ミヤ先輩との訓練
僕はミヤ先輩に向かって剣を振るった。
しかし、ミヤ先輩は身体をわずかに横へずらし、僕の攻撃を簡単にかわす。
「まだまだね」
「くっ……!」
次の瞬間、ミヤ先輩の異能の剣が僕の首元でぴたりと止まった。
あと少しでも動いていたら、僕は斬られていたかもしれない。
「今の攻撃も動きが単純よ。相手がどう動くのか、もっと考えなさい」
「は、はい!」
ミヤ先輩は剣を引くと、再び構えた。
僕も負けじと剣を構え、何度もミヤ先輩に挑み続けた。けれど、攻撃は一度も届かない。
反対に、ミヤ先輩は僕の攻撃を避けるたび、異能の剣を寸前で止めてくる。
何十回と繰り返した頃には、僕の息はすっかり上がっていた。
そんな僕の様子を見かねたのか、ミヤ先輩はようやく剣を収めた。
「ミ、ミヤ先輩?」
「……少し休憩しましょう」
ミヤ先輩はそう言うと、訓練場を出ていった。
僕は訓練場の壁を背にして座り、荒くなった呼吸を整える。
しばらくすると、ミヤ先輩が飲み物を二本持って戻ってきた。
「はい、サツキ」
「あ、ありがとうございます。飲み物まで買ってきてもらって、すみません」
「気にしないで。私は頑張っている人は好きだから」
ミヤ先輩は微笑みながら、僕に飲み物を差し出した。
「サツキは私相手によく食らいついているわ。訓練のしがいがあるもの」
そう言うと、ミヤ先輩は首にかけていたタオルで汗を拭き、飲み物を口にした。
やっぱり、ミヤ先輩には頭が上がらない。
「ミヤ先輩は忙しいのに、僕の訓練に何度も付き合ってくれるので……」
「バカね。忙しいって言っても、異獣討伐の任務は生徒たちで分担しているじゃない。私より強い人だって何人もいるわ」
確かに、ミヤ先輩の言う通りだった。
学園では、異獣討伐の任務が生徒たちに割り振られている。できるだけ犠牲者を出さないよう、生徒たちの実力も考慮して編成されるのだ。
僕もミヤ先輩と別々の任務になることはあるけれど、基本的には一緒に行動することが多い。
「私だって、まだまだよ。でも、サツキみたいな子を見ていると、どうしても応援したくなるの」
「ミヤ先輩……」
「だから、これは私が好きでやっていること。あまり気を使わなくてもいいわ」
ミヤ先輩はそう言って、優しく笑った。
それでも、やっぱり申し訳ない気持ちはある。
いつか必ず強くなって、ミヤ先輩に恩返しをしたい。
そんなことを考えていると、突然、訓練場に放送が響き渡った。
『異獣の反応を感知しました。対象の生徒は、至急、職員室へ集合してください』
「呼び出しね。それじゃ、サツキ。また後で」
「はい!」
僕たちは飲み物を片付け、訓練場を後にした。
ミヤ先輩と別れた僕は、そのまま職員室へ向かう。
職員室に到着すると、担当教師の前に四人の生徒が集まっていた。
その中には、セラン・マカランの姿もあった。
「よぉ、無能。お前も来たのか」
「セラン。何度も言っているけど、僕は無能じゃないよ」
「へっ。どうだかな」
セランは鼻で笑った。
言い返したい気持ちはあったけれど、今は異獣討伐の任務が優先だ。
僕たちのやり取りを見ていた担当教師が、パンパンッと手を叩いた。
「お前ら、静かにしろ。これから任務について説明する」
教師の一言で、僕たちは口を閉じた。
「先ほど、この付近で異獣の反応が確認された。お前たちには、これから現場へ向かい、異獣の討伐にあたってもらう」
教師は地図を広げ、目的地を指し示した。
僕たちは説明を受けると、職員室を出て、指定された場所へ向かうことになった。
異獣は、烈界と呼ばれる場所から現れる。
その出現を事前に予測することは難しく、これまでは異獣が現れてから対応することも多かった。
しかし、桜花学園には、烈界から現れる異獣の気配を感知できる異能使いがいる。
そのおかげで、今では異獣が現れる場所をある程度特定し、先回りして討伐に向かうこともできるようになったのだ。
もちろん、必ずしもすべての異獣を事前に発見できるわけではない。
それでも、その異能が多くの人々を救っていることは間違いなかった。
「……今度こそ、少しでも役に立たないと」
僕は小さくつぶやき、拳を握りしめた。
ミヤ先輩に鍛えてもらっているのに、いつまでも守られてばかりではいられない。
今度の任務では、少しでも成長した姿を見せたい。
そう決意しながら、僕は異獣の出現地点へと向かった。




