となりのトロト、旅をする?
お待たせしました( ´・∀・`)
監視カメラの死角で、タブレットは戻ってこないようなので、諦めて執筆し直します。
ですので、週2~3くらいから始めて、月末までには更新頻度戻せるように頑張りますヾ(o゜ω゜o)ノ゛
次話からダンジョン潜ってドラゴン装備、そしてドラゴンクッキングと話を紡いでいきます~。
「きっ、貴様がチェシーの結婚相手とか宣う平民か!?」
ギルドマスターとアイズの模擬戦から幾日か経ちました。
今は私とメルの冒険者ランクを上げるために、毎日ギルドに通っております。勿論徒歩で。
地元ですし、これから冒険者としての生活を送る訳ですから、街の中では馬車は使いません。
故郷の雰囲気をより身近に感じられて楽しいですわね。
「おーい、フラン。現実逃避するなー」
アイズが話し掛けてきたので、意識を現実に戻しました。
現在の状況は、ギルドに向かう道の中、急に呼び掛けられた、というものです。
突然進路を塞ぐように現れた馬車から、あまり愛せぬタイプの隣人が出てきたのです。
「はっ、見苦しいところを見せましたわ」
「いや、別に良いんだけど……誰?」
話し掛けてきたのは、トロト男爵家の嫡男でした。
男爵家は、このイルネストを纏める貴族の一つです。
興味はないので、彼の名前はうろ覚えですけれど。
子爵程度のキャンベル家が、そこそこの規模を誇る城塞都市を束ねているのが気に食わないのか、頻繁にわたくしに突っ掛かってくる殿方ですわ。
その旨を簡単に伝えていると、向こうから更なる声が響いてきました。
「おい、無視するな! チェシーも俺を早く紹介しろぉ!」
まったく、突然絡んできた割には、態度が大きいですわね。
「と、言われましても……あと、以前から何度も申し上げておりますが、わたくしをチェシーと呼ばないでくださいまし」
愛称で呼び合う仲じゃありませんからね。
「なっ、俺はイルネストの未来の支配者、トゥナリ・トロトだぞ!」
それを現領主たるキャンベル家の息女に宣言するのはどうかと思いますわよ……。
「トゥナリ、トロト……」
わたくしが呆れ顔を浮かべる中、彼のフルネームを小さく復唱したアイズの顔が崩れ、少し吹き出していました。
今、何か笑う要素あったかしら?
「それに、将来を誓った幼馴染みじゃないか!」
「誓ってません! それに貴方はただ単に家が斜め向かいってだけで、馴染んでもおりませんわっ」
ほぼ反射で返してしまいました。
いらぬ誤解を招いたかとアイズを見ると、彼の目は道化を眺めるような雰囲気を讃えていました。これなら心配いりませんわね。
「斜め向かいのトト○……新しいな」
と思ってたら、また謎の呟きが漏れ聞こえました。
「ト○ロじゃなくてトロトですよ、アイザック君」
「なぁメルヴィナ。……トロト旅する?」
また唐突な。
「はい? 彼は内向的な貴族なので、しないんじゃないでしょうか」
「そっかぁ」
わたくしと男爵子息のやり取りの後ろで、そんな会話が繰り広げられます。
奇妙な発言は過去にもあったので、ここは愛をもって流しましょう。
その後も、喚く目の前の人物。
身元も分からぬなどと叫ぶので、豪商の子息である事を伝えても火に油のようです。
フェイロン商会が南部から仕入れるワイン、貴方のお父様のお気に入りでは?
対応に苦慮して頭痛を堪えてると、わたくしの様子を見たアイズが助けに入ってくれました。
「もういいよフラン。相手はしたし家格も下だろ。今日は常設依頼に切り替えて、撒こう」
わたくしとメルにだけ聞こえるように告げて、トロトに振り返ります。
「栄光あるトロト男爵子息殿! 無作法だが私どもも、魔物に怯える無辜の民を待たせているっ。これにて失礼つかまつる!」
流麗な所作で礼をした彼は、わたくしを抱えあげます。
俗に言う、お姫様抱っこと呼ばれる形で。
「ちょっ、アイズ?!」
「悪い、街出るまで我慢してくれ」
「べっ、別に悪くはないですけれども……は、恥ずかしい」
ここ、わたくしのホームなのですわよ? まるで晒し者ですわ。
多くの民が向けてくる微笑ましい顔が羞恥を煽ります。
そのまま、メルと一緒に街の門に向けて軽く駆け出しました。
「なっ、俺の話はまだ終わってないぞ!」
遠くから、でっぷりとした肉体を震わせた声が、風に流されていくのが聞こえました。
街の外に出て、最近近くの畑を荒らしているという魔物の探索と討伐に勤しみます。
畑を荒らす類の魔物は、常設で駆除依頼があります。
民は怯えてはいませんが、かなり困っていたのでアイズの言葉も丸っきりの嘘ではないですわね。
「しかし、何ができるとも思えませんが、男爵子息は無視して良かったのですか?」
「オレだって少しは学んだからな。野心家みたいだがイルネストの貴族での序列は下から二番目。明らかに貶した訳でもなく目撃者多数だし、問題ないだろ」
「少し楽観的ですが、概ねその通りですわね。別方向での嫌がらせ程度は十分考えれますけれど」
わたくしの言葉に、魔物の討伐部位を剥ぎながらアイズが小さい溜め息を溢します。
「だーから貴族は嫌なんだよな。家族関係は別として、粗方予想通りになった」
アイズが小声で何かを呟きました。
少し辟易とした表情を浮かべているので、対応が面倒なのでしょう。
わたくしと逢った時から、愚かな貴族が嫌いですものね。
「まぁ、今ならあの時点に戻ったとしても、同じ選択をするだろうけど」
ちらっとわたくしを見たアイズは、口角を少し緩ませながらそう呟きました。
さっきと違って聞き取れましたが、意味がよく分かりませんね。
「アイズ、どうかしまして?」
「いんや、なんでもない。オレには手放す気のない宝物があるってだけの話さ」
慈しみの籠った瞳でわたくしを居抜くアイズ。
「……もうっ!」
さっきのお姫様抱っこと言い、独占欲滲み出てないかしらっ。
わたくし別に、鈍感じゃないんですからね!?
◇◆◇◆◇
「なんなのだ、あの男は……無礼な上、見せつけるようにチェシーを抱きかかえおって」
脂汗を巻き散らせながら怒り狂う男は、トゥナリ・トロト。
将来的にイルネストを統べ、周辺一帯を差配する男……と自称する豚貴族である。
「チェシーもチェシーだっ。昔から俺が心を寄せていると知りながら、あのようにっ」
彼は怒りに任せて、小物を壁に向かって投げる。
しかし、飛翔物は壁に届く前に失速して床を転がった。
「くっ……しかしあやつ、チェシーと大きな剣を抱えて軽々と動いておったな。ああいう男が好きなのか?」
加速する独り言の中、先程の男の腕と自信の腕を見比べる。
――ぷにぷにっ
触ってみると、そんな音が幻聴で聞こえるかのようだった。
「そう言えば昔から英雄潭などという低俗な物を好んで読んでいたな。腕っぷしが強い貴族が好みか……旅好きな貴族も昔はよく居たと聞く」
彼の中では、貴族は貴族と結婚するという固定概念が強い。
そのため、アイザックは男妾程度にしか考えられていなかった。
幼少から上から目線で好いていた、領主の令嬢。
それを奪われた――と勘違いしている――短絡的な男が、決断をするのに時間は掛からなかった。
「よし、俺も体を鍛えて旅に出るぞ!」
そして、あの間男から真実の愛を取り戻すのだっ。
彼はそう気炎を上げた。
最後は今作では初の三人称視点。
流石に豚貴族視点で書くのもアレなので。




