11話 わがままの代償
翌日、エディは国王に「大事な話があるの。二人で話す時間をとってもらえると嬉しいわ」と打ち明けた。国王は「構わないよ。執務が終わった後になるから、それでもいいかな」と笑った。
◇
「それで、話とは何かな?」
夜。王の私室で紅茶を飲みながら、国王は口を開く。エディはカラカラに乾いた口を紅茶で潤してから口を開いた。
「一応確認だけど、アタシの婚約で繋がりを持たなくてはいけない家や国はない、という認識で大丈夫よね」
「うん、今のところ国内も周辺国との関係も安定しているからね」
「そう。よかったわ」
彼は大きく深呼吸をする。一度目を閉じて気持ちを落ち着けてから切り出した。
「チェレスティーニ伯爵家長女と婚約したいの」
国王は沈黙する。エディは反対されないよう、慌てて用意したロジックを口にした。
「チェレスティーニ家は、アタシを国王に擁立しようだなんて野心を持つ家じゃない。今の当主代理は宮廷で働いているけれど、いつも裏方の書類整理や書記ばかりで、『表に立つ役』はあえて選ばない。あの家は堅実さを美とする家風、というのは有名な話よね。もちろん、古くからある伯爵家だからアタシが入婿してもおかしくない格があるわ。モンテフェルトロ公爵家とも縁戚にあたるから、かの家との関係強化にもなる。チェレスティーニ嬢はその仕事ぶりから王宮でも一目置かれていて、その上少なくとも4ヶ国語を話せる才女よ」
「君の気持ちは?」
国王は為政者としての眼差しではなく、兄としての表情を浮かべながら問う。エディは真剣な眼差しで口を開いた。
「ビーチェちゃんはアタシが幸せにするの。他の男になんて任せてやらないわ」
それを聞いた国王は微笑みを浮かべる。その後すぐに為政者としての表情へと戻した。
「君の気持ちはわかった。王家としても願ったりな相手だね。ただし、君のわがままを通す形となるのだから、分かるね?」
「何か条件がある、ってことね」
「もちろん。三日後にミスト王国の大使と会食がある。君自身の言葉で大使をもてなし、席を円滑に導きなさい。大丈夫。君ならできると信じているよ。でも『王族の婚約』の話だ。結果は出してもらう」
(ミスト王国……。過去には通訳の言葉尻から紛争に発展しかけた、なんて事例がある気難しい大国ね。それでもやるしかないわ)
「分かったわ。任せてちょうだい」
エディは力強く頷いた。国王はそれを見て「いい顔をするようになったね」と満足そうに笑った。
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