天稟の魔法剣士VS凡愚の魔法剣士 第一ラウンド
前話のあらすじ。
オレが○○してやんよ。
○の中は自由にお入れください。
作者「え? BL? ワクテカ展開始まるの?」
アイズ「決闘な決闘! 結婚じゃねぇからっ」
先程の攻撃から類推できるのは、奴が主に使う魔法は水と風の二つって事だ。
油断も決めつけもしないけれど、幾らなんでも魔法極振りじゃない剣士サマが、あの練度で三種類以上の魔法を使いこなせるとは考え難い。
「おい、Aランク冒険者サマよ。先にあんたの魔法だけ見せてもらうってのは、フェアじゃねえよな」
「ふん、そんなものハンデにすらならない。……それと僕の名前はAランク冒険者じゃない! ナルヴィク・ランカスターだ、言い訳男」
後で負け惜しみの材料にされたくないので提案しようとしたら、喧嘩腰マシマシで返された。
……まぁ、相手と同レベルになるつもりはない。
散々フルネームで呼び捨てておきながら、ここに来て謎の呼び方をしてきた事は触れずに、オレは更に言葉を紡いだ。
「癪だが、あんたが中々に強いのは分かる。ただ、相手のおおよその実力も見抜けないのは、この先命取りだぜ? ランクはそっちが上かもしれないが……先輩の言う事は聞いておけ」
「先輩だと?」
言い返す隙を与えると煩そうなので、言い終わると共に魔法を発動する。
手の上に灯されるバレーボール大の炎。
オレが魔法を使えるという情報すら無かったのか、目の前の男の表情には、にわかに驚愕の色が見える。
「いや、何を驚いてるのか知らないが、この程度じゃないからな?」
よっこいせ、と傍らに散らばる魔物の甲殻、その残骸を拾った。
煌々と燃える炎の中にそれを放り込むと、燃えカスも残さず燃え尽きる。
相手の反応を確かめずに一度魔法を消し、甲殻犀の中で最も硬い、角の部分を手に取ってナルヴィクを見据えた。
「これは……付与魔法ッ。しかしこの規模は何だ?」
「ご明察」
先端に火が付き、その幅広な角の周囲をグルグルと火炎が囲っている。
甲殻を消し飛ばした時と威力は変わらないのに、角は特段崩れる様子も見せない。
「おまけだ、こいつも見せとこう。――雷散華」
魔法を付与した魔物の残骸を持つ手とは、逆の手を前に出す。
その手のひらには、ド派手な花弁を思わせるような雷が瞬いていた。
徐ろに火を纏う甲殻角を眼前に投げ、顕現させた雷を追従させる。
「炸裂した? 火炎も甲殻も跡形がない。そして今の魔法は……?」
放たれた一つの素材と二つの魔法が、地面を黒く焼け焦がしていた。
辺りに響いたパァンという炸裂音が残響する。
それ以外に痕跡は一つも残ってない。
「……成る程、舐めてかかると痛い目にあう可能性くらいは、確かにありそうだ」
「少しは理解できたようだが、まだ認識が甘いと思うぞ。まぁ良いか、とっとと始めよう」
そう宣言してオレは相棒デュランを抜く。
ルダラーンは、まだ鞘に収めたままだ。
双剣デュランダルの状態にするには、まだ相手の力量が完全に分かってないからな。
剣に魔力を注ぐオレの動作を見て、今から決闘が始まると勘違いしたのだろう。
「おい待て。この無駄に高そうな手袋を、外したまま始めるつもりか?」
そうこちらに静止をかけてオレが投げた、竜革の手袋を拾うナルヴィク。
だが悲しいかな。奴はオレの挙動は警戒していても、逆に言えばそれ以外にまったく気を払っていない。
この世界の流儀で言えば、双方が決闘の意思を言葉で明確に示し。
その証左である物品――今回はオレが投げつけた手袋――の制止を互いに認識できた時点で……既に決闘は始まっている。
――バチンッ!
「なぁっ!?」
手袋を掴んだ瞬間、奴は面白いポーズをして体をビクつかせた。
オレが薄く付与していた魔法により、静電気が発生したのだ。
手袋の内側にはオレとアルドーさんが用意した絶縁素材を用いているから、以前より自身への継続ダメージは減っている。
けれど外側は、電気が流れていきやすいように加工が為されている。リスト部分に埋め込まれた魔石も手伝い、魔法を受け流すも施すもお手の物だ。
「まったく、解説してやったつもりだったんだがなぁ……」
成功した悪戯の余韻にも浸らず、わざとらしいくらい呆れた口調で煽り倒す。
「まっ、オレに出来る事はそういうこった。よろしく」
自己紹介は終わりだ。
相手は今まで出会ってきた中でも、特A級のウザい奴。
しかし、その実力もオレが直接知る人間では一・二を争う筈だ。
ただ勝つ事が目的なら、今の挨拶代わりの奇襲に乗じて波状攻撃を仕掛けるべきだった。
「それで納得せずに付き纏われても面倒だし、何より――」
素肌が見えなければ、ステータスを見る事はできない。
なので相手の魔力の底は不明だ。それでも見える範囲のステータスと、さっき魔物たちを屠った遠距離でも完璧にコントロールされた魔法。
この世界において魔法剣士は珍しいが、それを差し引いても相当なレベルの魔法剣士である。
当然、そんな輩との対戦は人生初だった。それならば。
「――どうせやるなら、楽しまなきゃ損だよな!」
「気持ちの悪い笑顔を浮かべおってッ!!」
天才と凡才の剣が交錯する。
鋭い斬撃音。飛び散る火花。奏でられる金属音。
数合打ち合っただけで、互いの実力が感ぜられた。
(純粋な剣技ではオレよりも格が下がるな)
当然と言えば当然。いくら凡才と言えど師匠が違う。
奴の方が年は上でも、重ねた月日と鍛錬の密度では負ける気がしない。
当然センスはオレよりも圧倒的に上だが、こちとら長年体に染み付かせた経験則と反射神経でこの剣振ってんだよ。
とっさのアイディアに驚かされこそすれ、オレの師匠で執事なセルバフの、命を刈り取る駆け引きには遠く及ばない。
「おいおい、どうした天才。必死の受け流しばっかじゃねーか。そんなのばっかに頼ってたら、こうなるぜっ、と!」
わざと受け流された剣。それを流し切られる前に横に動かし、相手の剣の引き戻しを邪魔する。
「小癪なっ」
一度は何とか姿勢を崩さずにいたが、間髪入れずに攻め、もう一度込める力と方向を変えてやった。
「貴様、僕の動きを先読みしていると言うのかっ」
相手の受けを邪魔すると同時、それによって移動するだろう地帯を先に占領する。
足の踏み場を奪われたナルヴィクは、意表を突かれた事も相まって完全に体勢を崩した。
「剣の冴えと歩法はオレの勝ちと」
認められない様子の向こうさんに、事実を明確に突きつけてやりつつ、剣も同時に突き出す。槍は使えないけど。
「ちぃっ! 風掌」
巻き起こる風が圧縮され、自身の肩を押した。
もはや避けられない追撃を、オレではなく自分に使う事で確実に難を逃れたのだ。
開始からここまで、魔法を使う余裕は幾度かあったのに奴は使わなかった。
恐らくは、高ランク冒険者の油断――ではなく、プライドがそうさせていたのだろう。
しかしオレの言葉で自覚させられたのか、ナルヴィクはそれを振り払い魔法を発動させた。
「良い判断じゃねえの」
そのままであればオレに負けの目はなかったので、些か上から目線で讃える。
実力が伴う伴わないに関わらず、肝心な時にプライドを優先させる人間は個人的に嫌いなのだ。
故に、実際にはこいつの事を少し見直していたけれど、そんな事はおくびにも出さない。
「ふん。バレバレか、腹立たしい」
「あからさまに、剣だけで比べようとしてたからな。じゃあオレも一つギアを上げるぞ」
言い終わりと同時に駆け出し、前傾した体を死角に取り出したナイフを左右から投擲する。
その勢いで、袖に仕込んだ小型ナイフを二本取り出した。
片方は左手で掴み投擲。前方に放物線を描かせたもう一つは蹴り上げて、標的へと向かわせる。
「投擲かっ!」
剣を捨てての急接近に、一瞬だけたじろいだ様子を見せたが、奇襲慣れしたのかナルヴィクの切り替えは早かった。
多角的な飛来物に警戒を振り分けながら、風魔法で漏れなく弾こうとしている。
「残念、ハズレ」
互いに薄く掛け合っていた身体能力強化をこちらだけ跳ね上げ、背負った薄剣ルダラ-ンを引き抜く。
速度を増して迫るオレの挙動を見て、読んでいたぞとばかりにノールックで投擲物を吹き飛ばされた。
「やはり陽動かッ。……!?」
「それもハズレ」
剣道の火の構えもかくやと言わんばかりの上段に晒した剣を見せつける。
連撃と誘導により、袈裟懸けに振るうと誤認させた刃。
それを身体側に引き付け、体軸を用いて回転した。
振り向かれる右足。
「グ……ッ」
「いや、五十点かな」
投擲と陽動そして体術。
陽動が二回だと読めなかったので、ちょうど半分だ。
先程は剣で比べたがった相手に合わせて、見せなかったものの詰め合わせである。
「さっきの風魔法でも防げないタイミングを捻り出したら、弾力のある水で衝撃の吸収ね。発想も常人じゃねーのかよ」
やんなっちゃうね。
弾力のある水とか、自分でも何言ってんだって感じだけど、蹴った感触はまんまそうだった。イメージは偉大だぜ。
間に合った理由としては、元々オレへの迎撃のために準備していた魔法を転用したみたいだな。
「まぁ? 完全には防げなかったみたいだけど」
もしオレが第三者であれば、「煽りよる」と苦笑いする言い方になってしまった。
いかんいかん。
どうにも、高レベルな戦闘で気持ちは高揚するのに、奴への感情が勝手にそんな態度を取らせていた。
「ちっ、この筋肉猿め。馬鹿力にも程がある」
あん? それはオレをゴリラだって言ってんのか。
――ゴリラ舐めんなよ? このキザ野郎。
え、そこなの!?(自分で書いてて驚愕)
アイズは中身はともかく見てくれはイケメンです。見てくれは。
第一ラウンドはアイズの圧倒。
但し、敵は天才で吸収力抜群、そしてアイズと比較すると紙装甲なので、攻撃に転じられると……ヾ(o゜ω゜o)ノ゛




