オレが決闘してやんよ
やっと、二章最終バトルの導入(*つ´・∀・)つ
バトル開始以降は、連続更新で最後まで書ききりますよー。
「ふはははは、危ないところだったな!」
津波が吹き荒れ、暴風が飛び込んできた方向からは、いつぞや出会ったいけ好かないAランク冒険者サマが歩いてきていた。
……アブナイトコロ? 日本語難しくてボク分かんない。って日本語じゃないね。
「突如街を出たと聞き、急いで追いかけて来たら、とてもではないがCランクの冒険者には荷が勝ちすぎる相手。しかも明らかに異常氾濫――と言うよりは大移動か。思わず助けてしまった。何、気にする事は――」
「余計な事すんじゃねぇ!!」「なぁ?!」
咄嗟に怒声が飛び出てしまった。
こいつ、オレたちをストーキングしてきたのかよ。ガチモンの犯罪者じゃん。
それでこの事態に遭遇し、良かれと思って勝手に助太刀してきたのか。
己が因縁を付けるような相手にも、緊急事態には迷わず手を差し伸べる。
ああ、何とも褒められるべき高潔な精神性なのだろう。――お前らの中ではな!
「馬鹿な、意味が分からないぞアイザック・フェイロン! 何故善意での救援を――まさか」
ハッとした顔を向けるナルヴィク・ランカスター。
今回はオレにもわかるぞ。こいつ、守銭奴でもあるのか! とか思ってやがるな。
そいつらの血が流れてるから全否定は出来ないが、そういう意味でキレてんじゃねえぞ。
「ふん、僕とした事があまりにも無謀な状況過ぎて、確認を怠っていたな。元々金銭に困っている訳ではないし、素材は別にいらんよ」
「そんなんどうでもいいわ!」
言われる事が分かっていたのに、抱いていた怒りと上から目線で、即座にそう返してしまった。
報酬や素材の横取りを懸念しての応対ではない。
「じゃあ、何だというのだ!」
「どうせ言ったって、お前らには理解できねぇよ!」
相手の苛立ちも相当なもののようだが、こっちは久々の大チャンスだったのだ。
絶対にオレの怒りの方が上だ。許さんぞ、ナルヴィク・ランカスター。
「元から貴様の横暴で粗大な振る舞いには、エル-ダのトップ冒険者として怒りを抱いている。ただ、一応は伝聞だけだったので確認しようとしていた……その必要も、無かったようだがな」
「だから先日のいちゃもん、こっちには理解不能なんだよ。お前も常識人気取るつもりなら、相手に分かる言葉を吐け」
必死に怒りを堪えて、精神的には年長者であるため、まずは諭す事を試みる。
許す気なぞ微塵も無いが、オレの願いがそこまで一般的な物ではない事は、理解してるつもりだからな。
……いや、英雄願望くらいなら誰にでもあるか。それが度を行き過ぎてるってだけで。特に、こいつみたいな天才には分かるまい。
「貴様がそれを言うのか。冒険者の風上にも置けぬ貴様が!」
「それが意味分かんねぇ、つってんだよ。何をおいてお前はそう判断したんだ」
まだ話を聞いてやれる余地はある。
煮え滾る怒りを精神性で押し込めているからか、遠目にフランたちが駆け寄って来ている事を他人事のように感知していた。
「言われなきゃ分からんか、愚物め。なら言ってやろう――冒険者ギルドでの傷害事件の事だ」
「はい?」
エル-ダの冒険者ギルドにオレが顔を出したのは、マールが住む村に行く事を決めた日だけだぞ。今回の指名依頼は、伝達も含めて商人にさせたからな。
って事は――あぁ、もしかしてアレの事か?
オレは、エル-ダ到着初日に起こった出来事を思い返してみた。
なんて事はない、ただの酔っ払いの制止なのだけれど。
◇◆◇◆◇
ギルド脇の食堂で飯を食べていた時。
突如として酔っ払い同士の喧嘩が始まった。
「んだこら、喧嘩売ってんのか。あ?」
「マールは、あっしの嫁ぇ。お前みたいに顔が醜い大男ォ~、マールの作る薬を使う資格無しぃ、ヒック」
睨み合っているのは、野次馬曰くCランクとDランクの冒険者。
ランクが高い方は大男で、Bランクに近いと言われる実力を持つのに、Bランクに上がれない奴らしい。
後で聞いた話では、マールに入れ込んでいるロリコン冒険者が彼女の作った薬を半ば買い占め気味に買った事が原因だったそうだ。
それを、買えなかった大男が喧嘩腰に咎め、名ばかりの決闘に発展したとかなんとか。
そこまでなら全スルーだったのだが……Dランクのヒョロイおっさんは、なんと酔拳使いだった。野次馬の発言で判明した話である。
この世界にもあったんだなぁ、酔拳。
「決闘だオルァ!」
「上等だ……ヒック」
無手の争いな上、酔拳に興味があったので最初は静観の構えを見せる。
常時であれば、大男の圧勝だったのだろう。
しかし酔拳とただの酔っ払いの差で、劣勢なのは大男の方だった。
「この、Dランクの癖に!」
何発か良いのを貰った男は激昂する。
攻撃に勢いが増すが、それでも反撃の糸は掴めない。
苛立ちの末、苦し紛れに隠し持っていた短刀で斬りかかった。
「え……?」
――が、酔拳の足取りで躱され、あまりにも付けすぎた勢いにより、給仕の女の子を斬りつけそうになっている。
「――! 馬ッ鹿野郎!」
ボーッと見ていたオレの体は勝手に動き、即座に女の子を抱き寄せていた。
庇った背が斬りつけられる。
「ぐっ……」
「大丈夫ですか?!」
瞬間的な事態で、身体能力強化などもない。
流石のオレも僅かに血を流していた。
「邪魔すんじゃねぇ!」
一歩間違えれば、取り返しの付かない事態になったかもしれない。
だと言うのに酔っ払い冒険者は、更に斬りかかる姿勢を見せた。
せめてここで正気に戻っていれば、事故として水に流してやった。だが、こんな事になっても反省しないのは……ちと擁護できんよ。
カッと胸の内側が熱くなる。
「酔い覚ましやがれドグサレがッ!!」
「ゴガッ」
軽くジャンプしたオレは、サッカーのバイシクルシュートばりの動きで男の頭を蹴った。
床に叩き付けられる冒険者。ただの一撃で気絶している。
やば、手加減足りなかったか? そう思ったものの、後で調べたところ大きなコブができた程度で安心した。
相手もそこそこの冒険者なので、首の骨とかも無事だったのは言うまでもない。
メルヴィナに自分共々治してもらって、全ては終わった……筈だった。
◇◆◇◆◇
「冒険者ギルドで決闘を邪魔したと聞いているぞ! 証人も沢山いる!」
「一般人が巻き込まれそうになったからな」
記憶の反芻と共にそう告げる。
「……貴様のせいで怪我人を出したとも聞いているが?」
は? 怪我したの俺なんですけど!
あ、酔っ払い本人か?
「いや、決闘相手以外を傷付けてるのに、その被害者にヒートアップしてんだから、何されても文句は言えないだろ」
それをあの程度で済ませてるんだから、感謝しろとは言わんが自重はしろよ。
多分告げ口したのあいつだろ、これ。
「そこな麗しい回復術士殿が無償で治療してさしあげたのに、がめつくも治療費を請求したとの証言もあるのだ! 貴様のせいで出た怪我人にも関わらずな」
「え、私ですか?」
駆け付けた仲間の内、メルヴィナがいきなりの名指しで面食らっていた。
「はぁ? んな事してねーよ」
迷惑料とか請求しても文句は出ないと思うが、面倒だからしてないぞ。
「これは被害者の証言だけではない、周りの者も脅すように約束させたのを聞いているぞ!」
あー、繋がった。
「それ給仕ちゃんが落とした料理代な!」
巻き込まれた際、運んでいた料理は落ちてしまった。
食堂の店主は、その場で金を取り立てられなかったからか、あろう事かウェイトレスをしていた女の子に給料の天引きを告げたのだ。
端で酔っ払いの介抱をするメルヴィナの近くでその発言を拾ったオレは、酔いが醒めて渋る大男に、半ば脅すように弁償を約束させたのである。
勿論、しらを切られても面倒なので、給仕ちゃんには建て替え分の金額を先に握らせてある。結局あれ返して貰ってなかったな。まぁ、怖い思いした彼女への慰謝料でいいや。
「嘘を吐け! ならば何故エルーダを逃げるように去ったんだ」
「薬の確保と依頼だっつの!」
オレに立て続けに論破されたからか、徐々に語気が強くなっていた目の前の男に、ニヤリとした笑みが浮かぶ。
まるで鬼の首を取ったかのような表情は、甚だ不愉快だ。
「はは、ボロを出したな。それはおかしいだろう」
オレが何も言い返さないのを見るや、益々早口になって言葉が紡がれる。
「拠点を移したら、まずは街の内部構造の把握。そして、周辺の地理や魔物分布を依頼を通して理解し、そこから徐々に活動範囲を拡げていくのが冒険者の基本だろうが。そもそも、マール嬢の薬はエルーダでも待てば手に入る」
これ、言い返しても無駄なんだろうなぁ……。
「依頼も受けずに近くの村に逃げ、戻ってきてもほとぼりが冷めてなかったので、遠くの地に依頼と偽って逃げたとしか思えんな!」
うるせぇ! こちとら冒険者の基本より無双優先なんだよ!
そう怒鳴りたいが、どうせ理解されずにややこしくなるだけだから、やはり止めとこう。
「無言は肯定と変わらんぞ、と言いたいが。貴様の目には反抗と否定の色しか映っていないな。よかろう、正しさを証明したくば、今こそ僕と――」
「お望み通り決闘してやんよ!!」
何処かの演劇のような朗らかな口上を遮り、決闘受諾の印として竜革の手袋を投げ付ける。
「最後まで言わせろぉ!!」
知らんがな。
こちとら、何一つてめぇの思い通りにさせる気は無いんだよ。
一に無双で二に無双、三、四が無くて五に飯だ!
数日空けて次回更新は、四~五日連続更新ヾ(o゜ω゜o)ノ゛




