↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱の僕が、君の隣に立つまで  作者: アークマ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/11

無能のサツキ

 ミヤ先輩とともに桜花学園へ戻ってきた僕は、先輩と別れて自分の教室へと向かった。

 ミヤ先輩は学園長室へ、先ほどの異獣討伐について報告に行くらしい。

 僕は教室に入ると、自分の席に腰を下ろした。


「よぉ、無能。今日の異獣討伐はどうだったんだ?」


 僕の席に、一人の男が近づいてきた。

 黒い長髪に鋭い目つき。体格はごく普通だが、その表情には人を見下すような笑みが浮かんでいる。

 セラン・マカラン。

 同じクラスの生徒であり、何かと僕に絡んでくる男だ。


「セラン。何度も言っているけど、僕は無能じゃない。自分の異能がわかっていないだけだ」

「へぇ。じゃあ、いつになったらわかるんだよ?」

「それは……」


 言葉に詰まった僕を見て、セランは鼻で笑った。


「自分の能力すら理解できていないくせに、異獣討伐に参加するなんてな。足手まといになっていないといいけど」

「お前だって、そんなに偉そうなことを言える実力なのか?」


 僕は思わず言い返した。


「お前の異能だって、弱点はあるだろ」

「……は?」


 セランの表情から笑みが消えた。


「俺様の異能が弱いだと?冗談も休み休み言えよ」


「別に弱いと言っているわけじゃない。ただ、使い方を間違えれば対処されるって話だ」


 セランの異能は、相手の背後へと突然移動し、奇襲を仕掛ける能力だ。

 初見であれば、背後を取られた時点で相手は対応に困るだろう。

 使い方次第では、かなり厄介な異能だと思う。

 だけど――。


「お前の異能は、背後を取ることに特化している。その分、武器を持って背後をとることができないという弱点がある。相手に動きを読まれたら、どうするつもりなんだ?」

「ふん。だから何だ?」


 セランは不敵に笑った。


「異能ってのは、使い方次第なんだよ。どんな能力だろうと、扱い方を工夫すれば強くなる。お前みたいに、自分の能力すら理解できていない奴に言われたくねぇな」

「…………」


 悔しいが、言い返せなかった。セランの言っていることにも、一理あるからだ。

 異能は、ただ強力であればいいというものではない。

 使い方次第で、弱い能力でも強敵に勝てる可能性はある。

 それでも――。


「俺様はお前と違って、自分の能力を理解している。せいぜい無能なりに頑張るんだな」


 セランがそう言った、そのときだった。

 教室の扉が勢いよく開いた。


「ねぇ。いつまで他人をいじめているつもり?」


 僕とセランの間に、一人の少女が割って入る。

 白銀のような長い髪。凛とした表情。

 ミヤ・アサカ先輩だった。


「惨めにしか見えないわよ」

「……ミヤ先輩」


 セランは一瞬だけ驚いた表情を浮かべたものの、すぐに顔をしかめた。


「先輩こそ、いつまでこんな奴の面倒を見るつもりですか?もっと最前線で活躍するべきなんじゃないですか?」

「それをあなたに決められる筋合いはないわ」

「…………」

「それとも、私に何か言いたいことでもあるの?」


 ミヤ先輩が冷たい視線を向けると、セランは口を閉ざした。

 しばらく睨み合った後、先輩は僕の方へ振り返った。


「サツキ。こんな子は放っておいて、行きましょう」

「え?どこに?」

「訓練場よ。今日も私が稽古をつけてあげる」

「わ、わかりました。ミヤ先輩」


 僕は慌てて席を立ち、先輩の後を追いかけた。

 教室を出る直前、背後からセランの声が聞こえてくる。


「……いつまでも先輩に守ってもらえると思うなよ、無能」


 僕は振り返らなかった。

 だけど、その言葉は確かに胸に突き刺さっていた。いつか必ず、自分の力で認めさせてやる。

 そう心に誓いながら、僕はミヤ先輩とともに訓練場へ向かった。


     ◇


 訓練場に到着すると、ミヤ先輩は異能を発動させた。

 彼女の手の中に光が集まり、一本の剣が形作られる。

 異能《新星の剣》。

 何度見ても、その美しさには目を奪われる。


「それじゃあ、始めましょうか」


 ミヤ先輩は剣を構え、僕に向き直った。


「今日も私が鍛えてあげる。少しでも自分の異能を理解できるように、集中しなさい」

「はい。いつもありがとうございます」


 僕は深く頭を下げた。

 ミヤ先輩は異獣討伐のときだけでなく、こうして普段から僕に稽古をつけてくれている。

 先輩自身も忙しいはずなのに、僕のために時間を割いてくれているのだ。

 本当に、感謝してもしきれない。

 だからこそ――。

 いつまでも甘えているわけにはいかない。


「サツキ。準備はいい?」

「はい!」


 僕は拳を握りしめた。自分の異能が何なのか、まだわからない。

 それでも、立ち止まるわけにはいかなかった。

 僕は強くなりたい。いつか必ず、誰かを守れるくらいに。

 そして、いつか――ミヤ先輩の隣に立てるくらいに。


「行きます!」


 僕は地面を蹴り、ミヤ先輩へと向かっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。