22話 気遣いのかたち
フェデリカは結局三日ほど王宮で療養した。彼女が家に帰ると、マリーナが心配そうに「姉さま、もうお身体は平気?」と顔を覗き込んだ。
「ええ。心配をおかけしました。そちらは変わりなかったですか?」
「うん。……姉さま、その……」
マリーナは珍しくもじもじと落ち着かなそうにフェデリカの顔を見た。
「執務室に置いてあった書類は、姉さまの決定が必要な段階まで進めておいたの。体調が大丈夫になったら確認してほしいな」
「マリーナが、ですか?」
「そう。家令に聞きながら処理したから大丈夫だと思うけど」
フェデリカは目を瞬かせる。思わずそばに控えていた家令に視線を送った。
「初めてとは思えないほど的確に処理なさってました。お嬢様によく似て聡明でいらっしゃいます」
家令のお墨付きを聞いた彼女は、「マリーナもいつの間にか大きくなっていたのですね」としみじみとした感慨を抱く。
「今日はもう休んで、明日確認しますね」
「分かった。ゆっくり過ごしてね」
そう言って微笑むマリーナに、フェデリカは小さく頷いた。
「ありがとうございます」
礼を言うと、妹は少し照れたように笑って自室へと戻っていった。フェデリカは自室に戻って椅子に腰を下ろし、ゆっくりと息を吐く。
いつもの彼女であれば執務室に向かって書類の確認をしたのだろう。けれど、そうすればマリーナの気遣いを無碍にするような気がした。
◇
フェデリカが帰宅してから数日経過したのちのこと。フェデリカはずっと看病してくれたエディへのお礼の品を選ぶために街に出た。
「ハンカチという手もありますが……、フィオさんはかなりオシャレに気を使ってますし、ご迷惑になるかもしれません」
そう考えた彼女が足を向けるのは、以前エディと共に訪れたパティスリー。店内をぐるりと見渡したところで、彼女は「フィオさんがどんなお菓子を好むのかすら知らない」ということに気がついた。
「……付き合いがそこそこ長いつもりでしたが、まだ知らないこともたくさんあるのですね」
彼女はそう呟きながら焼き菓子の詰め合わせを見る。
「こちらの詰め合わせが無難でしょうね。以前カフェスペースでご一緒した際、美味しそうに召し上がってました。この店のお菓子が口に合わない、ということはないでしょう」
フェデリカは人気! と書かれた詰め合わせのセットを手に取って会計を済ませる。贈り物用にラッピングをしてもらったセットを受け取り、彼女は帰路へついた。
「帰ったら、フィオさんに手紙を認めなければ」
そう呟くフェデリカの顔には、まだ少しだけ迷いがあった。だが、それは彼女の歩みを止める理由にはならなかった。
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