殺した時も、明らかに蒸発する温度は高かったし、魔法イメージによるものかもな。
これが天然の才かよ……。
「はぁはぁはぁ。……礼を言うぞ、アイザック・フェイロン。僕に新たな強さを示してくれた事にな」
言葉の後に繰り出されたその魔法に、オレは驚愕した。
「はぁぁぁぁ!? いや、真似しようと思って即座に出来るもんじゃないだろ!!」
ナルヴィクが剣に纏わせているのは、水流。
明らかに付与魔法だった。
今まで使わなかったって事は、元から修得していた訳ではないだろう。
こちらの優勢だと思われた状況だが、その一手は盤面を引っくり返しかねないスペックを秘めている。
戦いを楽しむ、とか言ってられないかもしれない。
天から授かった才の躍動――こっちも本気の本気で応えるのが礼儀か。
「ちっ、これだから天才は。今以上に長引くのも面倒臭いし、切らせてもらうぜ」
オレの『とっておき』を、な。
そんな思考と同時に、オレの体が強烈な光と轟音を伴う。
「身体付与、雷霆招来」
閃く稲光はまだ周囲を照らし続けている。
「忠告しておくぞナルヴィク・ランカスター」
オレ自身が雷光により光を放つ中。
紡がれた言葉は雷電により震え、圧倒的なプレッシャーを撒き散らせていた。
「こうなったオレはロクに手加減ができない。ーー死ぬなよ」
描写不足な気がするので、加筆予定。
明日決着です!




