天稟の魔法剣士VS凡愚の魔法剣士 才気煥発
じゅ、充電切れでロスタイム!
問題なければ本日もう一話更新しますヾ(o゜ω゜o)ノ゛
前話のあらすじ?
アイズ「ゴリラは森の賢者と言われていてだなぁ」
作者「本編にもキャラにも関係ないゴリラネタは、もういいから」
小手調べは終わった。
そのまま押し切る事も出来たとは思う。
奴も奴で、初手の不意打ちから決着をつけた場合と違って、文句を言う事もなかった筈だ。
だがしかし。これは殺し合いではない。
「さて、オレは物理寄りだけど、あいつは魔法寄りの魔法剣士だ……どうなるかな」
楽しみだ。
前提として、この国では決闘による命の奪い合いを禁止されている。
不慮の事故で裁かれる事はない。
その代わり、たとえ貴族であろうと最低限の取り決めも守れない野蛮人との誹りから逃れられなかった。
「うっわぁ……何あの身のこなし。樹木の上のエルフでも、あんな変態機動できないよ」
「アイズ曰く、体幹というものらしいですわ。戦闘訓練の中で、散々体をイジメ抜いて、芯を通したと言ってましてよ」
「息もつかせぬ攻防でしたね。相手のランカスター君も見慣れない動きでしょうに、よく反応しています」
決闘開始の許可をアイコンタクトで取って以来、無言で観戦してくれていた仲間たち。
戦闘が一息ついた途端始まった彼女たちの会話は、かなり盛り上がっていた。
あとメルヴィナ、お前いつから解説記者になったん?
姦しいとはよく言うが、彼女ら仲良くなりすぎとちゃう? 思わず関西風のノリも出てしまうくらい、正直な話意外だった。
フランとメルヴィナはともかく、エルミアが二人と馴染みすぎなのだ。
特にフラン。君、オレとエルミアの漫才みたいな会話に、何故かヤキモチ焼いてたじゃない。
まぁ、仲良き事は良い事なんですけどね……。ちょっとだけ疎外感があるのは秘密だ。
話が逸れたが、つまり今回は相手が余程の殺意を持っていなければ、死ぬ危険性は乏しいのだ。
プライドがお亡くなりになるので負ける気はないが、何が何でも勝つべき戦いではないと言える。
「魔物と対人戦は、アプローチからまったく異なる。それは分かったみたいだな。それを踏まえて総力戦、やろうぜ」
侮っていた相手に指南されたからか、視線が俯きがちのナルヴィク。
ギリギリ視界からは外していないようだ。
それでも、相手を捉え辛い視野を自分で作っていれば世話ないぜ。
「……」
折角、苦手な相手の面倒な挑戦に乗ってやったのだ。
双方が、ギリギリの全開まで絞り出さなくては意味が無いんだよ。
まだオレは、奴がAランク冒険者たる由縁を見ていない。
「さぁ、来いよ後輩君。オレの方がランクが下だからって、遠慮しなくて良いんだぞ」
分かりやすい挑発。
「……イソーロ殿が言っていたな。己の稚拙、それも受け入れて前へ、だと」
ナルヴィクは、二度もオレが勝機を見逃した事に気付いてる。
挑発に乗る事もなければ、言い返せもしないようだった。
呟かれた言葉は、強く吹き付ける風に掻き消されて聞こえない。
「先輩だのとも言っていたが……冒険者になって何年になる」
沈黙を嫌ったのか、僅かな逡巡の後、質問が飛んできた。
「10年ちょっとかな、見習い期間も含めてだけど。あんたの方は聞いてるぜ」
ナルヴィク・ランカスターガチ勢の受付嬢にな。
正式な冒険者としても、オレの方がちと長い。
「年下でランクも下位だとしても、先達に取る態度ではなかったな。そこは改めよう。だが僕は――――君が嫌いだ」
「はっ、奇遇でもなんでもないが、勿論オレもだ」
その何でもない確認と共に、再び剣戟が幕を開ける。
違いとしては相手に落ち着きが伴った事。
そして、四方八方から魔法が襲い掛かってくる事だ。こいつも多重発動できるのかよ。何? 天才の共通スキルか何かなの?
「お前のその声色と仕草がぁぁぁぁ! 生理的に無理ですぅぅぅぅ!!」
――ギン!
「抜かせ!」
――ガキッ、カッカカカ、キィーン!
「実力がある癖に微塵も見せず、スカした態度を取る貴様など、野で致す時に出てくるゴブリンより気にいらんわぁ!!」
――ダダダダッ!
マシンガンのように飛ばされた水の散弾を火で蒸発させる。
「知るかボケぇ! 隠してるつもり無いし、イケメン冒険者サマのイメージは壊す喩え出して良いんですかぁ? オレも遭遇したら絶許だけど!」
降り注ぐ魔法に体術も合わさり、人類の中でもトップクラス同士の剣舞である事は間違いない。
その応酬の合間に挟まれる、低レベルな罵り合い。
お互い言葉通りにイラついているのに、何処か楽しみを覚えてる自分がいた。
「そんで、どう来んだよ!」
「こうするさ」
踏み込んだ足元が水に沈む。
こいつは、地面の液状化か。風魔法と併用して起こした現象らしい。
「お前には複数の攻撃を重ねないと意味がないからな!」
僅かに追撃の手が緩み、そこに殺到する風の刃。
水魔法と剣を構えながら突っ込んでも来ている。
驕りを捨てたナルヴィクの剣術は、先程とは格段にキレが違ってきた。
魔法で仕留めるために、自分から手を出し相手の攻撃を牽制、動き出しを潰してくるのである。
守るための攻め。それを囮とした魔法の手数と多彩さが真骨頂のようだった。
「円周雷!」
発動させた雷で相手の魔法を吹き飛ばす。
「やっぱ、真価発揮し出すと違ぇな、おい!」
思わず笑顔で言ってしまった。
まるで訓練を受けた前世の軍人や傭兵だな。一人でオールマイティーに動き、様々な銃火器を展開するかのようだ。
その点、オレは侍かな……特大威力の手榴弾持ちの。世界観おかしい? 知らんな。
「じゃあ、こいつでどうだ?」
一度離れて、雷魔法を仕込んだナイフを投擲しつつ、辺りを動き回る。
隙らしきものが出来た瞬間、ジグザグな動きで接近を図った。
「対策済み、だっ! アクア・ファランクス!」
槍襖の如く鋭い水魔法が多重展開される。ただ、その魔法よりも、狙いに驚かされた。
オレを目掛けた攻撃も勿論あるが、その多くは進行方向に突き刺さるように放たれている。一本一本に込められた魔力は、かなり多いみたいだ。傍目からすれば盛大な魔力の無駄遣いである。
多くの魔力を引き換えにしても、スピードに乗せると危険な相手だ。そう判断したのだろう。
判断も対策も、大正解過ぎて腹立つ。
「フランもそうだが、天才は学習スピードが異常だな」
くっそ。この連なる水弾が厄介だ。
槍襖の隙間を縫うように、数個の列を作る糸状に繋がれた攻撃が動きを阻害する。
多少当たった程度では怯まないが、動きが一瞬止められるのすら、このレベルでは命取りだった。
予想通り、今まで戦ってきた人間の中でも最上位クラスの実力である。
だが、それだけではない。
本気を出したAランク冒険者ナルヴィク・ランカスターは、想定を大きく超えてオレと相性が悪かった。
火魔法掻き消され過ぎぃ!
加えて、これが決闘というのもある。
相手の生死を問わずなら、確殺できる手段は幾つもあるのだから。
仮に殺し合いだったとしても、オレはやむを得ない状況以外で人を殺す気はないけどさ。
「ボンコツの意地、発動しておくか?」
冗談混じりに呟く。
剣の技術や膂力は、オレに比べて劣るというだけで一流以上のものは持っている。
そんな近接戦闘を高いレベルで持つ相手が、フラン並の固定砲台と化しているのだ。
威力は比較にならなくとも、戦略性と連射性能は大きく上回る。
気分は弾の撃てない弾幕ゲーである。クソゲーかな?
接近戦最強機体なのに、それも凌がれてまた弾幕に晒されるとか勘弁しろし。
「ただまぁ少し、楽しくなってきちまったな」
マゾでもゲーマーでもないが、強いて言うなら戦闘狂なので。
徐々に攻略の糸口を掴めていく感触は、意外にもオレを奮い立たせていた。
「いや、終わりだよ」
無情に告げられる終息宣言。
「……んん!? おまっ、いつから作ってやがった!」
その言葉は、ハッタリでは無いようだった。
いつの間にやら、特大の魔法が組み上がっている。
こいつ、リソースを他に割きながらここまで戦ってたってのかよ。
「お前が僕との戦いを楽しみ、膠着が長引かなければ使えなかった。それだけは礼儀として伝えておいてやる――破城波・連槌」
おいおいおいおい。冗談じゃねえぞ。
オレの無双を奪った憎き魔法が、今度はオレ自身を葬らんと襲い来る。
しかも最後に付け足された言葉が気になって奥を注視すると、現状の詰みっぷりが垣間見えた。
魔物を一掃した時と違い、同時に迫ってくる波はひとつだけだ。……その後ろに、複数の波が追撃の列を為しているみたいだが。
「高い地形も、木も建物もない。一撃凌いでもその後が来る。全てを吹き飛ばすだけの魔力を込めたら、奴や周囲がどうなるか分からん……控えめに言って詰んでね?」
自然災害に人間は勝てないと、オレが知る限り前世で証明済みだった。
人間離れした身体能力を持とうと、大きさがあまりにも違う。
フランたちは離れたところにいるため、巻き添えにならないであろう事だけが救いである。
「……いや、この程度で諦めんな。ドラゴンの時に学んだだろ」
オレはまだ切れる手札を絶対に持っている筈――
「……よし、あれが使えるな」
脳内で取り得る手段を取捨選択し、高速の思考は幕を閉じる。
以前、旅に出る前に川で使おうとして失敗した魔法をオレは発動させた。
この条件なら、イケる。
「跳んだ?! 空中じゃ逃げ場はありませんわよ……?」
「愚か者め!」
手にした短剣に込めた付与と、発動する魔法。それを脇に抱えてオレは全力でジャンプしていた。
跳躍で一つ目の波を超えたオレを見て、嫁と敵から声が上がる。
メルヴィナは固唾を呑んで見守っており、エルミアはオレが何をするか興味津々に眺めているようだ。
仕方ない、観衆を惹き寄せるのも英雄の仕事だよな。
「名付けるなら、魔法名『波に乗る水流』って所か?」
オレは大津波の上に立っていた。
アクアラグナだー!(違います)




