異能の片鱗
「サ、サツキ。あなた、なんで私の異能の剣を……?」
「わ、わかりません。でも、なんでかわからないんですが……これなら僕も使える。そう感じたんです」
僕は、ミヤ先輩にそう答えた。自分でも信じられない。
ミヤ先輩の異能で作られた剣を、僕が使えた。
いったい、僕の身に何が起きているんだ?
そんなことを考えていると、セランが僕のもとへ駆け寄ってきた。
「お、お前!倒せるなら早く倒せよ!仲間が一人、殺されたんだぞ!」
セランが震える指で六本腕の異獣の足元を指さした。
そこには、僕たちと同じ制服を着た生徒が倒れていた。
「……っ!」
僕は急いで駆け寄り、倒れている生徒に声をかけた。
「おい、大丈夫か? しっかりしろ!」
返事はなかった。身体を揺すっても、目を開けることはない。
……死んでいる。
「なんで……。なんで、死人が……」
任務に出る前までは、僕たちと同じように生きていたはずなのに。
それなのに、今はもう――。
「こいつ、バケモンなんだよ!異能で怯ませようとしても、なかなか怯まないし、腕も斬れない!けど、お前は足を斬っただろ!だったら腕だって、同じように――」
セランが必死にまくし立てる。
その瞬間だった。
ミヤ先輩が、セランの頬を平手打ちしたのだ。
「あれだけサツキを馬鹿にしておいて、ピンチになれば人頼りなんて。情けないわね」
「うるさい!先輩なら早くなんとかしろ!」
セランはミヤ先輩を睨みつけた。
……こんなセランを見るのは初めてだ。
普段は何かと余裕ぶっているし、そもそも、こいつとは任務で一緒になることも少ない。
なのに今は、明らかに取り乱している。
人間って、死が目の前に迫ると、普段は隠している本性が出るものなんだな。
「あなたに言われなくても、私がなんとかするわよ」
ミヤ先輩はふらつく身体を支えながら、片手を掲げた。異能の剣を作り出そうとしているのだ。
「……っ、どうして……!」
剣は現れなかった。
おそらくだけど負傷のせいで、異能を発動することさえ難しくなっているらしい。
その隙を、六本腕の異獣が見逃すはずもなかった。
「ガァァァァッ!」
異獣が武器を振り上げ、ミヤ先輩に襲いかかる。
「ミヤ先輩! 危ない!」
考えるよりも先に、身体が動いていた。
僕は異能の剣を握りしめ、ミヤ先輩との間に割って入る。
そして――。ザシュッ!
振り下ろされた武器を持つ腕を、斬り落とした。
「ギャァァァァァッ!」
異獣が悲鳴を上げ、血をまき散らしながら後退する。
「サツキ……。あなた……」
「こ、これが……僕の異能?」
手の中にある剣を見つめる。
僕は今、ミヤ先輩の異能を使った。
しかも、ミヤ先輩でさえ斬れなかった異獣の腕を、斬り落としたんだ。
これが僕の力なのか?
そのときだった。六本腕の異獣が、残った腕を振りかぶった。
「――っ!」
しまった!考え込んでいて、反応が遅れた!
避けられない。剣で防ごうにも、間に合わない!
「サツキ!」
ミヤ先輩の叫び声が響いた。
次の瞬間――。
「ったく。任務中に油断はダメだぜ、二人とも」
背後から、男の声が聞こえた。直後、六本腕の異獣の顔と腹部に、突如として穴が開いた。
「……え?」
何が起きたんだ?
異獣は攻撃を繰り出すこともできず、そのまま地面に倒れ込んだ。
あれほど苦戦していた相手が、一瞬で倒された。
僕は恐る恐る振り返る。
そこに立っていたのは、ショートヘアで白いTシャツを着た男だった。
「あなたは……アサルト!」
「よう、ミヤ。俺の方は片付いたんでな。手伝いに来たぜ」
アサルトは何事もなかったかのように笑った。
……この人、いったい何者なんだ?




