生徒をさらう異獣
「俺は桜花学園に来る前、仲のいいダチが四人いた。そいつらとグループを組んでいたんだ。任務で別々になることもほとんどなかったし、俺を含めた五人で任務に出たときは、必ず異獣討伐に成功していた。あの任務まではな」
任務に呼ばれるのは、戦力を均等にするためにランダムで決まるはずだ。
それなのに、友達とほとんど同じ任務になるなんて、すごい偶然だな。
僕がそんなことを考えていると、ガトーは悔しそうな顔で話を続けた。
「俺は――いや、俺たちは、あのときも異獣討伐の任務を遂行したんだ。任務が終わって、気が抜けていたんだろうな。四人のうち、二人が何かに喰われた」
「喰われた?何に?異獣に?」
「異獣だったのかどうかはわからない。ただ、人間のような姿をしていたんだ。だから、俺たちは人間だと思った。だが――」
ガトーはそこで言葉を切ると、拳を地面に叩きつけた。
「くそっ……!あのとき、油断していなければ……いや、違う。同じ人間だと思わなければ……! ゼクレドは……!」
ゼクレド?
同じクラスにはいない名前だ。別のクラスにいる、ガトーの友人だろうか。
「そのゼクレドって人は?」
「俺のダチだ。ゼクレド以外の仲間は、みんなやられちまった。上級生もな。だが、あの異獣はゼクレドだけを攫っていきやがった」
ガトーは悔しそうに歯を食いしばった。
「だから頼む。次の任務で人型の異獣を見つけたら、捕獲してほしい。お前と同じ任務になるとは限らないが……」
ガトーはそう言うと、ゆっくりと立ち上がった。
「それじゃ、俺はお前との戦いを辞退するって教師に伝えてくる。今の話、必ず協力してくれよ」
それだけ言い残し、ガトーは屋上から去っていった。
僕もその後を追うように屋上を出て、教室へと戻る。
すると、手に持っていた端末がブルブルと震えた。
画面を確認すると、そこには新しい通知が表示されていた。
「ガトーが辞退したから、僕の勝利。そして、ランク戦に参加していないため、任務に参加せよ、か……」
いや、僕はちゃんとランク戦に参加するつもりだったんだけど。
ガトーが辞退しただけで、僕まで不参加扱いになるのかよ。
しかも、端末の方に任務の連絡までするのか。
……まあ、文句を言っても仕方ないか。
とりあえず、街に向かおう。
僕は端末に指定された街へと向かった。
到着すると、そこにはセランとガトーの姿があった。
今日はこの二人と一緒か。
「無能じゃないか。また任務に来たのか」
僕の姿を見るなり、セランが嫌味を口にした。
「無能じゃないって。この前の任務では、ちゃんと異能を使えてただろ」
そう言い返してみたものの、セランは相変わらず僕の言葉を信じていない。
こいつ、本当に面倒くさいな。
「サツキ。俺は他の奴らとは、ほとんど初対面だからな。足を引っ張らないようにする」
「う、うん。わかったよ」
ガトーがそんなふうに謙虚な態度を取るのは意外だった。
それより、端末に送られてきた異獣の発生地点に向かわないと。
僕たちは、異獣が出現した場所へと歩き出した。




