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最弱の僕が、君の隣に立つまで  作者: アークマ


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2/10

サツキ・オウトモ

 「この異獣は私が片付けるわ」


 ミヤ先輩は異能で生み出した剣を構えると、一瞬で異獣との距離を詰めた。

 そして、異獣の四本の腕のうち、二本が斬り落とされた。


「まずは二本」

「グルオオオオッ!」


 異獣は苦痛に顔を歪め、残った二本の腕を振り回してミヤ先輩に殴りかかる。

 しかし、ミヤ先輩は慌てることなく攻撃をかわした。


「遅すぎるわ」


 次の瞬間、ミヤ先輩は異獣の背後に回り込んでいた。

 そして、剣を一閃させる。異獣の首が斬り落とされ、その巨体が地面に倒れ込んだ。

 異獣の討伐は、あっという間に終わった。

 ミヤ先輩は異能の剣を消滅させると、僕のもとへ歩いてきた。


「いつも言っているでしょう。あなたは異能使いとして未熟なんだから、無茶をするのはやめなさいって」

「でも、僕もミヤ先輩のように異獣を倒したいんです。誰かを守れるくらいに強く――」


 言い終える前に、乾いた音が響いた。

 パシンッ!


「なっ……!」


 ミヤ先輩に頬を叩かれた。突然のことに、僕は言葉を失う。


「あなたはまだ、自分の実力を理解していないわ。一人で異獣に立ち向かうのはやめなさい」


 ミヤ先輩は僕をまっすぐに見つめた。


「私が近くにいたからよかったものの、もし一人だったら、あなたは死んでいたかもしれないのよ」

「…………」


 何も言い返せなかった。ミヤ先輩の言うとおりだったからだ。

 僕は弱い。

 異獣とまともに戦うことすらできない。それどころか、自分の異能がどんな能力なのかさえ、完全には理解できていない。

 それなのに、無謀にも一人で異獣に立ち向かった。

 誰かを守りたいなんて言いながら、結局は自分が守られる側になっている。

 そんな自分が、情けなかった。


「サツキ」


 ミヤ先輩の声に、僕は顔を上げる。


「あなたの異能は、使いこなせていないというより……そもそも、どんな能力なのかがわかっていないのよ」


 僕の異能は、ほかの異能使いたちとは違っていた。

 ミヤ先輩の《新星の剣》のように、明確な形があるわけでもない。

 自分で発動させることはできる。けれど、それが何を意味するのか、どう使えばいいのか、僕自身にもわからなかった。


「だからこそ、異獣との戦いを通して経験を積む必要があるわ。でも、だからといって一人で突っ込んでいい理由にはならない」

「……はい」


 悔しかった。もっと強くなりたい。

 誰かに守られるだけじゃなく、自分の力で誰かを守れるようになりたい。

 そして、いつかはミヤ先輩の隣に立てるくらいに――。


「お説教はここまで。異獣の討伐は終わったから、学園に戻りましょう」


 ミヤ先輩はそう言うと、僕に背を向けて歩き始めた。


「待ってください、ミヤ先輩!」


 僕は慌てて、その後を追いかけた。

 僕たちが通っているのは、桜花学園。

 異能の適性を持つ者たちが集まる学園だ。

 もちろん、学園である以上、普通の学生と同じように授業を受けたり、部活動に励んだりすることもできる。

 けれど、この学園が最も力を入れているものがある。

 それは――異獣の討伐だ。

 烈界から異獣が現れれば、学園はただちに対応する。

 異能使いとしての力を持つ生徒たちも、その任務に参加することがある。

 僕もまた、異能の適性があると認められ、この学園に入学した。

 ただし、僕の異能は特殊だった。

 異能を発動させることはできる。けれど、その能力の正体がわからない。

 ほかの生徒たちが自分の異能を磨き、実力を伸ばしていくなかで、僕だけが取り残されていた。

 そのせいで、周囲からは無能と呼ばれることもある。

 それでも、ミヤ先輩だけは違った。

 僕が無茶をすれば叱り、危険なときには必ず気にかけてくれる。

 今回だって、そうだった。

 だからこそ、僕は早く一人前の異能使いになりたかった。

 いつまでもミヤ先輩に守られているわけにはいかない。

 いつか必ず、自分の力で戦えるようになる。僕もミヤ先輩のように強くなって大切な人を守るんだ。

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