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花菱女学園重装機兵部  作者: キ74
第二章 やりがい/練習試合
41/45

4-1

 平征29年6月5日 花菱女学園教官準備室


 「えっ?練習試合ですか?」

 

 僕は山本先生からの突然の報告に驚きを隠せなかった。


 「はい。今朝、陸軍中央高校から連絡があって、再来週の土日に合同訓練と練習試合をしませんかということでして」

 「はあ…」


 僕はどうしてこの時期に、しかもまだまだ発足間もない家の部にそんな話を持ち掛けてきたのだろうと考えを巡らせたが、これと言って思い当たることはなかった。


 「うーん、中央とか…正。直、僕としてはあまり…」

 「そうですよね。私もそう思ったんですけど、中央の方はかなり乗り気なようで、是非ともお願いしますってものすごい念押しされましたよ」

 「そうですか、えっと、他に詳しい話とかしてましたか?どこの訓練場でやるかとか」

 「ああ、それでしたら、ここの地下訓練場を使わして欲しいという話でしたよ」


 僕は額に手を当て考え込む。


 今のうちの部員の練度を考えると、とてもじゃないが中央高校と比べられるようなものではないだろう。そもそも途中入部の者が多く、この間の襲撃の際に訓練機が損傷を受けてからは、さらに訓練計画に遅れが出てきている。


 と言っても、自分たちより上のレベルの人たちと一緒に訓練することで、良い刺激になるということもあるだろうし、そもそも実際問題として、陸軍の一機関である中央高校の申し出なので、断り切れないだろうということもある。


 「…受けるしかありませんね」

 「はい」

 「わかりました。ちょっと僕の方からも連絡して、いろいろと詰めておこうと思います。合同訓練はまだしも、練習試合となると流石にこっちが訓練不足過ぎてまともにできるかわからないですしね」

 「そうですね、一緒に訓練するだけってことならまあ大丈夫でしょう」


 と言うわけで、早速陸軍中央高校に連絡をとったわけだが、なかなかこちらの思惑通りにはいかなかった。


 ……………

 

 ………


 …


 「「「練習試合?」」」


 花組の教室で僕が、再来週に中央高校と練習試合を行うとみんな驚いたようだった。


 「うん。その…みんなには訓練が思うようにできていない中で、本当に申し訳ないと思ってるんだけど、中央高校側からの強い要望で、是非とも試合をさせてくれってことで…」


 僕は今朝、山本先生から報告を受けた後、すぐに中央高校に連絡して、練習試合なしの合同練習という方向に持って行こうとしたのだが、向こうの教官の方が上官であったということ、互いに1年生を中心とした所謂新人戦をしたい、学生でありながら実戦を経験したうちの部員と試合を行いたい、とかいろいろと捲し立てられて結局押し切られてしまった形だ。


 僕のこういう撃たれ弱さと言うか、流されやすいところは、教官んとして決して良いことではないのだが、発足したばかりの部ということもあり、今後の他校との交流を考えると、ここであまり強く出て関係をこじらせるわけにもいかないという意識もあった。


 とにかく決まってしまったこは仕方がないので、今は練習試合に向けて出来得る限りの準備をしておくしかないだろう。


 「あの、練習試合って具体的に何をするんですか?」


 凛君がそう尋ねてきた。

 

 「そうだね、重装機兵部で行う練習試合はいろいろな形式があるんだけど、今回やるのは中隊戦だね」

 「中隊戦?中隊同士で戦うってことですか?」

 「そう、重装機兵部隊では基本的に3機で1小隊で、中隊は2小隊と中隊長と中隊長付きの計8機になるわけだけど、今回に関しては、こちらが一人足りないから、中隊長付きはなしの7機編成での試合になるよ」

 「はい!」


 僕が凛君の質問に答え終わると、今度は百合奈君が真っ直ぐ手を伸ばした。


 「百合奈君、どうぞ」

 「はい、練習試合における編成についてですが、すでに決定しているのでしょうか?」

 「そうだね…とりあえずって言うのは失礼だけど、中隊長はこの部の主将で一番経験のあるレイン君に任せようと思う。いいかな」

 「はい。もちろんです。全力で勝ちに行きます」


 レイン君は力強くそう答えてくれ、他の部員たちも拍手をしてそれを歓迎してくれた。レイン君のその瞳には不安は微塵も感じられず、むしろわくわくしていると言った感じだった。


 昨日、マツリが来てからレイン君は特に刺激を受けたようで、やるきがいつもの3割増しぐらいになっているように見える。


 「それで、他の編成、どの三人組でいくか、誰と誰を小隊長にするかだけど―」


 僕に強い視線が注がれる。


 少し居心地の悪さを感じたが、彼女達にとって誰が小隊長になるかはかなり重要なことなのかもしれない。中隊長に関しては唯一の上級生であるレイン君がなるのが自然な流れだとしても、小隊長に関しては要するに現時点で高評価を得ている一年生二人が選ばれるということになる。気になってしまうのも仕方のないことだろう。


 「悪いんだけど、もうちょっと待ってくれるかな」

 「あ…はい」


 百合奈君をはじめみんな少し肩透かしを受けたようだったが、僕としてはまだ結論を出せないでいた。


 率直な評価としては、一年生の部員は一人を除きみんな実力的には拮抗している。それぞれの能力に一長一短はあるものの、なかなか甲乙つけがたいというのが正直なところだ。


 それならば、実力が突出している美沙君ともう一人誰かと言った感じで小隊長を選べばいいのかもしれないが、はっきり言って美沙君を小隊長にするのは不安がある。


 彼女の実力は現役の重装機兵にも劣らないものだとは思うが、協調性に欠ける面が多々見受けられる。そう言った面では確かに、マツリに言われたように僕に似ているのかもしれない。


 とにかく部隊編成については今は保留だ。


 それに、美沙君に関しては昨日体調不良で帰ってから、今日も引き続き休んでいる。


 昨日負けてしまったあとのことであるので、いろいろと心配ではあるが、電話をしてみても出てくれないし、凛君経由で大事はないということは聞いているので、すぐにどうこうしようという気はない。


 「それじゃ、訓練についてなんだけど、ここで修理中だった機体は、明後日には使用可能になるっこてで、足りな分の機体も今週中には来る予定だから、今週からは部内での小隊戦をはじめはじめようかとおもう」

 「本当ですか!?」


 レイン君が興奮気味に声を上げる。


 「うん。そのなかで小隊長に誰にするか決めようと思うから、みんな頑張っていこうね」

 「「「はい!」」」

 「ああ、そうだ。あと、対外戦をやるにあたって、うちのカラーも決めておきたいと思ってるんだ」

 「カラー?」

 「重装機兵部では、それぞれ機体の一部に自由な塗装と、校章を入れることが認められてるんだ。

だからみんなに自分たちのチームカラーを決めてもらいたいって思ってね」


 僕がチームカラーの話題を出すと、教室内はにわかにざわつき始め、隣の席の人とどの色がいいかと相談を始めた。


 「まあ、まだそんな急ぎじゃないからみんなでよく話し合って決めてね」

 「「「はい!」」」


 彼女たちの元気な返事が教室に響き渡る。


 相変わらず、次から次へと問題ばかりが起きるが、僕はやる気に満ちている部員たちの顔を見て、少し熱くなるものを感じていた。

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